“コスパ抜群”の大円筒形電池、中国メーカーが開発急ぐ eVTOLやドローンの率先導入に向けて量産へ

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米テスラのイーロン・マスクCEOは2020年9月、従来型に比べエネルギー密度が5倍で、製造コストが14%少ない最先端の円筒形電池「4680」を生産する計画を発表した。この電池を搭載する電気自動車(EV)は航続距離が16%延びるという説明だ。この4680電池は、サイズが従来の「18650」より二回り大きいため、大型円筒形電池とも呼ばれている。

テスラが4680電池の生産計画を発表すると、中国や海外の電池メーカーは相次いで同じ製品の開発に着手した。しかし、テスラの開発はなかなか進まず、業界でも大型円筒型電池の量産は何度も先延ばしになった。それでも地道に取り組むメーカーは存在する。次世代電池の開発に注力する「凌頂能源(Leadinx Energy)」はまさにそうしたメーカーだ。

凌頂能源は2022年6月1日に設立され、コスト競争力とエネルギー密度に優れた次世代の大型円筒形電池の開発と製造に特化している。同社の株主には、自動車メーカー・広州汽車(GAC)系の広汽資本(GAC Capital)、四川新能源汽車創新中心(Suchuan New Energy Vehicle Innovation Center)傘下の賽科投資、大手ベンチャーキャピタル・火山石投資(Volcanics Venture)などの有力な出資者が名を連ねる。

凌頂能源のチームは、電池業界に10年あまり携わってきたメンバーを中心に構成されている。創業者でCEOの梅驁博士は清華大学を卒業、電池業界で15年を超えるキャリアがあり、広州汽車系の広汽研究院などで電池開発部の部長を務め、総責任者として広州汽車の電池パックと電池セルの開発を率いた。また、中国の国家強制検査基準「電気自動車に搭載する駆動用蓄電池の安全に関する要求(GB38031-2020)」の策定に関わった。

各メーカーは大型円筒形電池のプロトタイプを作ってはいるが、性能の大きな向上は見られず、コスト的な優位性も生み出せていないため、大型円筒形電池の競争力は、自動車市場において従来の角形電池に大きく劣っている。しかし梅博士は、大型円筒形電池も、新しい電池材料を使い、従来の複雑な構造と製造方法を改めれば、角形電池よりも性能を高めてコストを削減できると説明した。

同社の製品は、こうした考えに基づいて開発されている。電池材料の刷新を出発点として製品の性能を高め、構造や製造方法の見直しでコスト削減を図っているという。

具体的には、正極材料とシリコン系負極材料に全く新しい高エネルギー材料システムを採用、独自のリチウムイオン電池用添加剤のほか、導電助剤や電解液などを開発して性能を向上させている。製造面では、無駄のない構造と組立・製造方法を改めて設計し、既存の大型円筒形電池をベースに、製造方法の簡略化と組立工程の削減を進めてきた。

その結果、「4670」「4695」という2種類の大型円筒形電池の製品化に成功した。エネルギー密度は350Wh/kgと、市販されている複数の半固体電池を大きく上回る。

注目すべきは製造方法と工程を見直した「倍速生産ライン」だ。設備投資を70%、工場面積を9%、エネルギーおよび電力使用量を約17%削減できるほか、作業員の数を32%減らし、製造期間を55%短縮できる。製造効率や歩留まりを向上させることで、電池の製造コスト削減につながる。

従来のリチウムイオン電池に技術的な改良の余地がなくなり、高性能かつ低コストの新しい電池技術が必要とされる中、それに応えるのが大型円筒形電池だと考えられている。

しかし、駆動用電池業界の競争はますます激しさを増している。その中で凌頂能源は、ドローンや電動航空機、低空飛行用航空機など付加価値が高いものの、技術や性能に対する要求が厳しい分野に参入しようとしている。梅博士によると、同社は昨年からドローンや電動垂直離着陸機(eVTOL)のメーカーと協力して、カスタム設計した電池の開発を進め、プロトタイプも供給している。すでに産業用ドローンのトップメーカーとサプライヤー契約を結び、高エネルギー大型円筒型電池システムを納品する予定だ。また、同社が抱える顧客企業の多くが大型円筒形電池に切り替え、製品への搭載を始めているという。

凌頂能源の「倍速生産ライン」はすでに試験操業を開始した。今後は低空飛行用航空機の分野でさらに顧客を開拓し、将来的には駆動用電池市場の他分野にも徐々に参入していく計画だという。

(翻訳・大谷晶洋)

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