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中国政府は2030年までに二酸化炭素(CO2)排出をピークアウトさせ、60年までにカーボンニュートラルを実現する「ダブルカーボン目標」を推し進めている。それに伴い、IT業界でもCO2排出に大きな関心が集まっている。
国際環境NGOグリーンピースと中国環境保護連合会は7月12日、中国IT大手のCO2排出削減策についてのリポート「緑色雲端2022」を発表した。このリポートは公表されている情報を元に、情報開示と環境ガバナンス、カーボンニュートラル目標と行動、再生可能エネルギー目標と行動、影響力という4つの側面から企業を評価し、中国のクラウドサービスやデータセンターの大手企業24社のカーボンニュートラルに向けた取り組みをランキング形式で紹介したものだ。
リポートによると、2030年までに再生可能エネルギーの比率を100%にするという目標に向けて多くの企業に進展が見られ、グリーン電力(風力、太陽光、バイオマスなどCO2を出さない自然エネルギーで発電された電力)消費量が大幅に増加した。ただ、業界全体で見るとグリーン電力の比率は依然として低く、サプライチェーン全体での取り組みも遅れている。
リポートではクラウドサービス企業とデータセンター企業を分けてランキングしている。クラウドサービス企業でトップに立ったのはテンセント(騰訊)だ。情報開示やカーボンニュートラル目標、グリーン電力取引量の多さなどが評価された。
クラウドサービス企業のランキングでは順位間の差が大きかった。アリババが2位、バイドゥ(百度)が3位を獲得、大ヒットアプリTikTokを運営するバイトダンス(字節跳動)は7位に沈み、先頭集団から大きく後れを取った。バイトダンスの評価が低い理由としては、カーボンニュートラルや再生可能エネルギーの分野で実質的な目標を公表しておらず、環境に関する主要な情報も公開していないことが挙げられている。
データセンター企業の中では、昨年6位だった万国数拠(GDS)が首位を奪った。グリーン電力や情報開示の分野における積極的な取り組みが評価された。その後ろを秦淮数拠(Chindata)、世紀互聯(VNET)が追う。
ダブルカーボン目標が発表された2020年以降、多くのIT企業がCO2排出量リポートや行動指針を公表するなど、実際にアクションを起こしてきた。現時点で、ランキング中の8社が2030年までにスコープ1と2のカーボンニュートラルを達成できると表明している。(編集部注:スコープとは温室効果ガスの排出量区分で、スコープ1=企業による直接排出、スコープ2=外部から供給された電気などの使用に伴う排出、スコープ3=自社以外のサプライチェーンにおける間接排出と定義されている)
さらにテンセントや万国数拠、秦淮数拠、世紀互聯などの6社が30年までに再生可能エネルギー100%の達成が可能だとしている。1年半前にこの目標達成を掲げた企業はわずか1社だった。アリババ、テンセント、秦淮数拠などはグリーン電力調達の面でも進展が見られており、テンセントとアリババが市場取引を通じて消費したグリーン電力はそれぞれ5億6700万kWh、5億3300万kWhに上った。
とはいえリポートでは、IT業界が再生可能エネルギー100%を達成するまでにはまだ長い道のりがあるなど、関連する問題点を指摘している。
データセンターは大量のCO2を排出するため、CO2排出量の統計やカーボンニュートラルに向けた行動計画が困難になる恐れがある。グリーンピースの2021年5月のリポートでは、2035年までに中国のデータセンターのエネルギー消費量は4505~4855億kWhに達し、CO2排出量は1億トンを超えると予測している。公開されている情報によると、グリーン電力の比率が30%を越えているのは万国数拠のみで、残りの企業は10%以下か、データそのものを公表していない。
さらに、カーボンニュートラルに向けた取り組みにおいて、ほとんどの企業が自社の運営範囲内のスコープ1と2のみに注力しており、サプライチェーン全体を含むスコープ3への取り組みは遅れている。79%の企業はスコープ3の温室効果ガス排出量を公表していない。2030年までにスコープ3を含む全面的なカーボンニュートラルの実現を確約しているのはテンセントとアリババにとどまり、他の企業はグループ全体としての目標も設定していないのが現状だ。
(翻訳・畠中裕子)
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