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QRコードによるモバイル決済の誕生は、特に中国では財布を持たなくても外出ができるようになるなど人々の行動に大きな変化をもたらし、日常生活に欠かせないツールとなった。
そのテクノロジーを展開する企業が今、日本の自販機市場の開拓に注力している。日本で馴染みのある自販機がモバイル決済を取り入れることにより、新たな可能性を見出している。
そこで、7月22日の日経*36Kr Japanのセミナーでは、「中国QRコード決済の父」と呼ばれている、インスパイリー(Inspiry=意鋭)創業者・CEO、インスパイリー・ジャパン代表取締役の王越氏、中国最大級のデジタル決済サービス「アリペイ(Alipay)」を運営するアントグループの日本法人、アリペイジャパン カントリーマネージャーの蒋微筱氏といった専門家を招き、「自販機ビジネス革命~モバイル決済で進化する無人販売」と題したセミナーを開催した。
自販機×コード決済を、日本のニューリテールの突破口に
インスパイリー・ジャパンの王越社長は、長年に渡り二次元コードの分野で研究・開発を続けてきた。さまざまな業界でQRコードの応用を試みた中で、決済との相性が一番良い、という結論にたどり着いたと話す。これは中国に限ったことではなく、例えばインドでは既に同社の決済端末が300万台以上普及され、現地メディアでモディ首相にも紹介されるなど、世界中で大きな実績が出ているという。
そして、現在はデジタル化に舵を切る日本市場にも注目し、特に日本の自動販売機文化にコード決済が最適だと考えるに至った。歴史を紐解いてみると日本人の食習慣の変化や、コンビニの台頭、自販機管理コストの増加など、現代は自販機ビジネスには厳しい時代にも思えるが、逆に業界変革のターニングポイントでもある。インスパイリーがテーマに掲げるのは、「自販機に目を付ける」ことで実現する自販機DXだ。
具体的なポイントとして挙げられたのは、「キャッシュレス決済」「オンライン化」「データの活用」により、顧客や飲料メーカー、運営事業者それぞれに大きなメリットを提示することだ。
キャッシュレス決済にすることで、顧客に対して利便性や娯楽性など新たなサービスを提供できる。オンライン化により、飲料メーカーやオペレーターは、自販機のリアルタイムの売上や稼働状況を把握することができる。データ活用では、これまでの運営担当者の勘と経験頼りからの転換、今後考えられる施策として、リモートで売価を変更させて有効なサービスタイムを運営したり、気温が35度を超えた日はスポーツドリンクを安く売るといった、外部データとの連動による効果的な施策の実行ができるようになるだろう。
インスパイリーの独自技術により、低コストで既存の自販機に導入し利便性を追求するだけでなく、ゲームやクーポンといった多様な販売促進キャンペーンを可能にするメリットなどコード決済が持つ多くの武器で、将来の自販機ビジネスで大きな商機を掴もうとしている。
アリペイプラスと拓くビジネスチャンス〜 QRコード決済でアジアの消費を日本へ
インバウンドの施策として、百貨店、大手家電ショップ、ドラッグストアなど、日本で多くの店舗に導入されているデジタル決済サービス「アリペイ」。アントグループが提供する世界最大規模のオンライン決済サービスで、中国人観光客が旅先での決済や、中国の越境ECサイトを利用する海外ユーザーの決済を可能にした。
ただ、店舗によって取り扱うモバイル決済サービスが異なるため、課題も多かった。アリペイは、そうした問題を解決するために、「Alipay+(アリペイプラス)」の展開を始めた。
アジアで利用されている各種QR決済サービスをカバーするため、スマホ一台で世界中で支払いができるようになる。
Alipay+は現在、中国「Alipay(アリペイ)」に加え、香港「Alipay(アリペイ)HK」、韓国「Kakaopay(カカオペイ)」、シンガポール「EZ-link(イージーリンク)」、マレーシア「Touch’n Go(タッチンゴー)」、インドネシア「DANA(ダナ)」の決済サービスに対応している。今後もアジア圏のQR決済の種類を順次増やしていくとアントグループアリペイジャパン・カントリーマネージャーの蒋微筱氏は語った。
コロナ禍においても、日本の来たるインバウンド再開に備えて、同サービスが使えるように店舗数を増やすことに注力しており、既に導入した加盟店は数十万にのぼる。
また、単に旅中での決済サービスにとどまることなく、旅前から消費を促すクーポン発行や期間限定のプロモーションキャンペーンなど消費に繋がるさまざまなサービスを提供している。
複数のモバイル決済サービスを導入しなくても、Alipay+だけでアジア全域の訪日観光客に利便性の高い決済サービスを提供できる上、集客や売上への貢献が期待される。
自販機ビジネス活性化、デジタルと二人三脚で
実際にインスパイリーのQRコード決済端末「PPS7700」を自販機に取り入れた実例として、西日本をメインに自販機事業を展開している金井自動販売 事業推進部部長の相良孝広氏が実体験を紹介した。
実はキャッシュレス自販機はまだまだ普及の初期段階にあり、そこには業界全体で普及を阻む大きな課題があるという。その課題とは「不便性」と「高コスト」と言われている。特に不便性の面では、初めて従来の自販機でキャッシュレス決済を使うときにスムーズに購入を進めることが難しい点が挙げられる。利用するマネータイプの選択など何度かボタンを押すことでようやく決済完了までたどり着く。
そこで出たのがインスパイリーのPPS7700で、これまでの課題を取り払ってくれるのではないかと相良氏は大きな期待を寄せているのだという。相良氏が初めて同製品を利用したときに、これまでの端末と違い、スマートフォンを一度ピッとかざすだけで完了する圧倒的な利便性には感動を覚えたということだ。さらにこの利便性に加えて、導入側の低コストと集客性(面白さ)も持ち合わせている。同製品を導入したある自販機の実績を見てみると、売上が前年比145%を達成していて驚いたという。
相良氏は「今後、間違いなく加速度的にキャッシュレス化が進み、数年後にはほとんどの自販機がキャッシュレス化されている。その時になってからキャッシュレスを導入してもあまり意味がない」とした上で、「真剣にキャッシュレス化を導入」することを強く提言した。そして自社だけでなく、自販機業界全体で推進することが必要であり、同業他社に対しては質問があれば事例やデータ含めオープンにしていくと述べた。
(36Kr Japan 編集部)
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