コンピューターで投資判断、アルゴリズム取引で頭角を現す中国新興企業が数億円を調達

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コンピューターで投資判断、アルゴリズム取引で頭角を現す中国新興企業が数億円を調達

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アルゴリズムトレードサービスを提供する「卡方科技(Kafang Technology)」がシリーズBで数千万元(数億円)を調達した。リード・インベスターは「広発信徳投資管理(GF Xinde Investment)」、コ・インベスターは既存株主の「華蓋資本(Huagai Capital)」、「義柏資本(100 Summit)」が単独で財務顧問を務めた。卡方科技の創業者の鄭盛氏によると、調達した資金は研究開発と人材の拡充に充てられるとのこと。

公開資料によると、卡方科技はエンジェルラウンドで「珠池資産管理(Jewellery Water Asset Management)」から、プレシリーズAで「明勢資本(Future Capital)」から資金調達している。さらに2019年12月にシリーズAで資金調達を行っており、リード・インベスターは華蓋資本、コ・インベスターは「銘笙資本(Mingsheng Investment)」だった。

卡方科技は2017年に設立され、アルゴリズムトレードによってクオンツトレード分野へ切り込んでいる。アルゴリズムトレードとは、数理モデル、統計データ、市場のリアルタイム情報など多面的な情報を基に、あらかじめ設計されたアルゴリズムによって注文を行う取引方法だ。卡方科技は同社が完全に知的財産権を所有するトレードサービスプラットフォーム「ATGO」を所有し、アルゴリズムトレードを含む総合的なクオンツトレードのソリューションを提供し、顧客の取引のコスト低減と高効率化に貢献している。

クオンツトレードとアルゴリズムトレードの関係は密接で、コンピューティング能力の向上および機械学習、自然言語処理などの技術の発展によって、アルゴリズムトレードの実用化が進んでいる。投資データ提供会社「Preqin(プレキン)」が発表した2019年第3四半期のヘッジファンドレポートによると、世界で上位10位に入る海外のヘッジファンド機構の70%はクオンツトレードを行っている。中国でもクオンツトレードの規模は拡大しており、2019年には4570億元(約7兆1000億円)に達し、過去3年間で取引規模のCAGR(年平均成長率)は24%となっている。これは中国国内の株式市場の取引件数の20~30%を占めるが、海外市場でクオンツトレードが占める割合と比べると、まだ大きな成長の余地がある。

鄭氏によると卡方科技のアルゴリズムトレードは、取引成功率、取引速度など重要な指標において優れている。同社はさらにあらゆる取引に対応するため、プラットフォームのアップグレードを行っており、今年6月にはATGOクライアント版のバージョン2.0をリリースした。新バージョンの特徴は以下の通りだ。

主要機能の株式取引では中国株だけでなく、米国株、香港株などにも対応する。さらにオプション取引、先物取引やその他のデリバティブ取引についてもアルゴリズムの開発を進めており、現在、オプション取引、先物取引についてはすでにアルゴリズムが投入されている。

対応取引の拡大に伴い、顧客層は従来から顧客であったプライベートファンドだけでなく、証券会社、上場企業、富裕層などを含む総合的な顧客層へと変化している。証券会社については、現在、30社近くの取扱商品に同社のアルゴリズムトレードが入っている。上場企業については、ヘッジファンドにスマートトレードアルゴリズムを提供するほか、上場企業の株主に対して市場リスクとマーケットインパクトを回避するために合法的な株式売買用アルゴリズムを提供する。

今年下半期から来年にかけてアルゴリズム製品以外に、データ製品、リスクコントロール製品、アセットマネジメント製品などのラインアップをリリースする予定だ。

鄭氏によると卡方科技のビジネスモデルは、アルゴリズムの効果と使用規模によって費用が決まるというものだ。現在の年間売上高は数千万元(数億円)で、ここ数年で数倍の伸びを達成しているとのこと。

同社の社員は約60人で、そのうち研究開発人員が75%を占める。

今後は、卡方科技は引き続きアルゴリズムの精度を高め、製品の種類を増やしていく予定だ。また今シリーズのリード・インベスター広発信徳は金融、投資業務を手掛けており、卡方科技の事業にとって大きな支援となるだろう。

今回の出資について、出資者は以下のように語った。

広発信徳の投資総監、張和氏は「フィンテックは広発信徳の持続的な重点投資分野だ。アセットマネジメント分野における構造的変化とチャンスに深く関心を持っている。政策の整備と金融市場の成熟に伴い、中国国内市場は取引のスマート化、機関投資家の増加、投資家のグローバル化、主観的投資からクオンツ投資への取引手法の変化などの流れがあり、クオンツトレードとアルゴリズムトレードには大いに成長の可能性がある。卡方科技は機関投資家にアルゴリズムトレードを提供し、インパクトコストを効果的に低減し、取引の実行効率を向上させる。卡方科技の専門的能力、展望、バックグラウンドなどが、現在の歴史的な成長機会に合致しており、大きな成果を得られると考えている」と述べた。

華蓋資本TMTファンドのパートナー、王宝華氏は「クオンツトレードは中国のアセットマネジメント業界で最も成長の著しい分野の1つであり、華蓋資本が長期的な関心を持っている領域だ。卡方科技はAIを利用してアルゴリズムを絶えず最適化し、トレードに対する顧客ニーズを満たし、同時に海外の先進的な市場に比べて遅れている我が国の資本市場のトレード技術を変えていくだろう」と述べた。

義柏資本の創業パートナー、侯杰超氏は「義柏資本はテクノロジーが各業界に与える変化に対し長期的に興味を持っている。フィンテック分野ではアセットマネジメントとクオンツトレードの発展を注視している。卡方科技は製品と技術への追求、顧客からの評価の高さ、チームの優秀さで群を抜いている。卡方科技が中国のアセットマネジメント業界の成長を推進する重要な力になることを期待している」と述べた。(翻訳・普洱)


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