上海汽車・アリババが設立のEV「智己汽車(IM Motors)」、評価額約6000億円に

36Kr Japan | 最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア

日本最大級の中国テック・スタートアップ専門メディア。日本経済新聞社とパートナーシップ提携。デジタル化で先行する中国の「今」から日本の未来を読み取ろう。

スタートアップ注目記事

上海汽車・アリババが設立のEV「智己汽車(IM Motors)」、評価額約6000億円に

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

続きを読む

中国自動車大手の上海汽車集団(SAIC MOTOR)傘下「智己汽車(IM Motors)」はこのほど、シリーズAで30億元(約600億円)を調達し、評価額が300億元(約6000億円)近くに達したと発表した。同社の発表によると、出資を主導したのは交銀資本管理(BOCOM Capital Management)で、既存株主の上海汽車集団が追加出資したほか、工銀金融資産投資(ICBC Financial Asset Investment)、国家緑色発展基金(NGDF)など多数の投資機関が出資に参加した。

今回の資金調達は資金不足を理由としたものではない。智己汽車は今回の資金調達を準備し始めた時に約70億元(約1400億円)の現金を保有していた。関係者によると「今回の資金調達の主な目的は、多様な株主とガバナンス体制を導入するため」という。

智己汽車は上海汽車集団が傘下に有する独立したプレミアムブランドで、製品価格は30万元(約600万円)を超える。老舗自動車メーカーが手掛ける多くの新ブランドと同様に、智己汽車も親会社の実績ある研究開発力とサプライチェーン体制、手厚い資金援助を受けて誕生した。

智己汽車は2020年11月、上海汽車集団、アリババ、上海張江集団(Shanghai Zhangjiang Group)の3社が手を組み、登録資本金100億元(約2000億円)で設立された。上海汽車集団の出資比率は54%、アリババと上海張江集団はそれぞれ18%だ。

19年、蔚来汽車(NIO)や理想汽車(Li Auto)などの新興自動車メーカーは深刻な資金難に陥った。20年は危機を乗り越え急いで巻き返しを図る1年となったが、まさにその同時期、上海汽車や東風汽車(Dongfeng Motor)などの老舗メーカーが次々と新ブランドを立ち上げはじめた。智己汽車もその一つであり、自動車のスマート化、電動化を目指している。

こうした自動車製造ブームには100社以上のプレーヤーが参入したが、明確な戦略やストーリー、差別化ポイントを描けなければ頭一つ抜けるのは難しい。蔚来汽車はユーザーコミュニティを形成することでまずは国産プレミアムEVに対するイメージをある程度打ち立て、理想汽車は製品アイデアを強調することで限られたリソースでマーケットを切り開いた。資金調達を加速させ、資金力も十分に備える現在、両社は技術開発を強化してインテリジェント運転やスマートコックピットの開発部署を立ち上げている。そして、両社のような理念に惹かれ、多くの自動車メーカーが後追いしている。

しかし智己汽車は例外のようだ。手持ちのリソースと高級ブランドとしての位置づけを結びつけ、4つの中核理念を打ち出している。その4つとは、ソフトウェア定義自動車(SDV)、データドリブン(データ駆動型)、車両全体の総合力、デザイン・美的感覚だ。

智己汽車は今年6月、同社初のモデル「IM L7」の納車を開始した。4WS(四輪操舵)システムを採用し、前後で異なる幅のタイヤを配して0〜100km/h加速(停止状態から時速100キロに加速するまでの所要時間)が3.87秒、制動距離がわずか32.69メートルとなっており、とくに意匠は業界で高い評価を得ている。

車両の総合力をアピールしていることからもわかる通り、智己汽車は業界への追随を急ぐことなく、車両のインテリジェント化開発に多くの力を注いでいる。関係者によると、同社の従業員数は約1500人で、約7割がソフトウェア開発人員だという。ただし、インテリジェント運転やスマートコックピットの開発に関してはサプライヤーとの緊密な提携でまかなっている。前出のIM L7も自動運転システム開発企業「Momenta」が提供するADAS(先進運転支援システム)を採用している。

サプライチェーンやチャネルに関しては、上海汽車集団が有するリソースを多く取り入れる。例えば販路は直営の体験型店舗を除き、代理店の力を借りて開拓している。上海汽車集団のDNAに支えられた智己汽車は、闇雲に資金を投入してマーケットを切り開く手法を採るその他の新興自動車メーカーとは考えを異にしている。関係者によると、智己汽車は同社初のモデルで10%以上の粗利率を求めているという。これはEV市場ではかなり高い目標で、蔚来汽車や小鵬汽車(Xpeng Motors)も時間をかけてようやく達成した数値だ。

智己汽車が公開したデータによると、IM L7の納車台数はすでに1000台を突破しており、今年下半期にはIM L7と同じプラットフォームを採用するSUV「IM LS7」の納車が始まる。

単純に数字で見ると2カ月で1000台という納車台数は決して突出した成績ではなく、生産力が伸び悩んでいる可能性もある。高級化、インテリジェント化されたEVへの転換を上海汽車集団から任されている智己汽車は、これからもペースを上げていく必要がありそうだ。
(翻訳・山下にか)

36Kr Japanで提供している記事以外に、スタートアップ企業や中国ビジネスのトレンドに関するニュース、レポート記事、企業データベースなど、有料コンテンツサービス「CONNECTO(コネクト)」を会員限定にお届けします。無料会員向けに公開している内容もあるので、ぜひご登録ください。

原文はこちら

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録

関連記事はこちら

関連キーワード

セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け

メールマガジンに登録