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シンガポールの政府系投資会社「テマセク・ホールディングス(Temasek Holdings)」が、経済状況の変化を背景に中国株の保有比率を上げている。出資先も銀行や不動産から消費系企業へシフトしている。
1974年に設立されたテマセクは、シンガポール財務省の監督下にある私人名義の持株会社であり、シンガポールの大企業の株式を多数保有している。
数日前、運用資産が1億ドル(約100億円)以上のグローバル投資機関が相次いで第2四半期の保有株式レポートを発表した。その中で、テマセクが今年初めて、中国共同購入型EC「拼多多(Pinduoduo)」の株式を購入したことが明らかになった。
最新のテマセクの決算報告によると、2020年3月31日時点で、同社が保有する中国資産が、初めてシンガポールの国内市場の資産を上回った。これは、テマセクがアリババなどの企業への投資を増加させたことによるものだ。今年、テマセクはアリババの米国預託証券(ADR)を香港上場の株式に転換した。
テマセクが中国株の購入を始めたのは16年前のことだ。当初は銀行や不動産に投資していたが、2010年以降、投資の重点を消費者経済へと移行する。ITやEコマースはもちろん、シェアリングエコノミー、AI、ヘルスケアなどの分野にも投資してきた。
決算報告によると、2020年第1四半期の時点でテマセクが保有する中国資産の割合は前年同期比3%増の29%、国内資産の割合は2%減の24%だった。国内投資の割合がここまで減少したのは1974年の設立以来初めてであり、一方で中国資産の比率は過去最高水準となった。
2019年7月、テマセク中国地区総裁の呉亦兵氏は、中国経済紙「21世紀経済報道(The 21st Century Business Herald)」のインタビューに答えて「中国では需要側の消費のアップグレードが大きなテーマであり、この分野では、『信達生物製薬(Innovent Biologics)』『百済神州(BeiGene)』『泰格医薬(Tigermed)』などの画期的な新薬や新治療を開発する企業に賭けている。さらに供給側の技術革新が大きな変化をもたらすと考え、レンタルオフィス『WeWork』の中国部門、配車サービス『滴滴出行(Didi Chuxing)』、顔認証の『センスタイム(商湯科技)』、アリババ系列のフィンテック企業『アント・グループ(螞蟻集団、旧称アント・ファイナンシャル)』などに投資している」と語った。
2019年、テマセクは「中国工商銀行(ICBC)」への出資を削減し、テンセントへの投資を増強した。これは、中国への投資戦略の変化を反映している。
ただし、新型コロナウイルス感染症の流行により、テマセクが保有する「シンガポールテレコム」や「DBS銀行(シンガポール開発銀行)」などの国内企業の株価が急落したこと、逆にアリババや生活関連サービス大手「美団点評(Meituan-Dianping)」などの中国企業の株価が安定して値上がりし、それにより中国株の資産価値が上昇したことにも留意すべきだ。(翻訳・永野倫子)
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