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中国の3Dプリンター業界メディア「南極熊3D打印網(nanjixiong.com)」はこのほど、3Dプリンター各社の投資価値に着目した分析を行った。3Dプリンター各社に対する理解を深め、本質を見抜き、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が得意とするような「バリュー投資」につなげてもらうことが狙いだとしている。
南極熊3D打印網はヤフーファイナンス、ベンチャー投資機関の各種データに基づき、2019年6月6日時点の世界3Dプリンターメーカー20社の時価総額または評価額の一覧表を作成した。
南極熊3D打印網による分析は次の通り。
①ナンバーワンは
評価額世界第1位はドイツの金属3Dプリンターメーカー大手「EOS(Electro Optical Systems)」の26億ドル(約2800億円)。2018年度の売上高は4億ドル(約430億円)、純利益率は10%を超える。同社はSLS(レーザー焼結)ポリマー造形、SLM(レーザー溶融)金属造形技術をもつ産業用3Dプリンターメーカーである。コアパーツ関連企業で市場シェアが非常に高いのは、ファイバーレーザー機器を手がける米「IPG Photonics」。3Dプリンターの産業利用で世界的な手本となっているのは、カスタム製造における3Dプリンターの活用に近年注力している米「Protolabs」だ。
②新勢力は
革新的技術を確立したスタートアップで、近年急成長を遂げ、市場で存在感を増しているのは、高速光造形3Dプリンティング技術をもつ米「Carbon(旧Carbon3D)」、デスクトップサイズの低コスト金属3Dプリンターを発明した米「Desktop Metal」、カーボンファイバー材を使いデスクトップ型で低コストを実現した米「Markforged」ら3社となっている。
③旧勢力は
2014年当時、米国の「Stratasys」と「3D Systems」の時価総額は100億ドル(約1兆7600億円)といわれていたが、今では両社ともその時価総額はわずか10分の1になり、後発企業に追い抜かれつつある。M&Aや積極投資が引き起こした結果なのか、あるいは技術やマーケティングが時代に取り残されたのか。
④金属3Dプリンター企業は
前出のDesktop Metal、Markforgedなど新型金属3Dプリンターメーカーは、低コストと高速生産を強みとして一般工業分野への応用が可能だ。市場の拡大が期待され、評価額も既存の大手メーカーらを上回る。中国国内を見ても、金属3 Dプリンター企業の時価総額または評価額は高い。
⑤中国3Dプリンター企業のIPOは
中国版ナスダック「科創板」が創設されたことで、中国3Dプリンター企業のIPO(新規株式公開)に光が見えた。3Dスキャナー・プリンター機器などを手がける「先臨三維(SHINING 3D)」 、金属3Dプリンターの「鉑力特(Bright Laser Technologies)」 ら2社が科創板上場を申請している。
ただ、科創板の株式売買には、証券口座に50万元(約780万円)以上の資金をおく等のルールがあり、多くの一般投資家は蚊帳の外だ。取引要件をみたす機関投資家は、冷静に分析して投資する。IPOで高値をつけるのは難しいかもしれない。
⑥マイナー領域のバイオプリンター、電子回路プリンター、砂型プリンターは
主に鋳造用砂型3Dプリンターを手がける米「ExOne」と独「Voxeljet」の売上高、時価総額はどちらも冴えない。
イスラエルの電子回路3Dプリンターメーカー「Nano Dimension」の時価総額は2000万ドル(約21億6000万円)。2018年の売上高は510万ドル(約5億5080万円)、最終損益は1549万ドル(約16億7300万円)の赤字だ。
バイオ3Dプリンターのパイオニア、米「Organovo」は2018年度の売上高が309万ドル(約3億3200万円)なのに対し、損失額はなんと2663万ドル(約28億6500万円)に達し、支出超過の状態だ。ただ、人工肉関連情報サイト「中国人造肉在線(www.renzaofood.com)」 でも人工肉製造に3Dプリンターを活用する動きが確認されており、市場のニーズも旺盛なことから、大衆化に向けて大きなチャンスが見込まれる。
ただ、これら3タイプの3Dプリンターの分野はマイナーな業界であり、まだ大規模な利用には至っておらず、この状態がさらに数年は続く見通し。
⑦欧米市場に上場する3Dプリンター企業の時価総額の合理性(PSR)は
前出の3D Systems、Organovo、Stratasys、Protolabsのほか、独「SLM Solutions」 、ベルギー「マテリアライズ(Materialise)」 、仏「Prodways」等、欧米の上場3Dプリンターメーカー各社の数値を集計し、PSR(株価売上高倍率=時価総額÷売上高)を分析したところ、わずか3.5倍程度にとどまった。利益面を見れば、7割以上の企業が赤字となっている。すでに上場している3Dプリンター企業は比較的歴史があり、投資家の想像をかき立てる存在ではなくなっている。一方、新鮮味がある未上場企業のCarbon、Desktop Metal、Markforged等は、売上高が低くても多くの投資マネーを引きつけ、時価総額は高く評価されている。
⑧中国の3Dプリンター企業の評価額は
中国で評価額が1億元(約16億円)を超える3Dプリンター企業は「鑫精合(TSC)」(金属造形)、「湖南華曙高科(Farsoon Technologies)」(金属・ナイロン造形)、「北京金達雷科技(UNIZ)」(高速光造形)、「北京清鋒科技(LuxCreo)」(高速光造形)、「北京中航邁特(AMC POWDERS)」(金属パウダー造形)、「上海聯泰科技( UnionTech)」(産業用光造形)、「広東漢邦科技(HBD)」(金属造形)、「上海盈普( TPM3D)」(SLSレーザー焼結造形)、「杭州捷諾飛( Regenovo Biotechnology)」(バイオ3D)、「北京上普( SunP Biotech)」(バイオ3D)等20数社にのぼる。
前出の欧米の上場3Dプリンター企業のPSRと比較すると、中国の3Dプリンター企業の評価額はかなり高くなっている。中国では市場規模が大きいことに加え、全体的に評価額が高くなりがちなためだろう。
どこかでバブルが起きているのか。バブルはどの程度のものなのか。3Dプリンター業界は展開が早く、見通しを立てるのは難しいかもしれない。
(翻訳:貴美華)
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