中国RPG「黒神話:悟空」が空前のヒット、4万円のコラボフィギュアも1分間で完売 「作品に自信はあったが、ここまでブレークするとは」

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中国発の超大作RPG「黒神話:悟空」は、8月20日の発売から3日間で販売本数1000万本を超え、空前のヒットを続けている。古典小説「西遊記」の舞台を忠実に再現した世界観、そして孫悟空そっくりの主人公「天命人」を操って物語を進めていくゲームの面白さに世界中のゲームファンが魅了されたのだ。

「作品の出来栄えに自信はあったが、ここまでブレークするとは思いもよらなかった」

こう語るのは、黒神話:悟空の開発元「遊戯科学(Game Science)」の関係者ではなく、天命人の姿を完璧に再現したフィギュア入りのコレクションボックスを発売した「杭州守川文化創意」(以下、守川文化)の会長、鍾川氏だ。

コレクションボックスの価格は1998元(約4万円)。1万セット限定で売り出されると、発売1分で完売した。入手できたコレクターの1人はスマートフォン大手「小米集団(シャオミ)」の雷軍CEOで、8月27日に自身のSNSにその写真を投稿し、話題を集めた。現在、このコレクションボックスの転売価格は6000元(約12万円)以上に跳ね上がっている。

雷軍氏の投稿(シャオミの最新機種「Xiaomi 14 Ultra」で撮影)

黒神話:悟空のコレクションボックスが発売されるまで、守川文化はほぼ無名だった。36Krは同社の創業チームにインタビューを行い、会社設立からこれまでの軌跡、そして今後の展望を聞いた。

マーベル副社長から自ら声をかけた精巧なフィギュアづくり

守川文化は2013年末に設立され、当初はゲームや映画のパッケージデザインや美術教育などを手がけるアトリエを運営していた。フィギュア制作へと舵を切ったのは、2018年のことだった。

鍾会長はもともと熱心なコレクターで、映画やゲームの登場人物を模したフィギュアを多数集めてきたが、一部のフィギュアの細工に納得できなかった。それがきっかけとなり、自らフィギュアを制作しようと思い立ったのだという。

最初の作品は、ディズニー傘下のマーベルの人気IP(キャラクターなどの知的財産権)「ロキ」の等身大の胸像で、2018年に発表するやいなやネットの話題をさらった。これがマーベルにも伝わり、C.B.セブルスキー副社長から直接ライセンス契約をもちかけられた。

守川文化は2018年にマーベルのIPライセンスを取得。翌19年にはワーナー・ブラザーズと契約を結び、DCコミックのほか映画「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビット」「ハリー・ポッター」など人気IPのライセンスを手に入れ、続いてゲームキャラクターのフィギュア制作に全力を傾けていった。

同社は現在、フィギュアの制作会社2社を傘下に抱えている。2018年に設立されたQueenStudiosは、精度の高い彫刻のようなフィギュアを手がけており、平均価格は2万元(約40万円)、最も高いものは50万元(1000万円)に上る。一方、22年に設立されたINARTは、関節を動かせる6分の1スケールのフィギュアを2500〜3000元(約5万〜6万円)で提供している。今回発売した黒神話:悟空のフィギュアはINARTが制作したものだ。

実は、守川文化の共同創業者・劉卓氏と遊戯科学の共同創業者・楊奇氏は長い付き合いで、2020年には協業を模索し始めていた。そして黒神話:悟空の造形が決まった22年、正式に協業をスタートしたのだという。

劉氏は「1万セットの制作はなかなか厳しかったが、制作プロセス全体を見直すきっかけになった。それが今回の協業で得られた最大の収穫だ」と振り返り、INARTの生産ラインを一新したことで2024年の出荷量は少なくとも前年の2倍になるとの見通しを示した。

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中国製フィギュアを世界に

守川文化が創業した2013年当時、中国本土のコレクション用フィギュア産業はスタートラインについたばかりで、設立数年の企業しかなく数も少なかった。一方、日本や欧米、香港、台湾などでは設立後十数年から数十年経過した老舗企業が育っていた。

中国のフィギュア制作会社はこれまで、欧米の代表的な映画やドラマで人気を博したIPキャラクターばかりを手がけてきた。長年かけて磨き上げられたキャラクターは、すでに大きな影響力を持っているからだ。

守川文化も今回の遊戯科学との協業で、初めて中国発のIP「黒神話:悟空」のフィギュア制作にチャレンジした。鍾会長は中国でも多くの優れたIPが育ちつつあるとした上で、「IPは人の一生あるいは数世代に寄り添いながら成長し、人々の心に刻み込まれていくものだ」と話す。

優れたカルチャーIPからはフィギュアなどの派生商品が誕生し、大きな価値を生む。鍾会長によると、欧米の映画・ゲーム・音楽・書籍市場では、派生商品の売上高が全体の7割前後を占めるという。

守川文化は当初は中国本土市場に集中していたが、2023年後半からはグローバル展開に軸足を移し、米国や東南アジア、オーストラリア、欧州などの市場に進出し始めた。また、20年にシリーズA、21年にシリーズBの資金調達を完了しており、当面の資金に余裕がある。そのため、次の資金調達は25年になる可能性があるという。さらに、同社は今後も遊戯科学との協業を進めていくとした上で、すでに多くのコンテンツが用意されていると説明。これまでは欧米のIPを中心に手がけてきたが、将来的には国産IPの割合が高まるとの見通しを示した。

どんなIPが好まれるかは、国や地域、年齢層によって違う。守川文化は複数のプロジェクトを同時進行しながら展示会やファンミーティングで市場調査を行い、それぞれの市場や年齢層に好まれるIPやキャラクターを把握して商品開発に生かす手法をとっている。

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*1元=約20円で計算しています。

(翻訳・田村広子)

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