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十数年前に歴史の舞台から姿を消したCCDカメラが今、中国の若者の間で日常を記録するツールとして人気を呼び、1台当たりの値段が千元(1元=約21円)からそれ以上に跳ね上がっている。
CCDとは光を電気信号に変換する半導体素子で、デジタルカメラのイメージセンサーに使われる。CCDを搭載したカメラは、十分な光の下ではクリアな写真を撮ることができる一方、サイズや画素数を上げることが難しい、暗所での感度が低い、ノイズが発生しやすい、露出寛容度が狭いなどの欠点がある。そのため2010年以降、カメラのセンサーはCCDを超える性能を持つCMOSへのシフトが進んでいる。
「価格は10倍以上になった。周りの友達も皆、買っている」。広東省深圳市で働く1990年代生まれの女性、唐さんは、生まれて初めて買ったカメラがキヤノンのCCDコンパクトカメラだったという。大学を卒業する時に数十元で売ってしまったが、今買い直そうとしたら予想をはるかに超える値段になっていたと話す。
「小紅書(RED)」「抖音(ドウイン)」「微博(ウェイボ)」など中国のソーシャルメディアには、中古のCCDカメラを手に入れたという投稿があふれている。
大手通販サイト「淘宝網(タオバオ)」や中古品取引プラットフォーム「閑魚」などの電子商取引(EC)サイトを検索すると、中古CCDカメラ専門店が無数にヒット。実店舗も星の数ほどある。記者が最近、深圳市にある有名な電気街、華強北市場を訪れると、CCDカメラを扱う店舗が数十軒あった。どの店先にもさまざまなブランド、モデル、年代、状態のCCDカメラが所狭しと並び、専門のリサイクルショップや修理店もあった。
あるCCD専門店の店主は、多くの若者がカメラ選びのためわざわざ来店していると述べ、「多いときは月に100台以上売れる。高いものは2000元前後、300~400元のものもある」と市場の好調ぶりを紹介した。
CCDコンパクトカメラは味のある写真が撮影でき、持ち運びが容易で日常を記録するのに便利な点が若者、特に学生を引き付けている。
人気スターの影響も大きい。彼らがソーシャルプラットフォーム上で自分が使っているCCDコンパクトカメラをシェアしたことで、多くのファンがカメラに注目し、同じものを手に入れたいと思うようになった。
スマートフォンが普及するにつれ、多くの大手メーカーは既にコンパクトカメラの生産を終了している。しかし、日常生活や旅先の思い出などを動画で発信する「Vlog(動画ブログ)」が台頭し、持ち運びに便利なコンパクトデジタルカメラの需要が再燃している。
専門家は、コンパクトデジカメは人々の情緒的価値の追求や個性を表現する手段になっていると指摘。写真の共有は今の若者にとって社交の儀式で、共有することが自意識の表現であり、集団のアイデンティティー強化にもなっている。その意味で、独特の魅力と価値があるCCDカメラの背後にある「エモーショナル消費」は、ある種の美的傾向として、若者のより良い生活への憧れを体現し、時代の発展の中で新たな意味を与えられている。
(新華社深圳)
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