Luckin Coffee 2019年Q3には「戦略的赤字」から「損益分岐点」へ

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急拡大を続ける中国コーヒーチェーン「瑞幸珈琲(luckin coffee、ラッキンコーヒー)」の2019年第2四半期の純損失は6億8000万元(約100億円)と、前年同期比で2倍超の過去最大の赤字となった。現在は赤字率は縮小しており、売上高、新規出店数、累計利用者数、月間アクティブユーザー数(MAU)、店舗運営状況など複数の指標はいずれも好転しているが、市場はラッキンコーヒーの業績にとりわけ敏感となっている。

ラッキンコーヒーのトレードマークともいえるのが、出店スピードとコスト度外視の割引クーポン制度だが、出店ペースは減速傾向にある。「智氪研究院」のデータによると、新規出店数は今年第3四半期には前年同期比13%増の639店、また第4四半期には前年同期比2%増の898店に達するとみられるが、第2四半期の伸びが前年同期比78%増だったことを考えると、拡大スピードは鈍化しているといえる。

8月23日時点のラッキンコーヒーの新規出店数(提供:智氪研究院)

また割引制度に関しても、2018年第1四半期から2019年第1四半期の間に、新規顧客の獲得コストは1人あたり103.5元(約1550円)から17元(約250円)まで縮小している。今年第2四半期には新しい茶飲料ブランド「小鹿茶(luckin tea)」のプロモーションのため一時的に上昇したものの、顧客獲得コストは適正に管理されていることが読み取れる。

新規顧客獲得コストの推移(提供:ラッキンコーヒー)

さらにマーケティング費用に占める新規顧客1人当たりの割引額も、今年第2四半期には6.5元(約100円)と前年同期の11.8元(約170円)から大幅に縮小した。

割引額と1杯当たりのコスト推移(提供:ラッキンコーヒー)

各店舗形態の構成比率に関しては、今年第1~2四半期の重要な施策としてデリバリー専門店舗や店内に飲食スペースを設けたカフェ店舗を減らし、オンラインで注文し店頭で商品を受け取るピックアップ店舗に注力してきた。第2四半期にはピックアップ店舗の割合が昨年第1四半期の29%から93%に急上昇している。

ラッキンコーヒーの店舗構成比率(提供:ラッキンコーヒー)

デリバリー店舗とピックアップ店舗の本質的な違いは配達費にある。2018年初頭にはデリバリー費用が総売上高に占める割合が42%にまで膨らみ、収益の足かせとなっていた。ピックアップ店舗の強化によりデリバリー比率を引き下げたことで、ブランドPRにより多くの力を注げる環境が整いつつある。第2四半期にはデリバリー比率が19.8%にまで減少した。

デリバリー費用の推移(提供:智氪研究院)
デリバリー比率の推移(提供:ラッキンコーヒー)

黒字化も射程内に

ラッキンコーヒーの銭治亜CEOはこれまで「戦略的赤字」の方針を貫いてきたが、第2四半期の決算報告書には「損益分岐」という語が登場しており、同社にも黒字化を念頭に置くべき時期が来たことがうかがわれる。

今年第2四半期の店舗営業損失は、前年同期比31.7%減の5577万元(約8億3700万円)と段階的な成果を挙げており、第3四半期には損益分岐点に達する見込みだという。

店舗粗利率(損失率) 提供:智氪研究院

店舗数と収支の推移に目を向けると、昨年第2四半期の店舗数は624店、店舗当たりの収支は13万1000元(約200万円)の赤字だったが、今年第2四半期には店舗数が約3000店、店舗当たりの収支は1万9000元(約30万円)の赤字まで大幅に縮小している。

利用者数と注文数の増加に伴い店舗の経営効率は大幅に向上しており、スケールメリットが表われつつある。今後、粗利率が黒字化すれば、全体の損失状況も段階的に改善されるものと思われる。

2019年第2四半期の収益力をスターバックスと比較してみると、ラッキンコーヒーには材料費、店舗賃料、減価償却費の面で5~10%前後の改善の余地があることが分かる。

2019年第2四半期のラッキンコーヒーとスターバックスの収益力比較(提供:ラッキンコーヒー、スターバックス、智氪研究院)

単価の低さがラッキンコーヒーの収益力に一定の影響を与えているものの、グッズ販売や新商品のリリースにより商品の価格帯が広がり、粗利率の改善につながっている。8月19日には139元(約2100円)の限定ドリンクボトルや58元(約900円)のマグカップが発売されており、価格は通常のコーヒーや軽食に比べ高額な値段設定となっている。

新発売された関連商品(提供:ラッキンコーヒー)

ラッキンコーヒーはこれまで、差別化と店舗数の急拡大によって一定の市場シェアを獲得し、利用者の新たな消費習慣の形成に大きく貢献してきた。だが長期的に見た場合、他のコーヒー店が次々とピックアップ業態に進出してくる事態に備え、同社は新たなコアコンピタンスを獲得し、顧客のロイヤリティを高めていく必要がある。多額の資金投入による赤字は、創業期に全ての企業が通る道だ。この山を順調に越えられれば、ラッキンコーヒーの黒字化実現も射程内に入ってくるだろう。
(翻訳・神部明果)

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