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「増収減益」が主旋律となっている2021年の中国インターネット業界では、アリババをはじめとしたITジャイアントたちがこのパワーワードから逃れられない流れとなっている。
生活関連サービスを網羅する「美団(Meituan)」も同様だ。先月28日に発表された第1四半期(1〜3月期)の財務諸表では、売上高が前年同期比120%増の370億元(約6300億円)と大躍進する一方で、調整後純損失(non-GAAP指標)も約39億元(約670億円)にまで膨れ上がった。
赤字続きのコミュニティ向け共同購入サービス事業(社区団購)に注力し続ける現状を黙認する市場に返礼するかのように、美団の今四半期の業績は見事な数字を並べてきた。主力のフードデリバリー事業のみならず、インストアおよびホテル事業でも大きく復調している。さらに今四半期はアクティブユーザーを約5900万人も増やしており、中国のプラットフォームが単一四半期で達成した数字としては最大の伸び幅となった。
アクティブユーザー数の伸びに不可欠だったのが、コミュニティ向け共同購入サービス事業だったという。同社の王興CEOは、新たに増えた5900万人のうち半分はコミュニティ向け共同購入サービス事業が貢献したもので、残りの半分は生鮮ECサービス「美団買菜(Meituan Grocery)」、即配サービス「美団閃購(Meituan Instashopping)」、シェアサイクルサービス「美団単車(Meituan Bike)」などの新規事業やフードデリバリー事業によるのものだという。
しかし決算発表後の市場の反応は薄く、発表当日から翌日にかけて美団の株価はいずれも約3%下げた。
とはいえ、美団の屋台骨を支えるフードデリバリー事業の市場シェアは伸び続けており、だからこそ自信を持ってコミュニティ向け共同購入サービス事業に投入を続けられるのだろう。
前篇:盤石な主力事業
芽を出した新規事業
80億元(約1400億円)の損失に損失率81.6%と、美団の今四半期の新規事業が出した数字は予想以上の不振にみえるが、コミュニティ向け共同購入サービスなどの新規事業が社全体に前向きな影響を与えはじめている。
とくにアクティブユーザーの増加においては単一四半期で5900万人増と顕著な結果を出した。美団は今四半期、販売・マーケティング費として前年同期比125%増の72億600万元(約1200億円)を支出しており、これらの数字を基に計算すると、美団の顧客獲得コストは1人あたり約122元(約2100円)となる。
なお、コミュニティ向け共同購入サービス事業「美団優選(Meituan Select)」の収益源は取引手数料となっている。複数のサプライヤーや調査機関に取材した結果、手数料率は約10%とみられるが、美団優選の1日の受注件数が今四半期は1800万〜2000万件であることから、受注単価が7元(約120円)前後と仮定すると、今四半期の流通取引総額(GMV)は120億元(約2000億円)となり、徴収できる取引手数料は12億元(約20億円)。これほどの売り上げがあっても、美団優選が上げられる収益は多くはない。
各社が掲げるコミュニティ向け共同購入サービス事業の今年のGMV目標値は、現時点では達成とはほど遠い。美団優選はGMV2000億元(約3兆4400億円)を謳っているが、受注単価の7元(約120円)が変わらないなら、1日7000万件を受注してはじめて目標達成が見えてくる。しかし関係者によると、現状は1日2500万件を維持するので精一杯だという。
王興CEOは美団優選の掲げる目標について、今後数年で3〜4億人の新規ユーザーを美団に取り込むことだとしている。今四半期に5900万人の新規ユーザーを獲得したことからみると、目標の実現はそう難しくないようにみえるが、割引キャンペーンに惹かれて入会したユーザーが長く定着するには、値引きの他にサプライチェーンや組織の管理能力も相当に重要だ。
今四半期、美団は売上高を大幅に伸ばしたが、あくまで「負けてもコロナのおかげ、勝ってもコロナのおかげ」であり、新規事業による損失は予想外に広がった。しかし長期的にみて、美団優選が市場の勝ち組となれば、美団は難攻不落の城を手に入れることになるだろう。
(翻訳・愛玉)
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