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生活関連O2Oサービス大手「美団点評(Meituan Dianping)」(以下、美団)が、中国のシェア電動自転車市場の覇権争いに再び火をつけた。
美団は8月21日に発表した2020年第2四半期(4~6月期)決算で、同四半期中にシェア電動自転車計30万台を投入したと明らかにした。王興CEOは決算報告に関する電話会議で「電動自転車のシェアリング市場には極めて大きなチャンスがあり、長期戦略に盛り込む意義がある。高い回転率が経済効果と利益をもたらし、短期間で黒字化が実現する可能性もある。われわれは業界トップを目指していく」と明言した。
美団は今年上半期、OEMメーカーに電動自転車100万台以上を発注したほか、「天津富士達自行車(Tianjin Fuji-Ta Bicycle)」の電動自転車「Q8」モデルを買い占めたとの情報がある。現在、全国複数の地域で代理店とスタッフを募集しており、シェア電動自転車の本格的な商業化を準備しているという。とはいえ、政策や都市ごとに決められた投入台数の制限があるため、現時点で用意した台数の少なくとも半数が未投入のようだ。
チャンス到来
美団と競合する「滴滴出行(Didi)」(以下、滴滴)をはじめ大手各社も、今年に入って電動自転車のシェアリング事業を強化している。滴滴は4月に発表した今後3年間の戦略で、同社のシェア自転車事業「青桔単車(DiDi Bike)」を引き続き成長の柱とし、今年はとくに電動自転車に重点を置くとの方針を示した。青桔単車が北京市で始めた新規サービス3種のうち2種は、電動自転車によるものだ。
大手各社がシェア電動自転車へ進出するのは初めてではない。2017年ごろ、当時のシェア自転車市場をリードしていた「ofo(オッフォ)」とアリババ傘下の「モバイク(摩拜単車)」は、電動自転車の導入を試みたが、最終的に省都都市クラスの2級都市およびそれ以下の3級都市で小規模な導入を実現したにすぎなかった。当時、北京などの1級都市では電動自転車の導入を推奨しない旨の通達が相次ぎ、浙江省杭州市などの2級都市では導入停止が通達されていた。
2019年4月、電動自転車に関する新基準「電動自転車安全技術基準」が施行され、市場に出回っていた電動自転車の9割近くが基準に適合せず、多くの関連企業が淘汰された。しかし市場では電動自転車へのニーズが依然として高く、必然的に電動自転車のシェアリングサービスにとって有利な状況となった。
当時、「哈囉出行(Hello bike)」や「松果出行(Beijing Kuai Song Guo Technology)」など早くからシェア電動自転車市場に参入していた企業は、車両の老朽化と廃棄のタイミングを迎えていた。新基準の各条項および各都市の行政機関が要求する改造防止、防火性能、難燃性、駐車スペースの固定、顔認証などに対応するため、これらの既存進出企業は少なくないコストをかけて車両の改造または新規調達をする必要に迫られた。
一方、市場のニューカマーだった美団や滴滴などは、新基準と行政機関の要求に従った上で、タイヤの太さや振動防止、制限速度、ブレーキ性能など安全面も解決し、電動自転車を新たに設計することができた。
今回、美団が発注した電動自転車に搭載されたリチウム電池の走行距離は約60キロで、1日3回、1回当たり3キロの走行をした場合、週1回程度の交換で正常に運用できる。
業界の基準が統一された現在、美団と滴滴の決戦にとって絶好のタイミングが到来している。
先行投資は利益を生むか?
かつて市場競争が繰り広げられたシェア自転車とは異なり、電動自転車の導入には技術・資金面で高いハードルを越える必要がある。
電動自転車の純生産コストは1台当たり3~4000元(約4万5000~6万円)。日常的な運営・メンテナンス費を加えれば、費用は倍近くになるが、美団にとっては許容範囲だ。各社の製品使用感に大きな差はないため、勝敗を決するのは市場への投入台数となる。
電動自転車のシェアリングサービスは客単価が高く、今後さらに上昇する可能性もある。ある投資家は、事業が順調に推進され、電動自転車1台が1日当たり4、5回稼働すれば、10カ月から1年で初期投資が回収できるとの見方を示す。
現在、1、2級都市のシェア電動自転車市場はすでに飽和しているため、企業の視線は3級以下の地方都市に注がれている。地方都市では、これまで普及していなかった電動自転車が人気を集めると予想されるため、市場は乱戦の様相を呈するだろう。大企業の参入は最終的に業界再編を促進し、中小企業は撤退していくと考えられる。
王興CEOは業界トップを目指すとしているが、滴滴の程維CEOは黙ってそれを受け入れないだろう。滴滴も電動自転車のシェアリング事業を重視しており、美団同様、資金は潤沢にある。
美団が多額の資金を投じて新車を市場に投入し、業界トップになったとしても、その座を維持していけるだろうか。電動自転車のシェアリング事業はあくまでも事業全体の一部で、「やる気」だけで続けられるものではない。自転車シェアリング事業の不振が美団の決算の足を引っ張った過去が電動自転車のシェアリング事業で繰り返されるのを、誰も見たくはない。(翻訳・田村広子)
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