TikTokの売却先候補、ウォルマートが名乗りを上げた理由 背後に幹部の軋轢も

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TikTokの売却先候補、ウォルマートが名乗りを上げた理由 背後に幹部の軋轢も

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世界中でヒットした中国発の短編動画アプリ「TikTok」の米国事業をめぐり、複数の米国企業が買収に動いている件について、新たに小売り大手ウォルマートが加わったことがわかった。すでに買収協議に入っているマイクロソフトと共同で進めていくという。米時間27日付でロイターなど複数の媒体が報じた。

前日にはTikTokのグローバルCEOを務めたケビン・メイヤー氏が辞任を発表したばかりだ。報道を受け、ウォルマートの株価は一時7%上昇した。

しかし、老舗小売企業であるウォルマートはなぜ参戦してきたのだろうか?

ウォルマートの野望

米ニュース専門局CNBCによると、TikTokの親会社バイトダンス(字節跳動)が売却を予定しているのはTikTokの米国事業、カナダ事業、豪州事業、ニュージランド事業で、取引額は200億~300億ドル(約2兆1300億~3兆2000億円)になるとみられている。

マイクロソフト&ウォルマートと買収案件を争うのは、米ソフトウェア企業オラクルとバイトダンスの出資者たちによる一大アライアンスだ。

ウォルマートはCNBCに公開した声明の中で「マイクロソフトとウォルマートが提携することで、米国内のTikTokユーザーを満足させ、さらにTikTokに対する米当局の懸念を払しょくできる自信がある」と表明している。

世界展開する小売企業の老舗ウォルマートがオンライン市場を開拓するにあたって、TikTokのような新興SNSには大いなる期待を寄せているのだろう。オンラインの世界における強敵アマゾンと戦う上でも、TikTokは劣勢を挽回する武器になる。TikTokの買収が実現したとして、その後の協業案について詳細は明かしていないが、ウォルマートは今年になって新しい会員サービス「ウォルマート+」を発表しており、市場で注目されている。これはアマゾンの有料会員向けサービス「Amazonプライム」に類似するもので、年会費はAmazonプライムの119ドル(約1万3000円)よりも安い98ドル(約1万円)に設定されている。ウォルマート+に入会すると商品の即日配送サービスが利用できるほか、店舗併設のガソリンスタンドで割引が受けられるなどの特典がある。

ウォルマートとマイクロソフトは一貫して良好な関係にあり、2年前には5年間にわたるパートナーシップを締結している。ウォルマートはマイクロソフトが提供する「Microsoft Azure」などのクラウドサービスを大々的に導入しており、この面でも「AWS(アマゾンンウェブサービス)」を抱えるアマゾンと敵対し、あらゆるチャネルで顧客を奪い合っている。

目下最も人気のある新興SNSであるTikTokを獲得することで、ウォルマートはアマゾンに攻勢をかけることになる。TikTokは米国でもすでに1億のMAU(月間アクティブユーザー)を抱えているからだ。

TikTok創業者・張一鳴氏の選択

マイクロソフトとウォルマートによるアライアンスは、TikTokの親会社であるバイトダンス創業者の張一鳴氏にとって、もう一方の売却先候補オラクルよりも自身のテイストに合うと感じることだろう。張氏は以前、マイクロソフト中国法人に勤めていた経歴もある。なにより、バイトダンスへの出資者らを取り込んだオラクル陣営はすでに張氏の逆鱗に触れてしまっているのだ。

TikTokの前グローバルCEOケビン・メイヤー氏は、同社の売却協議の席から外されたことで辞職を決断したといわれている。つまり、メイヤー氏は辞任前すでに張氏の信用を失っていたことにほかならない。

それ以前に、両者は大きく意見を対立させていたという。

関係者の証言では、メイヤー氏は米政権からのこれ以上の締め付けを回避するために、米政府による行政命令に速やかに従うべきだとして米国事業を売却するよう主張したが、張氏はTikTokのグローバル事業推進の方向性を貫きたい考えがあったようだ。しかし一部情報によると、メイヤー氏は自身の案を最善と考え、張氏の同意を得ることなくバイトダンスの米国の株主に接触して米国事業の切り離しを進めようとしたという。

メイヤー氏としては、株主たちの意向通りに売却が成立すれば、自身が引き続きTikTokの責任者として居座れるとの勘定があったかもしれない。しかし張氏にとっては、これは意見の対立以上に深刻な、いわば越権行為だった。こうしてメイヤーが再びTikTokを率いる機会は失われたのだ。

メイヤー氏は辞職を伝えるメールの中で、米政府からの圧力によって、TikTokのグローバル事業を率いるという自身の本来の職務が変質してしまうと述べている。同氏はもともとバイトダンスの出資者が張氏に紹介した人物だという。こうした経緯もあり、オラクル陣営がTikTokの買収に漕ぎつけるチャンスはますます遠のいたようだ。

いずれにせよ、TikTokの売却案件は近いうちに片が付くだろう。中国IT企業による海外進出の歴史上、未曽有の事件はまもなく一段落する。もしも張一鳴氏が売却先にマイクロソフト&ウォルマートを選ぶなら、取締役会に不協和音が生じる可能性は否めず、これがバイトダンスにとって新たな地雷になることもあり得る。
(翻訳・愛玉)


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