360度画像技術で船の安全運航 インテリジェント船舶「MARAUTEC」が資金調達 

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インテリジェント船舶ソリューションの「邁潤智能科技(上海)有限公司(MARAUTEC)」がシリーズA+で数千万元(数億円)を調達したことがわかった。リードインベスターは張江科投が務めた。以前にも同社は、エンジェルラウンドで自動運転用ICチップメーカー「黒芝麻智能科技(Black Sesame Technologies)」から、シリーズAで「招商啓航(China Merchants Startup Capital)」から資金を調達している。創業者の張兵華氏によると、今回の資金はプロダクトのブラッシュアップと無人運航船の技術開発に使用される。

邁潤智能は2018年設立、AI画像センシング技術を得意とし、船舶の可視化スマート運航ソリューションを提供する。インテリジェントシップ分野では、可視化停泊安全支援システム、運航安全支援システム、ブリッジコンソール視界拡張システム、異常目標監視、船陸間通信等のプロダクトを開発している。こうしたプロダクトで船舶の周囲360度の状況を認識、船員に対し警告を発することで、複雑な状況下や狭い航路での航行をサポートする。

自動車用の画像認識技術を船舶に応用するには、データ量、周波数帯域幅、通信コスト、海洋の環境という4つの問題をクリアする必要があった。張氏によると、海上における衝突予防のための規則では、大型船舶が注意する範囲は6海里(約11キロ)、船間距離は約11キロとされ、自動車と比べ即時に処理するデータ量は何万倍にもなる。一般的に海上での通信帯域幅は陸上の千分の一しかなく、海事通信衛星や低軌道衛星の費用は極めて高額だ。海上でのデータ伝送コストは数百倍にもなるため、クラウドによるソリューションも現実的ではない。さらに、電子機器は腐食しやすいため、高温や塩分の問題も解決しなくてはならないという。

また張氏は、こうした問題を解決するため、邁潤智能では2年にわたり試行錯誤し、2020年にようやくプロダクトを正式に発表したと明かした。同社のAI画像センシングソリューションは、エッジコンピューティングを採用、AI画像処理と画像センシング技術、マルチセンサーフュージョン技術、船陸間通信技術を運用している。同社の創業母体メンバーは船舶運航や画像センシング技術等の専門家で、数十年市場を開拓してきたという。同社では技術者が70%を占め、船舶態勢のセンシングやデータフュージョン、自動運転支援、自動運転などの分野で、ソフトウェア著作権や発明特許の申請が20件を超えている。

張氏は同社について、中国の船舶分野におけるAI画像センシングソリューション企業の中でも、技術面や応用シーン、先にスタートを切ったという強みがあると語る。現在、同社のプロダクト「邁潤航海慧眼」はコンテナ船、多目的船、タンカー、バラ積み船、特殊船、客船、河船など、様々な種類の船で実用化されている。例えば、海運大手「中国遠洋海運(COSCO)」のグループ企業である中遠海運特殊運輸の所有する6.2万トンの多目的パルプ船「中遠海運遠景号」や中遠海運能源運輸所有のLPG特殊船、上海浦江遊覧集団の所有する遊覧船「申城之光号」、上海外高橋造船の工業情報化部モデルプロジェクトによる21万トンばら積み船、国能遠海航運のばら積み船に対し、パノラマ画像センシング機能搭載などの改造を手掛けた。

商業モデルという面では、邁潤智能はインテリジェントシップのソリューションプロバイダとして、船会社の運営と安全のニーズに対応し、船のタイプに応じたセンサーやAIチップ、ソフトウェア搭載に対応する。船用電子海図、AIS(自動船舶識別装置)、航海用レーダー、GPS等、従来の船舶向け設備のデータをAIチップにつなぎ、アルゴリズム処理によって、航行や停泊から船陸間通信までの全プロセスの可視化を実現した。また「邁潤航海慧眼」は海事監視にも用いることができる。リアルタイムでの可視化、スマート化された監視手段により海事監視の自動化を実現し、海上の法執行の効率向上とコスト削減を実現した。

海事監視での利用

世界中で毎年4000件余りの海難事故が発生している。そのうち75%は人為的要因によるものだ。新型コロナの流行で船員の定期的な交替がこれまで以上に難しくなり、航行のスマート化が急務となっている。将来的に邁潤智能は、視覚センシング技術とアルゴリズムを使って無人運航船や自動運航船の分野にも取り組むとしている。張氏は、内陸河川、沿海、遠洋といった異なる状況のデータを蓄積して深層学習を重ね、船舶運航支援の認識率を向上させ、応用シーンを広げていくことができると見ている。

世界市場の開拓については、日本の伊藤忠商事とともに欧州市場のネットワークを構築しつつある。中国市場でプロダクトをさらにブラッシュアップし、コロナ禍収束後スムーズに海外市場に進出したいと考えている。

(翻訳・36Kr Japan編集部)

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