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人気ゲーム「荒野行動(Knives Out)」などで知られる中国ネット大手「ネットイース(網易)」は8月13日、2020年第2四半期(4~6月期)の決算報告を発表した。今四半期の売上高は前年同期比25.9%増の181億8000万元(約2780億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は同35.3%増となり、いずれも市場予測を上回った。
大手企業は売上高、利益の水準がもともと高く、大幅な成長をすること自体容易ではない。内訳をみると、ネットイースが市場予測を上回る成長となったのは、三大事業のゲーム、教育、音楽分野によるところが大きい。
オンラインゲーム:自社開発+海外展開
ゲーム関連業務がネットイースの安定した成長分野と言える。
オンラインゲームの第2四半期売上高は前年同期比20.9%増の138億3000万元(約2100億円)だった。その安定成長の背後には自社開発と海外展開がある。
第2四半期だけでも「星戦前夜:無烬星河(EVE Online: Infinite Galaxy)」「夢幻西遊(Fantasy Westward Journey)」「猟手之王(King of Hunters)」「実況球会経理(PES CLUB MANAGER)」「漫威(マーベルスーパーウォー)」などのゲームがリリースされ多くの注目を浴びた。「荒野行動」や「明日之後(The Day After Tomorrow)」は日本での売れ行きも良く、ネットイースの国際的プレゼンスをさらに高めることとなった。
米アプリ分析会社「App Annie」が19年のiOSおよびGoogle Playユーザーの総合支出に基づき算出した結果、ネットイースが世界2位のモバイルゲームパブリッシャーとなった。
ネットイースの決算報告前日、テンセント(騰訊)も決算を発表している。ネットイースとテンセントのゲームはそれぞれ違いがある。テンセントの膨大なユーザー規模に対して、ネットイースの人気ゲームは課金の多さと自社開発のゲームの多さにある。19年の新作ゲームのうち、ネットイースの自社開発ゲームが84.2%を占めた一方で、テンセントは57.9%にとどまっている。
ネットイースはゲームの種類の多さも群を抜いている。米ワーナー・ブラザースと共同開発したスマホ向けカードゲーム「ハリー・ポッター: 魔法の覚醒」や携帯型ゲーム「天諭(Revelation)」はいずれも期待値の高いゲームだ。特筆すべきは、今年5月のゲーム発表会で二次元ゲームが多くリリースされている点で、二次元ゲーム製品の比重が非常に顕著になっている。
ゲーム事業において海外市場は注目すべき成長分野だ。ゲームの海外展開におけるテンセントのストラテジーは世界トップクラスのゲーム企業を買収し、戦略的アライアンスを構築することにある。一方、ネットイースは製品自体を重視しているケースが多い。
2013年にゲームの海外展開を始めたネットイースは、初めからすべてが順調だったわけではない。13年12月、中国国内で爆発的な人気を集めた「倩女幽魂(チャイニーズ・ゴースト・ストーリー)」をベトナムでリリース。14年3月には、「英雄三国(Heroes of Kingdoms)」をタイの民族衣装に変えてスケールテストを行なった。しかし、これらの内容が「中国的すぎる」との理由から、現地では受入れられなかった。また、プロモーションの未熟さから、海外展開は特段注目を浴びることもなく終わった。
ネットイースにとってゲームの海外展開の道を切り開いたのが「陰陽師」だ。日韓両国をはじめ世界を席巻し、多くの国と地域で売り上げがトップとなった。また、参入が最も難しいと言われている日本市場でも、「荒野行動」「IdentityV 第五人格(アイデンティティファイブ)」「陰陽師」「明日之後」などがApple Storeでランキング上位100に入っている。中でも「荒野行動」は売上ランキングトップ10、「IdentityV 第五人格」はトップ50に名を連ねている。
ネットイースはハイレベルな人材を登用することで国際色豊かな開発チームを形成している。今年6月には、日本で「桜花スタジオ」を開設した。総責任者はバンダイナムコゲームス開発部元本部長の赤塚哲也氏だ。同スタジオは家庭用ゲーム機向けのタイトル開発に特化したネットイース初となるスタジオだ。ここからもゲーム機本体の分野で自社開発の配置を整えつつあることが伺える。
当然ながら、投資による「伏線」もしっかり準備している。19年7月には、カナダ最大の独立系ゲームスタジオ「Behavior Interactive」の株式を取得して少数株主となった。
Behavior Interactiveは、非対称対戦型ゲームの先駆者として世界に2億人のゲーマーを有する。代表作品は世界初となった非対称対戦型ホラーサバイバルゲーム「Dead by Daylight(デッドバイデイライト)」だ。19年11月にはシミュレーションゲームで知られる英「Bossa Studios」の一部株式の購入を発表し、「Surgeon Simulator 2 (サージョンシミュレーター)」などの代表作品は欧米諸国で人気を博している。
教育:K12が主なけん引力
ゲームがネットイースの基盤だとすれば、オンライン教育分野は一歩先行くパイオニアだ。
昨年10月のIPO以来、オンライン教育ブランド「網易有道(NetEase Youdao)」の業績と株価はどちらも目を見張るものがある。ここ6四半期連続で急成長を維持しており、粗利益率も改善され45.2%に達している。オンラインレッスン関連業務の粗利益率は51.7%に達した。
今四半期、オンライン学習コンテンツ「有道精品」の売上高と生徒数は急成長し、売上高は前年同期比215%増の4億6000万元(約70億円)となった。K12(幼稚園+小学校1年から高等学校3年まで)が主なけん引力となり、K12関連のオンライン授業の売上高は同229%増の3億1000万元(約47億円)となった。正規価格の課金ユーザーは同359%増の32万9000人となった。
オンライン教育はチャンス市場と言える。
中国のオンライン教育市場規模は18年には1034億元(約1兆6000億円)に達し、直近5年の年平均成長率(CAGR)は56.4%に上っている。また2023年にはさらに拡大して7198億元(約11兆円)規模となり、今後5年の年平均成長率は47.4%に達する見通しだ。新型コロナウイルス感染拡大時期において、オンライン教育の浸透率は大幅に上昇、アクセス数も増大した。
オンライン教育に関しては、授業レベルと学習効果に最も力を入れている。この二つの課題をうまく解決できるか否かで、この業界が市場規模拡大に向けて飛躍的な成長を遂げられるかが決まると言っても過言ではない。。
網易有道はこの二つの課題にソリューションを提供した。
一つ目が、「双師」と呼ばれるモデルだ。大人数クラスになると教育効果は必然的に下がってしまう。一方、マンツーマンや少人数クラスであればこの問題はないが、企業にとっては収益面での圧力となる。「双師」モデルとは一流教師がライブ授業を行い、補習担当教師が学生の質問などに答えたりする方式だ。一流教師の確保が難しいという問題を克服し、カバー範囲を拡大することで、オンライン教育水準の向上につなげた。
網易有道のオンライン教育の重点は授業にあり、現行の「双師」モデルでさらにレベルアップを図っている。さらにスマートロボットの導入でインタラクティブなシーンを増やし、一流教師と大人数クラスとのやりとりをより多く作り出している。
もう一つが自社開発技術によるオンライン授業のレベルアップだ。同社の技術を生かして、カリキュラムに、相互交流、自動採点、操作システムのシームレス化を導入するなど、より集約化された高効率なインタラクティブな手法を取り入れている。
音楽:差別化戦略
後発的優位性で音楽分野を制す。
ネット音楽配信の「網易雲音楽(NetEase Cloud Music)」はスタートは遅い。とはいえ幅広い音楽シーンの恩恵も受け、自作コンテンツを通じてユーザー同士が交流できる機能「雲村社区」などSNS的な運営モジュールを設けた。人工知能(AI)のカスタマイズリコメンド機能を強化したことで、ユーザーの囲い込みや粘着性が向上した。主要運営データから見ると、網易雲音楽と中国最大の音楽配信サービス企業「テンセント・ミュージック・エンターテイメント(騰訊音楽娯楽集団、TME)」が中国国内ストリーミング音楽市場ではトップランナーだ。
網易雲音楽などの主要事業のけん引の下、その他の部門も持続的に成長し粗利益率は18.5%まで伸びた。うち網易雲音楽の売上高は三桁成長をキープ、ライブ収入と会員収入が過去最高を更新した。
網易雲音楽はここ最近集中的にユーザープールや音楽著作権に関するいくつかの重要な提携を行なった。8月5日には、アリババの有料会員制度「88VIP」と戦略的パートナーシップ提携に関する共同発表を行なった。そのわずか6日後、米ユニバーサル・ミュージック・グループと複数年のライセンス契約を結んでいる。このライセンス契約により、ユニバーサルミュージックから楽曲提供を受けるほか、両社は音楽作品、サービス、PRなどの分野でより深く広い提携モデルを模索していくことになる。
課金、広告、ライブ配信、今後のSNSからの収入のほかにも、チケット販売や音楽関連グッズなどのビジネスモデルからの収入もある。
このように見てみると、ネットイースが歩んでいるのは明らかにブランド戦略だ。ゲームにしても音楽、教育にしても、そこには後発的優位性の要素が垣間見える。
戦略を見極め、さらにゲーム、教育、音楽の三大成長分野を手中に収めるネットイースは市場でも受入れられている。米モルガン・スタンレー、野村証券、米ゴールドマン・サックス、中国交通銀行、安捷証券(AJS)など多くの投資機関がターゲットプライス(目標株価)を上方修正した。うち、モルガン・スタンレーはネットイースのターゲットプライスをウォール街で最高の600ドル(約63000円)に引上げ、時価総額を1000億ドル(約10兆5000億円)と見積もっている。(翻訳:lumu)
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