販売データ水増し、逆ザヤ取引・・大ブレイクする中国ライブコマースの舞台裏(一)

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販売データ水増し、逆ザヤ取引・・大ブレイクする中国ライブコマースの舞台裏(一)

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6月14日の夕方5時、ショート動画プラットフォームの「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」の人気ライバー辛巴氏によるライブコマースが始まった。ライブ配信は7時間以上に及び、60商品を紹介、総額12億5000万元(約190億円)を売り上げ、ライブコマース史上、個人としては最高額の売上記録を樹立した。 公証人も立ち会っていたと言うが、ネット上では「信じられない」との声がなかなか静まらない。

今の中国では、ライブコマースによる売上高が何億元(何十億円)にもなることも珍しくない。一般視聴者にとっては羨望の的であり、多くの起業家がライブコマースに殺到した。しかし、ライブコマースの実像は、それほどきらびやかなものではない。

ライブスコマースブームの3つの幻想

1.データ水増し疑惑

「ライバーはお金を出して運営会社に架空注文を出してもらっている」。ライブコマース業界ではデータを水増しして栄耀栄華を演出していると見る関係者もいる。プロのライバーにしろ、タレントにしろ、公表されるライブコマースでの総売上高は非常に印象的だが、注意深く分析すると抜け穴がたくさんあることがわかる。

ビッグデータ監視プラットフォーム「小葫蘆(xiaohulu)」の集計によると、6月16日のライブ配信で、数千万人のフォロワーを抱える「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」の売れっ子ライバーが販売した上位5商品のうち、2商品に架空注文が疑われるという。当日の視聴者の購入率は50%以上だったが、抖音のライブ視聴者96%の購入率は通常わずか10%だ。

あるライバーの売上トップ5に関する販売データ

最近、あるトップライバーのフォロワーグループのスクリーンショットがネット上に流出した。チャットの中でグループ管理者がフォロワー全員に対し、すべての商品を購入し、星5つ評価をしたスクリーンショットを送るように指示、そうすれば30%のコミッションが支払われるし、キャンセルも可能と書かれていた。

ライブコマースの水増し問題について真偽を判断するのは難しく、そもそもライブ配信でフォロワーを買うのは一般的になっている。現在、多くのマルチチャンネル ネットワーク(MCN)がライバーの人気を高めるために、専業のグレー機関を通してフォロワー数や注文数を水増ししている。政府の関係部門は最近、架空注文の厳格な取り締まりを開始したところだ。

ある検索サイトで関連するキーワードを検索したところ、ライブ配信で架空注文を請け負う業者を発見した。 そこのカスタマーサービスに問い合わせてみると、「通常価格は『熱度(人気度)』1万で90元(約1300円)です。10万以上なら1万につき5元(約75円)の割引があります」「ライブコマースの架空注文も承っておりますが、扱うのは一般的に数千元から1万元以上(数万円~15万円以上)の高額商品です」とのこと。

架空注文業者が提供したEC大手JD.comの「618」セール中の某販売店の成績

一部のMCNは、ライブコマースで知名度を上げたい販売者の心理につけ込み、手数料さえ取っている。 MCNは販売店に、販売量保証という魅力的な条件を約束することもある。前提として、販売者は20%の手数料を支払い、サービス料を前払いする必要がある。ライブ配信当日、MCNは自腹を切って約束した販売額まで商品を購入する。ライブ配信が終わり、販売者が約定したロイヤリティを支払った後、MCNは狂ったように返品を始める。 この手の被害に遭ったある服飾ブランドは、やりきれない気持ちをこう語る。「通常の返品率40%に加えて、MCNによる返品率が50%に達することもあり、最終的に取引が成立するのは10%もない」

2.中堅ライバーの宣伝効果は期待外れ

新型コロナウイルス感染症の流行が、国民総ライブコマース時代の到来を加速させ、トップECライバーが無数の金を吸い込み、タレントや有名人もライブコマースへと殺到した。

ライブコマースのブレイクに、新型コロナウイルス感染症の影響が加わって、多くの企業が参入を試みるようになっている。ただし、提携コストが高いわりにプロモーション時間が短いため、二の足を踏む中小企業も多い。したがって、ほとんどのライブコマースは、プラットフォームが手配する中堅ライバーによって行われている。

大手ECモール「タオバオ(淘宝網)」のトップショップのひとつ「江小魚」は、以前ゲーム実況で人気のライバーを招いてライブ配信でプロモーションをしてもらったことがあると話す。当時、2商品1万元(約15万円)で販売したが、連続3回のライブ配信でのCV率(商品の購入や申込みを達成した割合)はそれぞれ0.5%、1%、0%だった。初めてのライブ配信の試みは失敗に終わっり、とてもがっかりしたという。ライブコマースの集客効果は見かけ倒しというわけだ。

トップライバーも売上量を伸ばすため価格を圧縮し、この競争に火をつけている。しかし、中堅ライバーはフォロワー数もそれほど多くなく、商品の価格交渉力に抜きん出ているわけでもなく、ライブコマースを「ビジネス」として立ち上げるのは、ほぼ無理と言ってよい。

3.消費者保護が不十分

ライブコマースでは、消費者が被害にあうことも珍しくない。

ライブコマースで買い物することの多い張さんは、ここ数日とりわけ腹を立てている。彼女は先週、ライブコマースで「生産者応援フェア」のタイムセールを見て、善意から1箱20元(300円)の牡蠣を買った。箱を開けると中に入っていたのは種牡蠣だったそうだ。地元の海鮮市場なら15元(約230円)もしない。訴えたくても、どこに相談したらいいか分からない、という。

消費者の権益を保護するため、6月16日、人民日報が消費者コーナーに全国ライブコマース告発受付窓口をローンチした。このプラットフォームは、人民日報社ニューメディアセンターがアリババ、京東集団(JD.com)、拼多多(Pinduoduo)、抖音、快手などの著名ECサイトと共に構築したものだ。消費者は、ライブコマースでの商品購入に関連して発生した詐欺行為について当該プラットフォームに訴えることができる。プラットフォームは、寄せられた苦情を関係するECサイトまたはライブコマース運営元に伝え、苦情処理の進捗状況を監督し、処理結果を消費者に迅速にフィードバックする。

大ブレイクする中国ライブコマースの舞台裏(二)ライブ配信は標準になっても主流にはならない

(翻訳・永野倫子)

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