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中国では従来、新築物件は内装のない状態で買主に引き渡され、買主が別途外注するなどして内装を行うのが一般的だったが、2014年に政府が内装済み住宅の販売を奨励する政策を発表した。その後大都市を中心に関連条例が施行され、2020年までには全国に広がると予想されている。このため、マンションなどの内装工事は大手に一括で発注されるようになり、中小内装工事業者にとってマンション内装を受注できるかどうかが死活問題になっている。
中小企業が規模を拡大できない最大の理由は施工業務にある。施工は設計などに比べ人力に頼る部分が大きいが、企業と従業員との間で安定した雇用関係を築きづらいからだ。その主な理由は、
1)受注が不定期で、需要が安定しない。繁忙期は人手不足になりやすく、閑散期は人材を留めておけない。
2)作業員の管理が難しい。作業員の平均年齢は40~50歳で低学歴層が多く、規範意識が薄いうえ、各現場に出向いての作業となるためだ。
内装業は、元請けが下請けに作業を割り振ることが多い。孫請け、ひ孫請けと何層にも業者がはさまり、中間マージンがかさむが、人手の確保という問題は解決されない。業者、現場監督、作業員それぞれの利益が保証されておらず、内装の品質を保証することも難しい。
こうした現状に対し、オンライン内装業大手「愛空間(ikongjian.com)」は、自社の管理システムで5000人の内装作業員を抱える。2014年の設立から4年で全国16都市に事業を拡大し、2018年の売上高は10億元(約16億6000万円)に上った。愛空間では、現場作業員を「情報化産業労働者」と位置づけ、従来の臨時工的な立場と差別化している。
内装企業が作業員と雇用関係を維持するのは難しいが、なぜ愛空間は「産業労働者」を自社雇用できるのか? 愛空間は変動する需給と管理という難しいバランスをどうやって取っているのか?彼らはなぜ産業労働者システムを立ち上げたのか?また、同社の事業モデルは業界内にどのような変化をもたらすだろうか?
自社で多くの「産業労働者」を雇用できる理由
愛空間の創業者、陳煒氏によると同社は創業以来、ブランド戦略と口コミによって順調に受注を増やしているという。2018年には合計1万件を受注した。
作業員の賃金については当初、固定給制を採用していた。つまり、就業量にかかわらず一定の給与を支払っていたが、閑散期で業務が発生しない場合も給与が受け取れるシステムは、作業員にとってかえって心理的負担が大きく、離職者も相次いだ。最終的には現在の出来高制に落ち着いている。
管理システムのIT化によって、業務は職長やプロジェクトマネージャー単位ではなく、作業員ごとに細かく管理できるようになった。また、作業員全員に専門研修の受講や認証試験の合格を義務付け、彼らのモチベーションを高める信用評価システムや賞罰制度も整えた。
需要の変動と作業員管理の両立
愛空間は業務の標準化と情報管理を徹底し、まず作業内容の明確な区分けを行った。全作業工程を16分割し、作業種別も16種に分けて、施工フローの円滑化を図っている。
次に、全作業員に2カ月の研修を義務付け、施工技術や情報技術、安全管理などを習得させる。最終試験の合格者にはIDナンバーが付与され、同社のプラットフォーム上で受注が可能になる。
需要の波に対しては、データ分析に加えて、信用スコアの高い作業員を優先的に派遣する制度で対処している。自社システム「魔盒」で施工時期、施工場所、作業種別、作業員の信用スコアなどのデータを管理し、各受注案件の担当者を振り分けていく。
5つ星に格付けされた作業員には、ほぼ間断なく受注が入るという。現在、4~5つ星に格付けされた作業員は全体の4割超だが、陳煒氏はこれを7割に引き上げるのが目標だという。
作業員に安心して就業してもらうために、48時間以上前に案件の受注を確定し、作業員のスケジュールを割り振るシステムや、隔週あるいは月ごとに直接作業員に工賃を支払う制度を採用している。また、作業員のモチベーションを上げることも重要だ。作業の質が高い作業員には格付けを上げ、より多くの仕事を割り振り、収入の向上につなげる。昇進制度も一般作業員から幹部クラスまでのキャリアパスを明示し、「産業労働者」としての職業的アイデンティティを確立させていく。
現在、登録作業員の平均年収は10万元(約166万円)を突破し、業界水準を20%以上も超えている。
「産業労働者」システムのメリット
内装業はサービス業であり、サービスを充実するには3つのインフラが不可欠だと陳煒氏は考えている。そのインフラとは、
1)サプライチェーンを基礎に標準化された製品
2)産業チェーン全体を貫く情報化システムによる制御可能かつ透明化された情報クローズドループ
3)人材を基礎とするサービスチェーン
こうした「産業労働者」システムを構築することで、以下のようなメリットが生まれる。
1)受注件数がどんなに増加しても一定の品質を保ち続けられる
2)マネージャーやリーダークラスの人材を省き、人件費を削減するとともに、現場作業員の賃金に還元できる
3)人材をプラットフォームの一構成要素と位置づけ、継続的な改善を実行し、かつトップの意思が末端まで浸透する組織を維持できる。
同社が構築した「産業労働者」グループは、将来的に対外開放される可能性もある。愛空間は登録作業員の質を高め、彼らの収入やモチベーションを高めることに努めているが、それでも人材が流動的になることは避けられない。ただ、こうした取り組みがやがて業界全体に波及して、将来的には内装業界の就業環境が改善されていくだろう。
(翻訳・愛玉)
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