高分子新素材で3Dプリントの可能性を切り拓く中国、靴インソールの日産は1万足へ

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3Dプリントに使われる高分子新素材の研究開発を手掛ける「蘇州博理新材料科技(Polly Polymer)」(以下、博理新材料)がシリーズAで約1億元(約16億円)を調達した。リード・インベスターは「金沙江連合資本(GSR United Capital)」「国投創合連合(SDIC Unity Capital )」、コ・インベスターは「中鑫創新(Zhongxin Innovation Capital Management)」「科慧創投(Tech-Inteligence Venture Capital)」。創業者の王文斌氏によると、同社は3Dプリントを活用した端末部品や製品の量産化のためのパイロットテストをすでに完了しているとのこと。今回調達した資金は、3Dプリントによって1日あたり1万足の靴のインソールを生産可能なデジタル化スマート工場の建設に充てられるほか、自動車、家電、医療、消費の分野向けのスマートクラウド設計・生産プラットフォームの建設に充てられる。

中国国内の3Dプリント市場は急速に発展している。投資情報を提供する「中信証券(CITIC Securities)」によると、2015-20年の間に中国の3Dプリント市場は4.5倍近くに急激に成長し、グローバル市場に占める割合は15%から22%に増加した。今後5年間に世界最大の製造業基地および消費大国として、35%を超える年平均成長率(CAGR)で成長し、世界の3Dプリント市場の成長をリードする存在になると予測される。

3Dプリント技術が注目される理由は、従来の製造方式に比べて金型の制限がなく、研究開発期間を短縮しコストを低減できるからだ。形状が複雑であったり、カスタムメイドが必要であったり、軽量化が求められたりする際に柔軟に対応でき、自動車、工業、航空宇宙、医療、建築、消費などの分野で多くのニーズがある。

2017年2月に設立された博理新材料は、製造企業が3Dプリントをプロトタイプ設計だけに用いるのではなく、実際の量産に使用することを目標としている。同社が目を向ける業界はスポーツ用品、医療、消費電子、自動車、工業などだ。王氏は従来の3Dプリントが大規模に普及しないのは、その利用が初期市場に限られていること、研究開発面で制約があることが理由だと考えている。従来の3Dプリントは設備とソフトウエアをベースにしており、使える材料が限られているうえ、プリントされた製品は機械的な強度に乏しく製造の手間もかかる。

博理新材料が選択した技術路線は、3Dプリントの最も核心となる材料に着目し、材料の特性に基づいて適切な設備開発を行うことだ。同社はハード・ソフトウエアと材料科学を融合し、材料の成型機から出発し全く新しいHALS(Hindered Asynchronous Light Synthesis) 3Dプリント技術を開発した。

同社の技術は、これまでの3Dプリントの20~100倍の速度で、従来の金型を使用した製品と同等の製品を作ることができる。王氏によると自社開発した感光性樹脂によって、すでに中国国内でトップ3に入る材料サプライヤーとなったという。材料に合わせて開発されたハード・ソフトウエアは、効率の問題に関する従来の3Dプリントのボトルネックを突破した。今後は自社工場を通じて、大規模な量産を実現していく計画だ。すでに靴、電子部品、医療機械部品など多くの注文を受けているとのこと。

靴のインソールの完成品

博理新材料の材料、設備、ソフトウエア、工場はすべて自社開発によるもので、高価な輸入材料に取って代わることができた。博理新材料の高速3Dプリント技術は従来の製造工程における十数の工程を1つの3Dプリント工程に統合でき、設計から製品完成までの時間を大幅に短縮した。従来の3Dプリントに比べて製品コストも大幅に削減でき、量産への対応も可能で、優位性は明らかだ。

同社工場での靴のインソール生産は、2020年に30%の生産能力を達成し、2021年には日産1万足へ拡大する予定だ。すでに世界のトップブランドと提携を結び、中国のトップアスリート向けのスポーツシューズを生産している。2021年にはさらに5-8社の有名スポーツブランドと新たに提携する予定だ。また同社は様々な業種に対応するオンライン設計・生産システムを構築しており、製造業の効率化をサポートしていく。同社の売上高は数千万元(数億円)で、すでに黒字化を達成している。創業者の王氏は吉林大学高分子材料修士、工信部工業文化発展センター・増材製造(3Dプリント)研究院新材料研究所の所長であり、その他のコアメンバーも材料、機械、工学などの専門家だ。

博理新材料の3Dプリントスマート工場

金沙江連合資本のパートナー、周奇氏は次のように述べている。「3DプリントはAdditive Manufacturing(付加製造)を理念とする技術であり、第3次産業革命の重要な指標とも言われている。しかし3Dプリントが発明されてから30年あまり経つが、品質、精度、速度、コストがアンバランスなため、長期に渡って『評判倒れ』の状態が続いてきた。博理新材料の3Dプリント技術は、そのような問題に対して最適なバランス点を見出し、各産業や消費分野での実用化を実現した」

(翻訳・普洱)

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