中国の中古車 途上国へ輸出始まる 課題は山積み

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中国の中古車がいよいよ海外進出を始める。

中古車輸出政策が承認されて3ヶ月、10カ所の試験地域の企業十数社がカンボジア、ナイジェリア等の途上国への中古車の輸出を開始している。

これはいかにも理想的に見える産業モデルだ。新車の環境保護基準が更新されると、モデルチェンジが加速し、中古車の買取と再販が厳しくなる中古車販売業者が、中古車を途上国へ輸出する、というものだ。

しかし、中国国内の中古車価格がそれほど低くないことや、コスト削減、アフターサービスの産業チェーンの構築、すでに中古車輸出経験が数10年に及ぶ国との競合等、さまざまな課題がある。

輸出に追い風

今年の第2四半期、もともと車販売のオフシーズンであることに加え、中国における新排ガス基準である「国6基準」の施行もあり、新車のディーラー各社が在庫処分を始めた。

現在、一部地域では、値引き販売により駆け込み需要が発生し、新車の在庫処分終了している。中古車業者はその影響を最も恐れている。

新車の値引きセールが行われた地域で販売不振となると、中古車には地域を跨ぐ販売に制限があるため、新車のようにほかに売れる地域を探すことが難しくなる。

統計データによると、2019年の上半期、新車の販売台数が1232.3万台となる一方、中国の中古車累計取引台数が前年同期比で4%増の686.2万台になった。それでも、新車と中古車の比率は1:0.55の低水準にとどまる。米国の場合は1:3だ。

2018年度のデータによると、自動車保有台数に占める中国国内の中古車取引台数の割合はわずか5.8%だ。一方、米国の場合は14%超で安定している。

この2つのデータは、現在中国国内の中古車取引市場がまだ成熟しておらず、かつ、市場に在庫が多くあることを示している。

よって、排ガス基準の更新に伴い、モデルチェンジや車両価値の減殺ペースも加速されるため、廃棄にコストをかけるより、むしろ輸出するほうがよい。

大手は輸出を開始、中小は様子見

今年4月、中国政府は中古車輸出業務を推進する通達を公布し、現在、北京、天津、上海等の10地域に、中古車輸出試験地が設けられた。

7月までに、最初の中古車輸出取引が行われた。「全国購」(全国各地の中古車が購入可能)サービスをしている中古車ECサイトの「優信(xin.com)」が行った取引だ。その後1週間もたないうちに、「広州好車控股有限公司(広州好車、chnbestcar.com)」がカンボジア、ナイジェリア、ミャンマー、ロシア等へ中古車を輸出した。36Krの集計によると、8月末現在では、15件以上の中古車輸出取引が行われた。

現在、この業務を行っているのは、多額な登録資本金を有する経験豊富な中古車販売業者が多く、ECサイトでは、上記の「優信」以外に、「瓜子(Guazi.com)」も輸出許可を取得している。また、自動車メーカーも参入し始め、そこには「長城汽車 (Great Wall Motor)」の100%子会社「常有好車(天津)進出口有限公司」、及び韓国の現代自動車と「北京汽車(Beijing Automotive)」の合弁会社である「現代首選二手車経営有限公司」などが挙げられる。

中古車の輸出のプロセスは、買い取り→届出→整備→検査→輸出許可証の申告→通関申告→出港→車両登記抹消だ。現時点では、大手がまだ手探り状態にとどまっている中、中小は中古車の仕入れの不安定性、収益性の不確実性により、まだ様子見状態だ。とりわけ、運送費用が高いため、輸出ビジネスで利益を出すには一定の取引規模が必要となる。

まだ儲かるビジネスではない

中国の中古車の主要輸出先国はカンボジア、ミャンマー、ロシア、ナイジェリアなどだ。これらの国は中古車の需要が多く、人件費が低いため自動車の組み立て工場が多数あるが、自ら自動車を生産する能力はまだ低い。中国から輸入した中古車は、これらの市場で米国、日本、欧州などの中古車と競合することになる。

中国国内の中古車の強みは、ブランド、車種が多く、また台数も多いため、消費者の多様な需要を満たすことができることにある。

一方、弱みは、日本、米国などの成熟した市場の同スペック・車両条件の中古車に比べ、価格が1.5倍近いことだ。また、税金の問題もある。アジアやアフリカ等の途上国に外国ブランド車を輸出する場合、税還付ができないのが現状だ。よって、中古車輸出の最大の難関はブランドと価格だと言える。

中古車の輸出モデルの成熟までには、まだ多くの課題が残されている。まず、中国では中古車の車両基準が統一されていないことによるトラブルが多発しており、標準化と品質の確保が必要であることだ。次に、中古車には部品サプライチェーンが必要なため、輸出後にもアフターサービス、鑑定、保証等を海外で行えるように体制を整える必要がある。

実際、中古車販売業者にはこの未熟なビジネスに対して、ものは試しという態度で臨んでいる者もいる。

中国の中古車の輸出は好調というにはまだほど遠いが、自動車産業が成熟期に入るために通らなければならない道でもある。国際市場で、より複雑なビジネス環境、馴染みのないユーザー層とより強い競合相手に直面するためには、販売業者だけでは力不足だ。ECサイトや多国籍企業が参入すれば、今後の中古車輸出の増加につながるかもしれない。
(翻訳:小六)

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