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再生可能エネルギーによる水素製造システムを開発するスタートアップ企業「翌晶能源(Egen Energy)」(全称、上海翌晶能源技術)がこのほど、エンジェルラウンドで彬復資本(Befor Capital)から数千万元(数億円超)を調達したと発表した。調達した資金は、江蘇省常州市天寧区に建設するSOEC(固体酸化物形電解セル)の生産拠点、電池材料に関する新技術の開発、市場開拓などに充てられるという。
翌晶能源は2020年に設立され、SOECやSOFC(固体酸化物形燃料電池)の中核部品や主要材料、発電システムのほか、風力発電や太陽光発電など再生可能エネルギーによる発電システムと組み合わせた総合エネルギーソリューションを手がけている。
貴金属を使わず安価
ここ数年で再生可能エネルギー発電は急速に拡大した。しかし、天候によって発電量が大きく変動するため電力網への負荷が深刻化し、再生可能エネルギー発電を一部中止してしまう地域も現れた。水素エネルギーと再生可能エネルギー発電を組み合わせれば、重要な工業原料となるグリーン水素(製造過程でCO2を排出しない水素)を製造できるだけでなく、電力需給を安定させることも可能となる。
グリーン水素の主な製造方法には、アルカリ水電解(AWE)、プロトン交換膜(PEM)型水電解、アニオン交換膜(AEM)型水電解、そして翌晶能源が手がけるSOECによる水電解の4種類がある。
グリーン水素の製造コストの8割を電力コストが占めるが、SOECはその他3種類の方法よりも製造効率が高いため、電力コストを3割低減できる。しかも、原材料に貴金属が含まれないため、ギガワット(GW)規模で生産すればAWEよりも材料コストを下げられる。SOEC技術による水素製造コストは、2028年までに石炭を用いる水素製造よりも安い1キログラムあたり10元(約200円)以下になる見込みだという。
SOEC技術はCO2の電解効率が高く、水素製造と発電の切り替えが可能で、産業排熱を利用してエネルギーの利用効率を高められる。発電量の変動が大きい再生可能エネルギーとの相性がよく、メンテナンスコストも低い。アルカリ液を使用しないため、環境汚染の心配もない。
電力消費量3割削減
現在のところ、SOEC技術は産業化と大規模活用に向けた初期段階にあり、海外の大手メーカーが製品開発や活用でリードしている。例えば、米Bloom Energyの水素製造能力はすでに年産2GWを超え、米航空宇宙局(NASA)の研究センターに4メガワット(MW)のSOECシステムが導入されている。このほか、独SunfireやデンマークのTopsoeも大規模なSOECプロジェクトを進めている。
翌晶能源の創業者、劉青会長は「中国には成熟したサプライチェーンシステムと材料開発技術がある。今後3〜5年以内に、中国企業が高効率な水素製造技術で世界のトップグループに追いつけると確信している」と述べた。
劉会長によると、同社のSOEC技術は国内最高効率の電解槽を実現しており、水素製造システムの電力消費量は1ノルマルリューベ(Nm3)あたり3.6キロワット時(kWh)で、従来の技術に比べ3割以上の削減になるという。
翌晶能源は、100kWクラスからMWクラスのSOECシステムを提供できる中国唯一の企業で、国内初となる年産100MWの自動化生産ラインのほか、360kWモジュールを組み合わせたMWクラスのSOECシステムの開発にも成功している。申請中の知的財産権90件余りのうち6割が発明特許で、1年あたりの特許申請数はSOEC分野でトップとなっている。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・田村広子)
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