ポストコロナ、自動運転スタートアップに投資するなら米国より中国が有望な理由

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ポストコロナ、自動運転スタートアップに投資するなら米国より中国が有望な理由

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最近、EC大手アマゾンが完全自動運転ロボタクシーのユニコーン企業「Zoox(ズークス)」の買収で合意した。また、自動運転配送車を手掛けるユニコーン企業「ニューロ(Nuro)」もウォルマートに売却される可能性があるという。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、自動運転スタートアップに投資するベンチャーキャピタルでは、実のところコロナ流行前から資本枯渇の兆候を示しており、パンデミック後、その多くが手を引いたという。

「ズークス(Zoox)」が開発中の電気自動車:ブルームバーグより

逆に中国では、2020年に入ってから現在までに、30社以上の国産自動運転企業が資金を調達しており、その額は累計で数百億元(数千億円)にもなる。例えば、 2月には「Pony.ai(小馬智行)」がトヨタから約5億ドル(約510億円)を、5月には配車サービス大手「滴滴出行(DiDi Chuxing)」傘下の「滴滴沃芽(DiDi woya)」が5億ドルを調達している。

同じL4の自動運転でありながら、一方では身売りしなければならないほどの資金不足、また一方では潤沢な資金調達が可能なのはなぜだろうか。

米国のスタートアップで資金が枯渇する理由

Zooxの総崩れは、まずZoox自身に問題がある。Zooxの事業範囲は多岐にわたり、スタートアップの資金でカバーできる範囲を超えていた。 L4自動運転技術の開発だけでなく、それを使う電気自動車を一から自社生産し、完全自動運転のロボタクシー運営まで自前でやろうとしていたのだ。Zooxの車は、前後左右の区別がなく、どこ向きにでも走行でき、中は向かい合わせに席が4つ配置され、ハンドルなどの操作設備は一切ない。このような車は無人運転に非常に適してはいる。

写真はブルームバーグより

しかし、周知のとおり、自動車も自動運転も開発費がかさむビジネスだ。中国新興EVメーカー「小鵬汽車(Xpeng Motors)」の創業者である何小鵬氏によれば、開発費は200億元(約3000億円)でも足りないという。

ある業界関係者は「米国ではL4自動運転開発企業が多すぎる。トップ企業だけでも10社はある。だから資金も過度に分散してしまう」と分析する。対照的に、中国ではL4の自動運転を研究開発する企業は百度(バイドゥ)、滴滴出行、Pony.ai、「AutoX(オートX)」「文遠知行(WeRide)」など数社のみで、中には資金調達は親会社経由という企業もある。したがって、スタートアップ企業でも国内の優秀な人材を集めやすく、資金もより潤沢なのだ。

写真はWaymo公式サイトより

第二に、新型コロナウイルス感染症の蔓延はL4の研究開発の進捗状況にも大きく影響した。 2020年3月のパンデミック後、Waymo、Uber、Cruise、Aurora、Argo AIなどはすべて、運転手と乗客の接触を制限するために公道テストの中止を決定した。こうして、各企業は毎日数百万ドル(数億円)を消費するアイドル状態に入ってしまった。

さらに、商品化が遅々として進んでいないことも、一部の企業の現在の評価額に影響している。 2019年9月、米金融大手モルガン・スタンレーは、Waymoの商品化が予想よりも遅れたため、評価額を1750億ドル(約18兆円)から1050億ドル(約11兆円)に引き下げた。その上、米国経済も低迷していき、過去の評価額に基づく資金調達をより難しくしている。

中国スタートアップに資金が集まりやすい理由とは

中国の自動運転スタートアップ企業が資金不足に陥らない理由について、あるトップ企業の経営幹部は次のように述べている。「L4の自動運転では、一部企業の人材はトップ企業に追いつけないので、公にはしていないものの既にL2やL3にシフトした。これらの企業における研究開発資金ニーズは減少し、より早く商用段階に入ることができ、自動車メーカーとの提携により自身で資金を稼ぎ出している。残りのL4企業は十分な資金を抱えている。

最も重要なことは、投資家が中国のL4自動運転について米国よりも楽観的であることだ。

まず両国には移動時に選択する交通手段の違いがあり、中国人はタクシーを愛用する。L4技術は主にロボタクシーでの実用化が見込まれている。しかし、米国では自分で運転するほうが便利だ。自動運転ユニコーンの創業者たちも皆、米国では自分で運転し、中国ではネット配車を利用する。

さらに、5Gインフラの構築、電気自動車の普及や関連政策において、中国は米国よりも進んでいる。深センと上海では5Gカバー率が95%だが、米国では大都市でもほとんど5Gは導入されていないのだ。

写真は「東風汽車集団」公式サイトより

政府の協力体制でも中国は米国を凌いでいる。あるL4企業の経営幹部の話だが、サンフランシスコでの公道テスト中に、街路樹の葉が信号機を遮っているのに気づいたという。これは自動運転にとって大きな障害である。 この問題を解決するには枝を剪定するだけで十分なのだが、米国ではそれが難しい。方々への許認可申請が必要で、大企業でさえ何カ月かかっても剪定の許可をもらえないことがある。これが上海なら、政府に言えば、遅くても翌日にはバッサリだ。

以上の要因により、投資家は中国の自動運転の見通しについて楽観的であり、コロナ後の資金不足の状況においても引き続き大盤振る舞いなのだ。
(翻訳・永野倫子)

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