ソフトバンク出資の「貝殻」が米上場 時価総額4兆円超で「不動産の雄」の地位確実に

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ソフトバンク出資の「貝殻」が米上場 時価総額4兆円超で「不動産の雄」の地位確実に

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ソフトバンクグループやテンセント(騰訊)が出資する中国のオンライン不動産取引プラットフォーム「貝殻找房(KE Holdings)」が8月14日(北京時間)、米ニューヨーク証券取引所に上場した。不動産仲介大手の「鏈家網(Lianjia)」傘下で発足してから、わずか2年4カ月での米国上場となる。新規株式の公開価格は1ADS(米国預託株式)当たり20ドル(約2100円)。IPO規模は21億2000万ドル(約2230億円)に達し、米国で上場した中国企業としては、2018年3月に上場した動画ストリーミングサービス「愛奇芸(iQiyi)」以来最大となる。

上場初日、同社株は公開価格を87.2%上回る37.44ドル(約4000円)で取引され、時価総額は422億ドル(約4兆4000億円)に膨らんだ。これは生活関連サービスプラットフォーム「美団点評(Meituan Dianping)」が2018年に上場した際の時価総額483億ドル(約5兆1000億円)に匹敵する規模だ。貝殻找房が好スタートを切ったのも決して意外なことではない。テンセントをはじめ大手ファンドは「衣・食・住・交通」の「住」の分野でも新たなIT大手が誕生することを見越してきた。そして今回、貝殻找房がその器であることをほぼ実証したことになる。

貝殻找房の誕生の背景

2015年から 2017年にかけて、インターネットを導入した各業界の「革新」がピークを迎える。ライドシェアの「滴滴出行(Didi Chuxing)」や美団がモバイルインターネットを巡る戦渦を勝ち抜き、見事ユニコーンの称号を獲得したのもこの時期だ。しかし不動産分野でのインターネット活用は壁に突き当たっていた。業界では「安居客(Anjuke)」が上場を目前にして、クラシファイド広告大手「58同城(58.com)」への身売りを余儀なくされたほか、オンラインからオフラインへと手を広げた「捜房網(Fang.com)」や「愛屋吉屋(iwjw.com)」も軒並み失敗に終わる。

「衣・食・住・交通」のうち「住」だけが全敗を喫したのは、不動産の市場規模が原因ではない。中国投資(CIC)のリポートによると、2019年の中国の新築、中古住宅および賃貸住宅の市場規模は22兆3000億元(約340兆円)で、2024年には30兆7000億元(約470兆円)に達すると見込まれている。

単なるトラフィック頼みのビジネスモデルではリードを奪うことはできない。ネット不動産取引は、それまでの常識を根本から覆すような革命児を必要としていた。そこに現れたのが貝殻找房だった。

不動産業界の「滴滴・美団」を目指して

貝殻找房の彭永東CEOは当時、中国で次にオンライン化できる業界は不動産関連だとにらんでいた。住宅という大きな資産を扱う不動産取引において、単純に情報をマッチングするだけでは不十分だ。彭CEOは、不動産取得に関わるさまざまなプロセスでサービス向上を図り、取引全体を円滑に行うことが不可欠だとし、多くのネット不動産会社が失敗した原因はここにあると指摘する。

貝殻找房の創始者で会長の左暉氏は、貝殻の前身である「鏈家網」をプラットフォームに組み入れ、さらに業界を大きく変える二つのことを成し遂げた。

一つは、不動産仲介エージェントを成約件数だけでなく各プロセスのサービス品質で評価する「エージェント・コーポレーション・ネットワーク(ACN)」を作り上げたことだ。

それ以前は自分の取り分を少しでも増やそうと、エージェントによる顧客の奪い合いや不正な取引が横行していたが、ACNではプロセスごとにサービスが評価され、それが取引にも影響するため、全体的なサービスの向上につながった。さらに信用スコアを導入し、エージェントのサービス品質を数値化して管理できる。

もう一つは、データやテクノロジーを活用したことだ。前身の鏈家網はいち早く不動産物件のデジタル化に乗り出し、2020年6月30日時点で約2億2600万戸もの住宅を抱える巨大なデータベースを作り上げた。また取引プロセスのデジタル化や標準化においても、カスタマイズ検索やVR内見など革新的なサービスを導入している。VR内見できる3D化した不動産物件は現在450万戸を超えており、世界最大のバーチャル物件データベースとなっている。

8分で1000件が売れた不動産物件のVR内見サービスが日本上陸 自宅にいながら家探しが可能に

業界の常識を打ち破るビジネスモデルとテクノロジーにより、貝殻找房は中国最大の不動産取引プラットフォーム、また中国第二位の商業プラットフォームの地位に上り詰めた。市場は依然として大きく成長する可能性を秘めている。貝殻找房が滴滴や美団と肩を並べる日もそう遠くはないだろう。
(翻訳・畠中裕子)

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