自己変革を目指すバイドゥ EC事業開拓は「知識コンテンツ+ライブ配信」で差別化

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IT大手バイドゥ(百度)はECに乗り出すという願望をついに抑えきれなくなったようだ。

先月18日に終了した中国最大級のEC商戦「618セール」では、大手ECサイト「天猫(Tmall)」、「京東(JD.com)」の勢いはとどまることを知らず、両者はそれぞれ6982億元(10兆5800億円)、2692億元(約4兆800億円)の累計成約額を達成し、これまでのの記録を塗り替えた。今年新たに618セールに参加したのは、ソーシャルコマース大手の「拼多多(Pinduoduo)」、ライブコマース分野で存在感を増すショート動画プラットフォームの「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」と「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」だ。さらに、やや控えめな新プレイヤーとしてバイドゥも加わった。

このタイミングに合わせてバイドゥは「618チャンネル」をリリースし、京東のサプライチェーン、物流、アフターサービスシステムと連携し、正式にライブコマースをスタートした。

バイドゥの発表によると、6月17日までに618セール関連のライブコマースによる成約額は1000万元(約1億5000万円)を突破した。期間中、ライブコマース効果によりバイドゥの取引額は5月に比べて571%増加している。

バイドゥにとって今回のライブコマースは単なるトライアルのようにも見えるが、EC分野へ参入したいという願望は確かに存在する。

自発的な変革を求めて

今年20周年を迎えるバイドゥは、コア事業への圧力に直面している。

バイドゥが誇るAIや自動運転などは、技術的な優位性はあっても短期間では収益化が望めない。一方で広告業界全体の不振や「バイトダンス(字節跳動)」など競合の台頭により、バイドゥが売上高の半分以上を依存している広告業務も危機に瀕している。2018年第2四半期から2020年第1四半期にかけてバイドゥの広告事業の収益の伸び率は徐々に緩やかになり、その直後にマイナス成長の泥沼に陥っている。

データ:バイドゥの決算報告  作成:36Kr

売上高が落ち込んでいると同時に、バイドゥの利益状況も楽観視はできない。2018年第2四半期から2019年第1四半期にかけてバイドゥのNon-GAAPベースの純利益および純利益率は連続して減少した。その後2019年第2四半期から第4四半期までは徐々に上昇したが、新型コロナウイルスなどの影響を受け、2020年第1四半期は再び大幅に減少した。

データ:バイドゥの決算報告  作成:36Kr

バイドゥ自身も置かれている立場を十分に認識しており、積極的な変革を求め始めている。新型コロナウイルスの感染拡大時には、ヘルスケアプラットフォーム「百度健康」でオンライン医療相談サービス「問医生(Wenyisheng)」をリリースし、医療分野での収益化を模索し始めた。その後、ライブ配信専門チャネルをリリースし、知識・情報系の配信に力を注ぎ、モバイルコンテンツのエコシステムを補完した。また先ごろ、暮らしの便利サービス、グルメ・エンタメ、旅行などの内容を含む「服務中心(サービスセンター)」をリリースし、過去に売却した「百度糯米(nuomi.com)」や「百度外売(Baidu Waimai)」のような生活関連事業に再び手を伸ばそうとしている。

そして直近のチャレンジはECだ。バイドゥは先月22日、ランキングプラットフォーム「蓋得排行(GuideRank)」への出資が完了したことを発表した。取引完了後、バイドゥは同社の株式26.06%を保有し、最大の単一株主となった。これに先立ち、ECサイト構築サービスを手掛けるSaaS企業「中国有賛(China Youzan 以下、有賛)」への出資も行っている。

蓋得排行や有賛との提携の目的は、ユーザーのニーズに応えサービスを充実させることだ。蓋得排行は消費財ランキングと商品購入ナビゲーションをメインとしている。有賛との業務提携の重点は、バイドゥのミニプログラム「百度智能小程序(バイドゥスマートミニプログラム)」にある。

今後はユーザーがバイドゥのアプリで商品を検索し、外部のECプラットフォームへ移動し商品を購入するというシーンが大幅に減少するかもしれない。その代わりにユーザーはバイドゥのアプリで商品を検索した後、検索結果に表示されたライブ番組へ移動し、配信を見て商品情報を得て購入を決めるようになるだろう。あるいは商品を検索した後、売れ筋ランキングで商品情報を得て、関連するスマートミニプログラムに移動して商品を購入するかもしれない。これはバイドゥがすでにライブ配信、コンテンツ、ショッピングというクローズドループを完成し、自らのECエコシステムを構築し始めていることを意味する。

バイドゥはECで成功できるのか

バイドゥはEC参入の時期が遅かったのは認めざるを得ない事実だ。総合ECにしてもライブコマースにしてもすでに大手が出揃っている。

バイドゥの比較対象となるのは、短編動画アプリからライブコマースへ切り込んだ抖音と快手だ。両者はすでにEC分野において一定の地位を築いている。快手は今年5月、、ECのDAU(1日当たりのアクティブユーザー数)が1億を突破したと発表した。バイトダンスは618セールの前に正式に抖音のEC部門を設立している。関係者によると2020年、快手はライブコマース業務のGMV目標を2500億元(約3兆8000億円)、抖音は2000億元(約3兆円)に設定しているとのこと。

しかしバイドゥは、他社とは異なる路線を歩むつもりのようだ。

ライブコマースについて、バイドゥは他社のようにセールストークと安さを売りにせず、「知識を伝える」ことにこだわっている。618セールの期間も知識・文化系のコンテンツのライブ配信を多く行い、そこから商品の販売へ繋げた。

バイドゥには検索機能以外に、オンライン百科事典「百度百科」、Q&Aプラットフォーム「百度知道」、電子書籍プラットフォーム「百度文庫」など知識分野に関するサービスが多くある。今年の「バイドゥモバイルエコシステム大会」では、同社のプラットフォームがすでに2億2000人の知識系コンテンツのクリエイターを抱えていると発表され、そのうち6万人が同社の協力機関、5万人が専門家・学者だとした。

ユーザーがバイドゥのアプリで検索する際のキーワードには、常にECへのニーズが強く表れている。「バイドゥ618 EC検索ビッグデータレポート」によると、今年の「618」関連のキーワードの検索回数は、昨年の「双11(ダブルイレブン)」関連のキーワードの検索回数に比べて95%増加した。

今後バイドゥが激戦のEC分野において地位を築けるかどうかは、同社が目指す差別化路線が成功するかどうかにかかっている。
(翻訳・普洱)

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