中国のBMI技術が実用化、記憶増強製品やメンタルヘルスへ応用 プラットフォームも無料公開

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ニューラルネットワークアルゴリズムをベースとしたブレイン・マシン・インタフェース(BMI)研究でトップクラスのスタートアップ企業「脳陸科技(Naolu Technology)」は最近、約1億元(約15億円)の資金調達を完了した。出資者は「済南生技医療産業発展母基金」および複数の機関投資家。

活況のBMI市場 中国独自の基盤技術でブレイクスルー

海を挟んだ米国シリコンバレーの「鉄人」ことイーロン・マスク氏は去年、自身の傘下にあるBMI企業「Neuralink」の発表会で、3頭の子豚を用いて最新型BMI製品のデモンストレーションを行った。1枚のコインほどの大きさで大脳に埋め込めるチップと、自動埋め込みが可能な手術デバイスにより、「思考による制御」への可能性を切り開いてみせた。

脳陸科技は中国国内では少数派の「困難な領域に果敢に挑戦する」企業だ。「国内にも人類の未来に立脚した事業を手掛ける企業がある」と述べる同社は、一般的なテック企業が一つの製品または研究課題を対象としているのと対照的に、ハードルの高い基盤技術に取り組んできた。過去18カ月の間に、サプライチェーンにおける基盤技術をベースに神経科学研究と融合させ、BMI製品の応用に関する研究開発過程を再構築・再定義し、関連する電極材料、センシング回路、信号変換とコンピューター回路、信号アルゴリズム、識別モデルを開発したほか、超大規模の脳波生体信号データセットを構築してきた。

同社は体系化された画期的な成果をすでに得ており、清華大学との各種共同研究、複数の三甲医院(中国の医療機関等級で最高クラスの病院)との提携を通じ、自主開発したブレインデータコンピューティングプラットフォームの構築に成功している。このプラットフォームでは、清華大学人工知能研究院の院長を務める張鈸院士が首席技術専門家を担当し、使用プロセスにおいてはマンマシンインターフェース研究で国際的に著名な清華大学の史元春教授および劉永進教授から重要視され、普及が進められてきた。

特筆すべき点は、脳陸科技が張鈸院士の指導のもとで研究開発を主導したブレインデータコンピューティングプラットフォームが、川下企業にも無料公開されている点だ。これまで中国国内の脳波研究は過度に輸入に依存しており、川上の技術分野も輸入製品に独占されてきた。ハードウエアに関しては米「テキサス・インスツルメンツ」が、またソフトウエアに関しても米「OpenBCI」が世界の大部分の市場シェアを独占している。こうした国際情勢の変化を受け、中国国内の脳波研究は輸入製品への依存を脱却せざるをえない状況となり、国産品による代替が急務となっていた。

このため脳陸科技が開発した脳データのコンピューティングプラットフォームは、社会的価値がきわめて高いオープンプラットフォームとなっている。プロジェクトの研究開発において、同社は市場化された企業として短期的な黒字化を求めず、大量の人材と資本を投入し、技術的突破とプラットフォームの構築に成功した。同プラットフォームは国内の脳波分野における安定性と安全性を保障し、産業全体の発展をリードする存在となっている。

同社は今後の成長において、国内の複数の集積回路およびチップ関連会社との高度な提携を続け、核となるブレインチップの自社開発から自社生産までの実現を推進し、重要ハードウエアの研究開発と生産能力を構築していく。これと同時に複数地域の政府産業に協力して「脳科学・BMI研究パーク」の建設を推進し、中国が国際的にも一流の競争力を保持できるよう導いていく。

脳陸科技は今年の「全球青年創新大会(Global Youth Innovation Conference)」において「2020年度十大創新力企業(最もイノベーション力に富む十大企業)」を受賞しており、同社を含め、「DJI(大疆創新)」「曠視科技(Megvii Technology)」「第四範式(4Paradigm)」「声智科技(SoundAI)」など10社のテック企業が選ばれている。

商業化に関しては全方位での導入を模索、来年に黒字化の見込み

BMI業界に属する企業にとっては、いかに技術を商業化し導入するかが共通の課題となっている。脳陸科技が商業化を実現した製品は以下だ。

まずは個人消費者向け睡眠関連製品。昨年11月に第2世代の製品を販売し、淘宝(タオバオ)ではカテゴリー別の当月売上高でトップとなった。

次に記憶増強製品。首都医科大学宣武医院、清華大学および浙江大学と提携し、臨床実験段階まで進んでいる。革新的医療機器の認証申請を予定しており、アルツハイマー、認知障害を抱える患者および記憶機能の改善が必要な青少年グループ向けに利用される模様だ。
企業向け製品では、警備および生産現場の安全管理に活用され、作業員の精神状態をリアルタイムでモニタリングするヘルメットを開発した。顧客には緊急管理、電力、鉄道、石炭関連の大型中央企業が含まれる。

さらにBMI技術を利用したメンタルヘルス関連のスクリーニング検査や測定サービス。携帯式乾式電極により、病院内で用いられる湿式電極と同等の精度を実現した。主要顧客には社区(中国独自の地域コミュニティ、行政単位)の病院、健診センターで、一部製品では医療機器証を取得済みだ。

また、エンターテインメント産業と提携し、脳波で操作するAR/VR、エンハンストビジョンを利用したインタラクションをリリースしている。

巨大な市場ポテンシャル 各社が相次いで参入

BMI業界を概観してみると、複数のテックジャイアントがすでに産業への導入を実施し、基盤技術の開発に力を入れている状況だ。2014年以降、バイドゥや「科大訊飛(iFLYTEK)」といった企業が各自のAIブレイン計画を発表している。さらにグーグル、Facebook、イーロン・マスク氏も相次いで事業を開始。米市場調査会社アライドマーケットリサーチのデータによれば、純粋なBMIデバイスのみの市場規模は、2020年に14億6000万ドル(約1500億円)に達するという。さらにBMIが影響を与える応用分野についてみると、医療、教育、消費いずれにおいても十数億ドル(約1000億円)をはるかに上回る莫大な市場ポテンシャルがあるとされている。

脳陸科技の消費者向け睡眠製品(写真左・中)および同社のパートナー写真(写真右)

「BMIは単なる世界的な事業ではない。宇宙に向けた、人類のより良い生存と発展を模索するうえでの扉なのだ」と同社の関係者は話している。

(翻訳・神部明果)


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