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車載用ARディスプレーとソリューションを手がける「鋭思華創(Raythink)」がプレシリーズAで「東方富海(Oriental Fortune Capital)」から数千万元(数億円)を調達したことが分かった。
2019年に創業した鋭思華創は、車載用運転支援監視システムやディスプレーのトータルソリューションを提供する企業だ。昨年にリリースした広視野角の車載用AR(拡張現実)HUD(ヘッドアップ・ディスプレー)はARナビゲーションや前方衝突警報、歩行者衝突警報、車線逸脱警告などの機能を備えている。
同社が完成車メーカー向けに開発した再利用性の高いソフトウエアシステム「AR Generator」は、高速画像認識機能により独立したアルゴリズムを継続的に組み込んでドライバーの安全な運転をサポートできるようになっている。また同システムを基盤として、スマートモビリティーやスマート製造業などの分野で活用できるヒューマン・マシン・インタラクションのソリューションや裸眼AR製品も提供している。すでに自動車メーカーと数億円規模の技術開発提携プロジェクトを締結しており、水平視野角40度以上の車載用ARディスプレーの完成を目指している。来年4月に公式リリースする予定。
鋭思華創CTOのKannan RN博士は同社のアドバンテージとして以下の3つを挙げた。
まず量産型の広視野角製品を実現したこと。同社は独自の光学設計を応用してFOV(視野角)20°~23°、VID(虚像距離)15メートル以上の量産型HUD機器を開発した業界初の企業となった。
次に、独自開発のAR画像生成ユニットや結像ユニットを基盤として、パートナー企業とレーザースキャン方式のイメージングモジュール「OpticalCore」を開発したこと。独自開発の技術によりレーザーのスペックルノイズを解消したほか、TFT液晶やDLPプロジェクターに比べてコンパクトな本体と広い視野角を実現した。
そしてエンド・ツー・エンドのソリューションを提供していること。マップやサービスデータとフレキシブルに接続できるSDK(ソフトウエア開発キット)を提供しているほか、GPSやカメラ、センサー、ミリ波レーダー、LiDARなどのパーツを集約したインターフェースを用意しているため、メーカーはナビゲーションやアラート機能など、必要な機能を自動車システムに統合するだけで実装することができる。
Kannan RN博士によれば、立体画像を生成するARでは、異なる視点から見た物体の位置や形状に相違が生じるため、実際の風景に自然に溶け込むよういかに修正するかが技術的なポイントになるという。また明るさやコントラスト、シャープネスなどさまざまな指標を考慮する必要もあり、プラットフォームには高いアルゴリズム演算能力が求められる。これまで多用されてきたTFT液晶やDLP方式では、視野角を拡大すると明るさや明瞭度が低下したり、ゆがみが出たりするほか、消費電力や放熱などの問題を抱えていたが、鋭思華創のソリューションは独自技術を駆使してより見やすいAR表示を実現した。
AR-HUDの普及が進まない原因の一つにコストの高さがある。今後、スマートモビリティーの標準装備として普及を目指す上で、低コスト化は避けられない課題だ。鋭思華創ではシステム最上層の複雑度を低減し、パーツの製造難度を下げ、システムの運用効率を向上するなどコストパフォーマンスの高いトータルソリューションを提供している。加えてシステムの統合性を高めてソリューションを導入する際のコストを抑えたり、中国や台湾、インドに技術チームを置くグローバル展開により、仕入れや開発のコストを圧縮したりしている。
将来的にクルマはプラットフォームとしての役割を担うようになると考える鋭思華創は、今後AR-HUDを中心とした車載サービスプラットフォームを構築し、PaaS型サービスの提供を目指しており、現段階ではAR表示のクオリティーをさらに高めることと低コスト化に重点を置いて開発を進めるという。(翻訳・畠中裕子)
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