出版業界の起死回生を図る「中国のナショナル・ジオグラフィック」、地域文化を生かしたキャンプ場事業をスタート

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自然に身を置き、キャンプを楽しむカルチャーは世界で100年以上の歴史を刻んでいる。とはいえ、中国ではまだ広まり始めたばかりだ。中国でキャンプと言えば、現在は主に教育目的のものが多い。そのような中、「中国版ナショナル・ジオグラフィック」とも呼ばれる歴史ある雑誌「中国国家地理(Chinese National Geography)」がキャンプ場事業に着手し、文化ツーリズム市場に参入するという。地理や文化をテーマにキャンプ場をIP化していく。

今年で創刊70周年となる中国国家地理は、読者が紙媒体からウェブ媒体に移行していくという時勢に逆らってますます発行部数を伸ばしている雑誌だ。姉妹誌の「博物」「中華遺産」を含めた月刊誌3本の発行部数は100万部を超えているほか、英語版、仏語版など10数カ国の言語に翻訳されている。また、中国版ツイッターの微博(Weibo)に開設した公式アカウントは1117万人のフォロワーを抱えている。

画像は中国国家地理より

大多数の紙媒体と同じく、中国国家地理の編集チームも新たなビジネスモデルを模索中だ。

同誌が計画する「中国国家地理キャンプ場」の郭頴謙総経理によると、ディズニーがアニメーション作品を基盤にテーマパークを展開したのと同様に、コンテンツとリアルな体験を融合し、文化ツーリズムプロジェクトとして事業化を構想しているという。中国は地理的にも文化的にも資源が豊富な一方、地域文化を反映する文化・観光事業が少ない。キャンプ場はテーマパークとは異なり、よりアウトドア活動の色彩が濃く、自然や開放感を感じられる場だ。中国国家地理のカラーに合った切り口といえる。

同誌編集部はこれまでの数十年の歩みを礎に、中国の地理・文化に対する深い造詣や伝達力、ブランドリソースの統合力、読者に対する影響力を駆使して、没入感を体験できる双方向コンテンツとハイキング、キャンプ、自然教育、旅行、レジャーを一体化した独自のIPを構築していく。

今年10月までには山東省淄博市に初のキャンプ場が開業予定だ。郭総経理によると、淄博はかつて斉国(春秋戦国時代)の都で、その特異な地理的特徴から独自の文化を育んだ土地柄だ。「琉璃(るり)の都」とも称され、蹴鞠(けまり)の発祥の地ともされる。万里の長城の一部である「斉の長城」で知られ、ご当地グルメも豊富だ。

キャンプ場は、現地の地理・文化を紹介するインタラクティブ体験型の展示館、アウトドア探索基地、企画・イベントスペースなど複数のセクションに分かれている。

■地理・文化インタラクティブ体験館:マルチメディアやテクノロジーを駆使したインタラクティブ型のデジタル体験を通じて現地の地理・文化を伝え、来館者との双方向の交流を図る。

■アウトドア探索基地:テントやキャビンのサイト、レベル別に設定されたハイキングコース、フィールドアスレチック、アウトドアスポーツ施設などを設ける。ハイキングコースの一部は現地の景勝地へアクセスできる。

■企画・イベントスペース:近年提携を進めてきた知識系インフルエンサーの知見やノウハウを生かした施設。越冬植物を集めた寄せ植えや太陽光エネルギーの循環で運用するニシキゴイの池などが一例だ。

今後もオンラインとオフラインを融合した運営を進め、地域文化に関連したイベントを企画していく。各界の専門家や著名人、インフルエンサーなど高い影響力を持ったゲストを招いたプログラムやイベントを展開するほか、キャンプを通じた自然教育のコンテンツ体系も企画し、子ども向けに質の高い教育サービスを提供していく。

次の開設予定地·雲南省での視察の様子

次のキャンプ場開設予定地としては、雲南省西部を検討中だという。独特な地形や動植物の生態、多様な少数民族が暮らす文化的背景など、文化ツーリズムとして豊富な切り口があると見込んでいる。

中国国家地理の社長兼編集長の李栓科氏は「中国は世界中で最も完成された自然と最も豊富な景観に恵まれている。独自の特徴を持つエリアごとにキャンプ場を設け、科学的な視点やテクノロジーを活かして、それぞれ地域の持ち味を編集し伝えていきたい」と述べている。
(翻訳・愛玉)

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