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スマート電気自動車(EV)の開発・生産を手掛ける「理想汽車(LEADING IDEAL)」がセダンモデルの開発をやめていたことが、管理職など複数の関係者の話で明らかになった。同社は36krの取材に対し、「セダンの開発計画を発表したことはない。単に社内で検討していただけだ」と回答した。
同社の次の新車開発計画では、2022年に発売が予定されているため、開発もまだ初期段階だ。しかしセダンに関しては「検討していただけ」という単純な話では済まされない。複数の関係者によると、このセダンは当初、純電気自動車(BEV)とする予定だったが、その後レンジエクステンダー式に変更され、半年近くの研究開発を経て車体デザインの段階に入っていた。
同社の李想CEOが最近、中国版ツイッター「微博」につぶやいた内容からもセダンの開発が中止になったことが読み取れる。
8月19日、李氏は微博で「理想汽車がターゲットとするのは子育て中の世代。中長期的には3列シートの大型SUV(多目的スポーツ車)とMPV(ミニバン型多目的車)の開発のみに絞っていく」との考えを示した。
李氏は微博の中で、SUVの次はMPVであり、セダンではないと明言した。2018年10月、同社は初の市販車となるEV「理想ONE」を発売した。レンジエクステンダー技術を採用した7シートのSUVで、販売価格は32万8000元(約490万円)。公式発表ではないものの、メディアのインタビューなどで李氏は当時、次の車はセダンにする計画だと何度も語っていた。
この理想ONEも「初めはEVにするつもりだったが、レンジエクステンダー式に変更した」と同社上層部の1人が明かしている。同社は「短期的にはレンジエクステンダー式技術に注力する」方針だという。
航続距離と充電効率に制限があるBEVと違い、レンジエクステンダー技術は車両に搭載するガソリンエンジンで発電し、駆動用バッテリーに蓄電することができる。同社が発表した理想ONEの航続距離は700キロにも及ぶ。
航続距離の他、EVのコスト構造も収益化を難しくしている原因の一つだ。BEVは動力システムだけでコストの約50%を占めており、同価格帯のガソリン車と比べると、部品コストが約2倍かかる。販売価格を高めに設定したとしても、利益を出すのは難しい。
そのため、同社はBEV路線を離れ、レンジエクステンダー技術に注力することにしたものの、この方針は大型投資機関に認められず、李氏は資金調達で何度も壁にぶつかった。今年のシリーズCでようやく、生活関連O2Oサービス企業「美団点評(Meituan Dianping)」の王興CEOから支持を取り付けることができた。
王氏は出資にあたり、5月から何度も理想汽車の販売店を訪れ、最終的に7月末に出資契約書にサインした。これにより同社の評価額は29億3000万ドル(約3100億円)へと急上昇し、米ニューヨーク証券取引所に昨年上場した新興EVメーカー「蔚来汽車(NIO)」に迫る水準にまで達した。
しかしレンジエクステンダー式に切り替えたにも関わらず、セダンの開発はなぜ中止になったのか。「より強みを持つ分野に集中するためだ。米テスラのモデル3は間もなく中国での生産が始まる。張り合うのは得策ではない」。同社の幹部はこう明かす。
モデル3はテスラの中でも手頃な価格帯に設定されている。2018年下半期から生産能力が向上し、北米市場での販売台数が急増。米自動車専門メディア「InsideEVs」のデータによると、今年5月末時点で米市場でのEV(プラグインハイブリッド車を含む)販売台数は11万886台に上り、うち42%をモデル3が占めた。
前出の関係者が李氏から直接聞いた話として明らかにしたところによると、理想汽車がセダンの開発を取りやめた理由は市場の縮小傾向と利益の少なさだという。
李氏は昨年初めにも政策や関連法規を考慮し、すでに量産体制に入っていた低速電気自動車の生産を中止している。「これが李氏の潔さだ」と関係者は語っている。
(翻訳・山口幸子)
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