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米EV大手のテスラは4月21日、中国など複数の国で全車種の値下げに踏み切った。
中国向けの公式サイトによると、全てのモデルで1万4000元(約30万円)が値引きされ、「モデル3」が23万1900~27万1900元(約500万~580万円)に、「モデルY」が24万9900~35万4900元(約530万~760万円)に引き下げられた。
米国でも全モデルの価格を2000ドル(約30万円)引き下げたばかりで、中国でも同程度の値下げが実施されたことになる。
世界規模での値下げに加え、世界の従業員を10%以上削減する計画が少し前に報じられるなど、テスラが新たな危機に直面していることは誰の目にも明らかだ。
まず、強力な中国製EVが市場で勢力を伸ばしつつあることが一つの要因となっている。中国では今年3月だけでも、吉利汽車傘下の高級EVブランド「極氪(ZEEKR)」の新型「ZEEKR001」、長安汽車傘下ブランド「阿維塔(Avatr)」の新型「Avatr12」、スマホ大手のシャオミが手がける初のEV「SU7」などが次々と発表された。なかでもシャオミSU7は販売価格21万5900~29万9900元(約460万~640万円)で、発売から24時間で約9万台を受注するなど、圧倒的な存在感を見せつけた。
中国の自動車業界団体・全国乗用車市場情報連合会(CPCA)によると、中国におけるテスラの自動車販売台数は2024年1月が13万2000台、2月が14万台だった。この数字からすると、シャオミは1車種の販売台数だけで、テスラの月間販売台数と勝負できることになる。今回、テスラがモデル3の最低価格を23万1900元に引き下げたことで、シャオミSU7との価格差はわずか1万6000元(約34万円)にまで縮まり、攻防戦はいっそう緊迫度を増した。
ライバル各社がプラグインハイブリッド車(PHEV)などさまざまなタイプを展開しているのに対し、EVのみを手がけるテスラは、中国市場で徐々に優位性を失っている。CPCAによると、中国おけるPHEV比率はEVに劣るものの、ここ1年間で確実に増加してきている。
これまでに型破りな新鋭EVメーカーとして世界の新エネルギー車市場の発展をけん引してきたテスラは、ペースの速い今の自動車市場にはなじまなくなっている。一方でライバルの中国メーカーは、常に市場の動向を注視し、消費者のニーズにかなった新車種をハイペースで投入している。例えば、ファーウェイと中国自動車大手の奇瑞汽車(CHERY)が共同開発したEVセダン「智界(Luxeed)S7」は、発売から100日余り後に、車両とソフトウエアの双方に大幅なアップデートを施したうえで再び発売された。アップデートのスピード感でこれほどの差をつけられては、テスラも戦意喪失するだろう。
テスラが発表した2023年決算では、年間売上高が前年同期比19%増の967億7300万ドル(約15兆円)と過去最高を記録したものの、営業利益は35%減少して88億9100万ドル(約1兆3700億円)にとどまった。粗利益は15%減の176億6000万ドル(約2兆7300億円)、年間粗利益率は18.2%で前年の25.55%から大きく低下した。
利益を犠牲にして販売台数を伸ばすことはできるが、これは長期的な解決策とはならない。今の市場環境を考えると、テスラが消費者を納得させられる新しいモデルをリリースすること、これが危機的状況を脱する唯一の手段なのかもしれない。
*2024年4月22日のレート(1ドル=約155円、1元=約21円)で計算しています。
(翻訳・畠中裕子)
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