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自身で検体を採取する「在宅検査」の製品とサービスを提供する「壹生検康(Testing OneLife)」は昨年末、エンジェルラウンドで3200万元(約6億2000万円)を調達した。出資は創世伙伴資本(CCV)が主導し、樹蘭医療(Shulan Health)も参加。調達資金は製品登録申請とマーケティングに充てられる。
同社は昨年8月、アリババグループが提供するビジネス向けコラボレーションプラットフォーム「Ding Talk(釘釘)」の副総裁だった王強宇氏が設立。同氏はショート動画アプリやSNSアプリの立ち上げにも関わったことがある生粋の「ネット業界人」だ。同氏によると、モバイルインターネットは過去10年間に技術の進歩と需要の変化によって急速に発展したが、ヘルスケア分野への応用が遅れている。また、AI技術、分子生物学、検査技術の向上に伴って医療サービスが大病院や地域の病院、薬局から自宅へと移行しつつあるため、ネットと検査が結びついたヘルスケア分野には大きな成長が見込まれるという。
コロナ禍は健康管理に対する人々の意識を高めた。新型コロナウイルスの感染症対策において抗原検査が正確さ、安全性、プライバシー保護の特性を発揮したことは、大きな可能性を秘める在宅検査の市場を育てた。中国が進める医療保険制度改革も、予防医療に重点を置く在宅検査の普及を後押しする見通しだ。
欧米の先進的な地域では、在宅検査は新しいアイデアではない。在宅検査キットの「Everlywell」や不妊検査キットの「Modern Fertility」などが複数回にわたり資金を調達し、優れた販売実績を残していることは、業界の見通しが明るいことを示している。
壹生検康は女性のヘルスケア分野に内分泌検査サービスをもって参入した。自社の研究所をベースに、6種類のホルモン(卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン、エストラジオール、プロゲステロン、テストステロン、プロラクチン)と抗ミュラー管ホルモン(AMH)の検査や、卵巣の機能、女性の生殖能力、更年期の健康状態などの総合的な評価、結果分析と適切な介入サービスを提供する。
女性をターゲットに選んだ理由について王氏は「男性に比べ、女性は健康に対して強い関心を抱いている上、女性の決断は家庭の消費を左右することが多い」と話す。女性のヘルスケア分野ではヒトパピローマウイルス(HPV)、子宮頸がん、乳がんを対象としたサービスが多い中、理解と関心の少なさから卵巣や内分泌関連のサービスが不足しており、同社はそこで確かな地位を確立したいと考えている。
同社は科学者、医学博士、ネット業界出身者という3種類の経歴を持つ社員で構成され、医療分野で重視されてきた結果だけでなく、ユーザー体験も大切にしている。
一般的な在宅検査機器は唾液や便を採取して検体とするが、検査に使える指標が少ない上に質の高い検体が必要なため、検体の採取が簡単ではない場合が多い。また、血液は情報量が豊富で検査に使える指標も多いが、ユーザーが静脈血を採取するのは難しい。血糖値検査のように毛細管血を迅速かつ簡単に採取するだけならユーザー体験が向上し、在宅検査は大きく普及する可能性がある。
そこで同社は毛細管血の採取キットを開発し、静脈血採取や検体採取の煩雑さを解消。手軽な毛細管血の採取を採用することでユーザー体験を向上させ、常温で長時間輸送される検体の安全性と信頼性を確保することに成功した。王氏によると、製品には指先採血技術、血液検体検査技術、検体希釈・増幅技術、ハイスループット検査技術といった同社のコア技術が生かされている。
同社は今後、SaaSシステムへの接続やデジタル療法製品の開発などを通じて、オンラインをベースに市場を開拓していく。
王氏は医療・ヘルスケア分野のユーザー獲得には特殊な点があると考えている。医療業界の規制、医学知識の敷居の高さ、ユーザー教育のコストを踏まえ、まずは科学知識の普及を通じて若年層を取り込みながら、マーケティングを展開する方針だ。同社はすでに新たな資金調達の準備も始めたという。
(翻訳・大谷晶洋)
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