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フィンテックからテックフィンへ IPO目前の「アント・グループ」が目指す最終形態とは

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上海証券取引所「科創板(スター・マーケット)」と香港証券取引所に重複上場する計画を明らかにした「螞蟻集団(アント・グループ)」は、中国最大の電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」を核に、さまざまな金融サービスを展開してきた。しかしここ数年、アント・グループは自社を金融会社ではなくテック企業と定義するようになる。決済ツールから金融サービスへ、さらに「グローバルなテック企業」という最終目標を目指し、15年をかけて平坦ではない道のりを歩んできた。

現在の主要事業は決済、インターネット金融、テクノロジーだ。2004年にリリースされた支付宝は当初、オンライン取引当事者間の信用問題を解決する決済ツールだった。その後、自ら金融サービスを手掛け、今では金融に関するほぼ全ての事業ライセンスを取得して資産運用、P2Pレンディング、保険などを展開している。

テクノロジー事業では主に、金融事業で蓄積した技術力を生かした技術サービスを提供している。同社の予測によると、2021年に総売上高に占める技術サービスの割合は65%に達する見込み。技術サービスの売上高が最大となれば、同社はフィンテック(Fintech)からテックフィン(Techfin)へと企業スタイルを変えることに成功したと言える。

IPOを前に社名変更と支付宝のバージョンアップを実施

同社は6月22日に社名を「浙江螞蟻小微金融服務(螞蟻金服、アント・フィナンシャル)」から「螞蟻科技集団(螞蟻集団、アント・グループ)」に変更した。金服(金融サービス)から科技(テクノロジー)へ。今回の社名変更は、同社が半年前に打ち出した「グローバル化、内需、テクノロジー」の三大戦略と合致する。

社名変更に加え、9億人超の中国国内ユーザーを抱える支付宝の大規模なバージョンアップも行った。胡暁明CEOは「支付宝を立ち上げてからの15年間で最も大きなバージョンアップ」と説明。これによって支付宝は単なるツールから脱皮を果たした。

バージョンアップによって支付宝は、決済ツールおよび金融プラットフォームから生活サービスプラットフォーム、デジタルライフプラットフォームへと拡張された。支付宝は最近、「生活に関する用事3万件は支付宝におまかせ」というキャッチフレーズを打ち出した。新バージョンではトップページに表示されるカテゴリーが14件に増える中でデリバリー、グルメ、ホテル、映画・演劇の優先順位が上がり、生活サービスの強化が鮮明となっている。

胡暁明CEOは今年1月、アリババ傘下で地域密着型生活関連サービス事業を手掛ける「阿里本地生活服務(Alibaba Local Life Service)」の董事長も兼務することになった。アリババは生活関連サービスの体制を整え、競合の「美団点評(Meituan Dianping)」に対抗する構えだ。アント・グループの評価額はすでに、美団点評の時価総額1兆2000億香港ドル(約16兆5000億円)を上回っている。

次の15年

IPOはゴールではなくスタートに過ぎない。テック企業への路線変更、支付宝の生活サービスプラットフォームへのバージョンアップ、世界的な事業拡大はいずれも大きなテーマだ。特に海外進出で今後直面する規制や競争は、中国国内に比べ複雑かつ目まぐるしいものとなるだろう。

グローバル化を進めた支付宝はここ3年で、タイの「TrueMoney」、フィリピンの「GCash」、マレーシアの「Touch’n Go」、インドネシアの「DANA」、インドの「Paytm」、パキスタンの「Easypaisa」、バングラデシュの「bKash」、韓国の「Kakaopay」、香港の「AlipayHK」という9件の海外決済アプリと提携。アント・グループの戦略は、現地企業への出資を通じて自社の能力を発揮することだ。

さらに投資を通じて事業範囲を拡大している。アント・グループが進める戦略的投資には自社のエコシステム構築という明確なスタンスがある。例えば、シェアサイクルなどを手掛ける「哈囉出行(Hello Global)」のシリーズD1でリード・インベスターとして3億5000万ドル(約370億円)を投じ、シェアサイクルの「デポジットフリー」を短期間に実現することで事業成長を後押しした。

36Krのまとめによると、過去8年間にアント・グループは金融、海外進出、消費、先端テクノロジーなどの分野で少なくとも160社に投資した。次の15年は、同社が進化を続けながら中国と海外で事業拡大を図る見通しで、そこには数多くの難題も待ち構えているだろう。
(翻訳・神戸三四郎)

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