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バーチャルヒューマンやデジタル資産を運営する「上海燃麦網絡科技(Ranmai Technology)」がこのほど、プレシリーズAでSIG Asia Investmentsから数千万元(数億円)を調達した。調達した資金はデジタル資産のさらなる開発と運営、事業のグローバル展開に充てる。
2020年創業の燃麦科技はデジタル資産の運営と管理をメインにしており、AYAYIを始めとする複数のバーチャルヒューマンを世に送り出してきた。2021年5月20日に活動を開始したAYAYIは初の投稿が300万近くの閲覧数を獲得し、一晩のうちにフォロワーが4万人ほどに膨れ上がった。
燃麦科技によると、AYAYIは完成までに各方面との意見交換や取捨選択を繰り返し、半年余りの間に40回以上もバージョンアップを重ねたという。リリース後の6月中旬からバーチャルヒューマンを活用したビジネスの試みを始めたところ、予想を上回る反響があり、これまでに500ブランド以上とコンタクトを取り合った。
バーチャル技術市場は2021年以降、目立った成長を遂げてきた。産業調査機関「頭豹研究院(LeadLeo)」のデータによると、バーチャルヒューマンの市場規模は2022年に2000億元(約3兆6000億円)、2025年には約3000億元(約5兆4000億円)に拡大すると見られ、なかでも細かな人物設定を持つキャラクター型バーチャルヒューマンが今後の主力になるという。「Research And Markets」の研究によると、世界のバーチャル技術市場は2028年までに5047億6000万ドル(約57兆7300億円)に膨れ上がるという。
「バーチャルイメージの中でもバーチャルヒューマンは最も難易度が高い。ソフトウエアやハードウエアが進化したことで創造性は飛躍的に向上したが、それでも爆発的なヒットを飛ばすのは難しい」。燃麦科技の共同創業者・唐迤氏はこう語る。「技術面で世界の最先端トレンドに挑むのはもちろん重要だ。しかしクリエイティブチームがコンテンツ運用を理解し、ユーザーが共感できる美意識に変えられるかが大きく試されることになる。この非常に難しい問題に私たちは取り組み続けている」
技術そのものについて、燃麦科技はずっとオープンな態度をとってきた。米国、フランス、日本、中国など各国が持ち合わせている未来志向の技術やクリエイティブチームと連携し、アートとテクノロジーのより良い融合を追求してきたと唐氏は明かす。同社チームが得意とするのは市場判断やキャラクター設定、デジタルマーケティング、美的感覚だという。
AYAYIのデビューは、ちょうどメタバースがブームになり始めた時期と重なる。しかし燃麦科技はAYAYIを単なるイメージキャラクターではなく、時代と共鳴し合えるデジタルヒューマンとして打ち出したいと考えた。だからこそ多くのブランドがAYAYIのスタイルやトーンに引きつけられるのだ。
Boseやポルシェ、バーバリーなど世界トップブランドとのコラボ、「デジタル社員」としてアリババに入社することなど、まだ1歳にも満たないAYAYIにとっては全てがマイルストーンとなる。唐氏によると、同社のメイン事業はプラットフォーム型のデジタル資産運営を行うことであり、多くのデジタルコンテンツを資産化することでデジタル資産の価値をさらに高めていくという。そのデジタル資産の重要な部分がバーチャルヒューマンというわけだ。
デジタル資産の一種である「NFT(非代替性トークン)」の市場規模は2021年10月時点で少なくとも269億ドル(約3兆1000億円)に達していたと、ブロックチェーン分析企業「Chainalysis」が報告している。そしてこの数字は数年のうちに、指数関数的に増加していくことだろう。
バーチャルヒューマンの分野では、AYAYI以前にも世界で50人以上がすでに活動しており、Lil Miquela(リル・ミケーラ)、Shudu Gram(シュドゥ・グラム)、Imma(イマ)などのバーチャルインフルエンサーも少なくない。中国国内でもバーチャルヒューマンが次々と登場しているが、市場そのものはまだ創成期にある。今後、どのような競争や駆け引きが繰り広げられるのか目が離せない。
(翻訳・畠中裕子)
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