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消費者の多くは、中国製のものより海外製の方が優れていると考える。数年前には、炊飯器や温水洗浄便座を買うためにわざわざ中国から日本へ行く人が少なくなかった。確かに中国の家電が特定の技術面で海外に後れを取っているのは事実であり、多くの部品やチップを輸入に頼り製造コストが大幅に増加するため、商品のハイエンド化とは基本的に無縁だった。とはいえ、世界最大の消費国家である中国では、年間を通してさまざまな種類の家電製品の需要が非常に高いため、いつまでも輸入頼みではいられない。製品の独自開発こそが自国の発展を促す唯一の手段となる。
また、家電製品を海外に輸出したりハイエンド市場に参入したりする場合、足場を固めるためには特許技術や独自開発のチップが欠かせない。中国ブランドは現在、チップ開発における弱点の補強を少しずつ進めている。
中国家電大手ハイセンス(海信集団)は、国内でも早い時期にチップの自社開発に着手したメーカーだ。2005年に発表したデジタルTV向け画像処理チップ「信芯」は、知的財産権を持ち産業化を実現した中国初のチップとなった。ハイセンスが設立した子会社「青島信芯微電子科技(Hi-image Technologies)」も昨年、中国初となる独自開発の8K対応AI画像処理チップを発表。これによりハイセンスは世界のテレビ出荷台数でLGを抜いて世界2位に躍り出た。最近では、信芯微が国内の証券取引所への上場を準備していると報道されている。
ハイセンス以外にも、ここ数年でハイアール(海爾)、格力(GREE)、美的(Midea)、TCLなど家電大手が積極的にチップの自社開発に乗り出している。
自社開発チップはハイエンド市場への入場券
一般的に家電分野で使用されるチップにはマイクロコントローラ(MCU)チップ、電源管理チップ、通信チップ、ドライバーチップ、画像処理チップなどがある。白物家電ブランドが開発に力を入れているのは主にMCUやインテリジェントパワーモジュール(IPM)だ。これらのチップはプログラムや機能管理を実行する頭脳の役割を果たし、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などに搭載される。他方、テレビブランドは製品の画質や体験を向上させるため、画像処理や画質強化のプロセッサやドライバーチップの開発に重きを置いている。
中国家電最大手のハイアールは2000年に、北京市と上海市にそれぞれIC設計会社を立ち上げた。北京の会社は01年に最初のデジタルテレビ用MPEG-2デコーダチップ「愛国者1号」を開発、上海の会社も15年に初のMCUチップ量産に成功している。さらにIoTチップ、ディスプレイチップ、カスタムチップなど多くの製品を相次いでリリースしてきた。ハイアールが中国トップ家電メーカーの地位を固めたのも、長期的なチップ戦略ぬきには語れない。ハイアールはこれらのチップを自社開発することにより、エアコン、冷蔵庫、洗濯機、給湯器など多くの分野で圧倒的な強さを示し、販売量でも常にトップをひた走っているのだ。
中国テレビ市場で販売台数1位のハイセンスも、チップの自社開発における数々の成功に支えられてきた。2005年に発表したデジタルTV向け画像処理チップ「信芯」は、海外製チップの寡占状態を打ち破り、チップの価格を13ドル(約1700円)から5ドル(約650円)に引き下げた。15年に4K/120Hz対応の超高画質チップを発表したほか、22年には8K AI画質チップをリリース、このチップによりハイセンス製テレビの画質や性能は世界一流レベルに達し、サムスンやLG、ソニーなどのブランドに比肩するようになった。
格力は、中国でも自社開発技術を特に重視する企業の一つだろう。同社の董明珠董事長はかつてインタビューの中で、毎年100億元(約1900億円)を投じる必要があるとしても、必ず自社製チップの開発にこぎ着けると語っている。格力は2017年にマイクロエレクトロニクス部門を社内に立ち上げ、チップの製造を計画する。翌18年には、MCUチップやAI+IoTチップ、パワーデバイスチップなどを研究する全額出資子会社「珠海零辺界集成電路(Edgeless)」を設立した。格力が独自開発したMCUチップやパワーデバイスチップの多くは自社製品に搭載され、そのうちのいくつかは改良された第2世代が登場している。さらに言えば、格力のエアコンに使用される汎用32ビットMCUの年間生産量が数千万個に上っており、同社がエアコン市場で高い競争力を有しているのもうなずける。
美的が半導体分野に参入したのはいくぶん遅く、傘下に半導体設計会社「美仁半導体」を設立したのは2018年になってからだが、製品はMCU、パワーデバイス、電源、IoTの四大分野を広くカバーしている。昨年初めには、美的が自社開発チップ8000万個の出荷目標を掲げ、次は車載チップへの進出を準備しているとメディアが報じた。
上述の大手企業のほかにも、創維(スカイワース)、康佳(Konka)、格蘭仕(Galanz)などの家電ブランドが半導体を手がけている。TCLは2021年にIC設計会社「TCL微芯科技」を設立したほか、長虹電器(Changhong)の開発したMCUチップを搭載したハイエンド冷蔵庫が昨年末に長虹傘下の美菱ブランドから発売された。
今後、家電業界は全面的なスマート化時代に突入し、チップというハードパワーとアルゴリズムのソフトパワーの双方が不可欠になるだろう。独自のチップがなければ、ソフトパワーがどれほど優れていても、ハイエンド市場で存在感を示すことは難しくなる。自社開発チップは、家電ブランドがハイエンド市場に参入するためのいわば入場券であり、その重要性は語るまでもない。
作者:WeChat公式アカウント「雷科技(ID:leitech)」
(翻訳・畠中裕子)
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