低コスト・大容量の硫黄レドックスフロー電池、 中国のEV充電ステーションで応用

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電解液に硫黄を使う新しいタイプのレドックスフロー電池を手がける中国の「易池新能(Luquos Energy)」が、港華智慧能源(Towngas Smart Energy)と進める充電ステーション配電・蓄電実証プロジェクトでこのほど、蓄電システムが深圳市の送電網に接続された。それと同時に、同プロジェクトに初めて導入された自社開発の硫黄レドックスフロー電池蓄電システム「LEAPLUG(躍連)」も発表した。

同プロジェクトは、広東省深圳市の沙井にある電気自動車(EV)充電ステーションで進められ、蓄電システムの容量は20キロワット時(kWh)、30台の充電スタンドに電力を供給できる。電力消費のピーク時と少ない時間帯で生じる電気料金の価格差を生かせば、ピーク時の電力コストを最大70%節約でき、送電網にかかる負荷を効率的に減らすだけでなく、運営事業者の大幅なコスト削減にもつながるという。

再生可能エネルギーの普及率が上がる中、10時間以上の長時間蓄電技術に対するニーズが急速に高まっている。

しかし、ここ数年の蓄電市場で95%の高いシェアを占めている従来のリチウムイオン電池には、大きな課題がある。発火や爆発の事故がたびたび起こるため、ユーザーや政府当局は蓄電システムの安全性をいっそう重視するようになった。

今回のプロジェクトに導入されたLEAPLUGは、硫黄レドックスフロー電池とエネルギー変換システムを組み合わせた蓄電システムだ。設置コストとライフサイクルコストはリチウムイオン電池より50%低く、寿命は15年を超えると期待されている。

数ある蓄電技術の中でも、レドックスフロー電池は高い安全性を誇る有力な長時間蓄電ソリューションだと考えられている。しかし、現在最も広く活用されているバナジウムレドックスフロー電池は、材料となるバナジウムの価格が高い上、強酸性の電解液を使用するため耐酸性が求められるなどの課題もあり、活用がそれほど進んでいない。

これを踏まえて同社は材料の選定から問題の解決を図り、硫黄系電解液を使ったレドックスフロー電池を開発した。CEOの王増越博士は製品発表会で「硫黄を活物質に使う蓄電システム・LEAPLUGは、低コストと大容量を両立させ、従来のバナジウムレドックスフロー電池よりも電解液にかかるコストが少なく、無害で環境に優しい。今後、大容量の電池による長時間蓄電が必要とされる場面で、安全性だけでなくコストにおいても、リチウムイオン電池を含む従来の蓄電技術を上回ると期待できる」と説明した。

硫黄レドックスフロー電池の大規模な実用化が長らく実現しなかったのは、隔膜の選択性と電池のエネルギー効率という2つの大きな課題を解決できなかったからだ。

従来の隔膜では、活物質が隔膜を透過すると、その副反応で電池の効率と寿命が低下する。同社は設立からこの課題の解決に取り組み「電荷強化イオン交換膜(CRIS膜)」を開発、硫黄レドックスフロー電池の寿命を大きく向上させた。一般的なイオン交換膜に比べ、CRIS膜は硫黄の透過を効果的に抑え、電池の性能を低下させることなく、サイクル寿命を数十回から2000回以上に向上させられるという。

また、生物のエネルギー変換メカニズムにヒントを得て、電解液に分子触媒を添加するという斬新なアイデアで、エネルギー効率を20%以上向上させた。

新しい材料と隔膜の採用は、コストの削減と効率の向上にもつながった。王博士は「当社が開発した硫黄レドックスフロー電池は、電解液のコストがバナジウムレドックスフロー電池のわずか20分の1にとどまるなど、4時間を超える長時間蓄電にとても適している」と語った。

2020年末に設立された易池新能は、硫黄レドックスフロー電池の開発を手がけ、安全でコストの低い蓄電池の普及に注力している。チームのメンバーは、イオン交換膜、電解液、触媒など主要材料の分野で、10年を超える研究開発の経験を有している。

レドックスフロー商用化、コストと苦闘 中国・ENERFLOW

(翻訳・大谷晶洋)

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