がん検査の「諾輝健康」が香港上場 時価総額約4200億円の実力とは

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がんの早期スクリーニング検査を手がける「諾輝健康(New Horizon Health)」が2月18日、中国の同業他社に先駆けて香港株式市場に上場した。銘柄コードは06606.HK。

株価は取引開始後、公募価格の26.66香港ドル(約370円)から76香港ドル(約1000円)へと大幅に値を上げた。時価総額は300億香港ドル(約4200億円)となり、先に米ナスダックに上場した同業の「燃石医学(Burning Rock)」と「泛生子(Genetron Health)」を超えた。

香港株式市場では医療・健康関連企業への注目が非常に高い。同株式市場では唯一のがんの早期スクリーニング検査に関する銘柄として、諾輝健康が投資家の関心を集めたのも不思議ではない。とはいえ、諾輝健康が赤字を続けているのも事実だ。にもかかわらず、これほど高く評価されたのには理由があるはずだ。

「BtoCモデル」と「NMPA初承認」を強みに

諾輝健康は2015年に設立され、自宅でできるがんの早期スクリーニング検査を主に手がけてきた。自社開発した大腸がん検査キットの「常衛清」と「噗噗管」は、それぞれリスクの程度が異なる人々をターゲットとしており、いずれも中国国家薬品管理監督局(NMPA)の承認を受けて発売されている。また、胃がんと子宮頸がんの検査キットも同局に申請中で、後期開発段階にある。これらの製品は、中国で発症率が高いとされるがんについて、便または尿の検査で早期発見・早期診断することを主眼としている。

上記2種類の直腸がん検査キットを利用すれば、自宅で採取した便のサンプルを医療機関に直接提出することができるため、医療機関に出向いて検査を受ける必要がなくなる。典型的なBtoCモデルだ。一方、市場に出回る診断ソリューションの多くは、BtoBモデルで医師または医療機関に提供されるため、流通チャネルは限られている。

中国全土に広がる「諾輝健康」の流通網

主力製品の「常衛清」は昨年11月、がんの早期スクリーニングに適用できる製品としては最初かつ唯一、 NMPAの承認を受けた。「噗噗管」も免疫学的便潜血検査(FIT)のセルフチェックキットとして、 NMPAが初めて承認している。対象者は大腸がんの検査を勧められた人々で、マス市場への展開が見込まれる。

こうした製品にとって最も重要になるのが、正確性や感度、陽性予測値などだ。「常衛清」は、米国のがん検出剤大手「イグザクト・サイエンシズ(Exact Sciences)」の大腸癌検査「コロガード(Cologuard)」を直接的なベンチマークとしているが、すでに発表されている前向き臨床試験の結果によると、複数の項目でコロガードが承認された当時の臨床試験結果を上回っている。この点から見れば、諾輝健康は世界的企業と肩を並べていると言えよう。

また、胃がんや子宮頸がんなどを対象とするその他の製品についても、後期候補に関する提携パイプラインを築いており、明らかな進展がみられる。

「諾輝健康」の製品マトリクス

がんの早期スクリーニング検査のリーディングカンパニーへ

がんの個別化治療の分野には多くの企業がひしめく一方で、がんの早期スクリーニング検査はブルーオーシャンとなっており、大きな可能性を秘めている。コンパニオン診断が中・後期のがん患者を対象とするのに対し、早期スクリーニング検査は大勢の「表面的には健康に見える人」または「潜在的に高いリスクを抱えている人」を対象としている。また、コンパニオン診断は検査回数が少ないのに対し、早期スクリーニング検査は一定の「リピート率」を見込めるため、その市場規模は数倍になるとみられる。

ハイスループットDNAシーケンシングや循環腫瘍細胞検査、DNAメチル化検査などの関連技術は発展を遂げ、コストも低下しているため、早期スクリーニング検査への応用も広がっている。

また、データの蓄積が進み、分析能力も向上したことから、がんの早期スクリーニング検査は次世代がん検査の突破口になると考えられている。これを受け、多くの企業がこの分野に進出している。

だが、諾輝健康は業界をリードする立場を譲らない。同社の主力製品、大腸がんの早期スクリーニング検査キット「常衛清」はNMPA初承認を強みに、市場シェア90%を占めている。
(翻訳・田村広子)

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