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人工知能(AI)の活用がヘルスケアの分野でも進むにつれ、健康管理や見守りの場面が病院から家庭へと広がりつつある。
香港中文大学と香港サイエンスパークがインキュベートした新興スマートヘルスケア企業「ThingX」は、AIとIoTを組み合わせたAIoT技術を活用し、質の高いソリューションをスマートホーム業界とスマート医療業界に提供することを目指して設立された。
ThingXは、スマートホーム向けのAIデバイスに特化した独立系設計事務所(IDH)として、大きく分けて2つのシステムを打ち出している。1つ目は、家庭向け検知・通知システム。2つ目は、消費者向けのヘテロジニアスコンピューティング・プラットフォーム。
家庭向け検知・通知システムには、Wi-Fiやスマートウォッチ、血糖値測定器など複数のデバイスを連携させられる。さまざまな生理的指標をリアルタイムにモニタリングし、収集したデータを大規模言語モデル(LLM)に取り込ませて分析・解読を進めることで、慢性疾患の初期段階や緊急時にシステムが警告を発するようにした。
同社初のサーモグラフィーによる転倒検知器「Collie R1」は、低解像度のサーモカメラをベースにリアルタイムAI技術を強化。ミリ波レーダーで発生しがちだった誤報や報告漏れの問題を解消しただけなく、ユーザーのプライバシーを確保しながら、動き回る子どもや高齢者、ペットなどの識別を可能にした。
Collie R1の開発で技術的に難しかったのが、プライバシーを守るために、サーモグラフィーと低解像度カメラで粗いデータを提供しつつ、一定の精度を保つことだったという。LLMの学習に必要な業界データが不足していたため、正確性と誤報率のバランスをとるのが難しかった。同社はサーモグラフィーに特化した基盤モデルを開発し、専門的なトレーニングとサーモグラフィーの解像度の最適化を進め、これらの課題を解決した。
Collie R1は、地元香港ではすでに学校、商業エリア、高齢者施設での設置が進んでおり、東南アジアや欧州からも発注の意向が1万件余り寄せられている。製品の粗利率は70〜80%に上る。
ThingXは、AIoTセンサー向けのLLMに注力していく長期的な戦略において、ヘテロジニアスコンピューティング・プラットフォームを足がかりとし、AI向けチップ「NPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)」をベースとした推論処理向けのアーキテクチャの自社開発を進めている。この技術が、将来的に「家庭の大脳」となる大規模言語モデル活用ソリューションの基盤になるという。
家族の見守りや健康管理で取り扱うデータは多様で、生理的指標や生活習慣、運動、心理状態など多岐にわたる。これらのデータの収集には、ミリ波レーダーやサーモカメラ、Wifiデータなどを利用することになる。異なるタイプのデータを組み合わせて有効に活用するため、大規模言語モデルのトレーニングが大きな課題として立ちはだかる。
この課題の解決に向け、ThingXはLLMの理解力に焦点を当てている。同社の趙之赫CEOは「今後訪れる汎用人工知能(AGI)の時代のために、AIoTに特化したLLMを構築する必要がある。まずはセンサーから始めて、現実空間で長期的かつ安定的な観測を続けるべきだろう。こうして得られるデータは持続性を備えており、モデルが人間の考えをより良く理解するのをサポートしてくれる」と述べた。
同社は現在、エンジェルラウンドの資金調達を開始している。
(翻訳・田村広子)
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