中国の健康診断業界、アリババ一色に

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アリババ集団創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は数年前、中国のIT企業御三家「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」クラスの企業が誕生する可能性がある分野は医療・ヘルスケアだと明言していた。

今年初め、アリババは健康診断事業で中国大手の「愛康国賓健康管理集団(iKang Healthcare Group)」の買収を完了。業界関係者はこれについて、アリババがヘルスケア分野への進撃に号令をかけたとの見方を示していた。

それから半年、アリババが再び業界を揺さぶった。同じく健康診断事業で中国大手の「美年大健康産業(Meinian Healthcare)」がこのほど、アリババが同社の第2位株主となったことを明らかにしたのだ。

アリババは今や、中国の健康診断事業大手2社を傘下に収めた。新たな集客口をいち早く押さえただけでなく、医療・ヘルスケア分野で他社に先駆けて重要な一角を占めたことになる。

中国の健康診断業界はアリババ一色に

中国で民間による健康診断事業が始まったのは10数年前だ。当時、政府が医療市場の開放を打ち出し、民間医療機関の発展を奨励したことで、健診事業を手掛ける企業が何社も生まれた。

中でも美年大健康産業、愛康国賓健康管理集団、「滋銘体検(CIMING CHECKUP)」の3社は数年を経て中国の民間健診業界のトップ3に成長し、市場ではこれら大手3社と小規模な健診事業会社という構図ができあがった。

滋銘体検創業者の韓小紅氏

大手3社のうち、業界ナンバーワンを目指して最初に動いたのが滋銘体検だ。だが上場計画が何度も頓挫する中で、創業者の韓小紅氏は自力での上場を諦め、2014年に上場計画を発表していた美年大健康産業と手を組み、間接的に上場企業となることに望みをかけた。

美年大健康産業による滋銘体検の買収後、民間健診市場では美年大健康産業と愛康国賓健康管理集団の2強が覇権を争うようになった。すると今度は愛康国賓健康管理集団が、競争力を維持するために業界6位、7位、8位の地域密着型健診機関チェーン3社を買収。2014年4月には米ナスダックに上場を果たし、「中国健康診断業界初の上場企業」の称号を手にした。なお、美年大健康産業は2015年8月、深圳証券取引所に上場する「江蘇三友(Jiangsu Sanyou)」を買収するかたちで実質的な上場を果たしている。

業界ナンバーワンをめぐる争いは、大手2社が相次いで上場しても勝敗がつかなかった。そして今、2社ともにアリババと手を組んだことで、この争いにようやく幕が下ろされた。

アリババが美年大健康産業の第2位株主に

アリババが医療・ヘルスケア分野での発言権を手に

業界での一人勝ちを実現するということは、その分野での発言権を手にしたということだ。これこそがあらゆる後発のライバルに敗北感を味わわせる先発優位性でもある。

中国の民間健診業界を掌握したアリババは、「インターネット+医療・ヘルスケア」事業への新たな一歩を踏み出しただけでない。健康診断事業は医療・ヘルスケア分野での最も重要な集客口と考えられており、アリババがそこでの発言権を掌握したということは、医療・ヘルスケア分野への参入を検討しているライバルからみれば、最初から障壁が設けられているようなものだろう。

IT大手同士のゲームは始まったばかり

医療・ヘルスケア分野におけるIT大手同士のゲームは始まったばかりだ。アリババだけでなく、EC大手「京東集団(JD.com)」、IT大手のテンセント(騰訊控股)やバイドゥ(百度)も水面下で準備を進め、機先を制そうとしている。

この分野でアリババが手掛けるのは主に医薬品のネット販売、美容整形や痩身など治療を目的としない医療、インターネット医療、スマート医療の4事業で、医薬品のネット販売が売り上げの多くを占めている。アリババは民間健診業界への参入を果たしたことで、新たな集客口と膨大な健診データを手中に収めた。そこに豊富な経営資源という自社の強みを組み合わせることで、利用者の数を単に増やしていくのではなく、きめ細かく管理していくビジネスモデルへの転換を十分に実現できる。

京東もアリババと同じく、医薬品・ヘルスケア用品のネット販売、インターネット医療、ヘルスケアサービス、スマートソリューションの4事業を展開している。「京東健康(JD Health)」の辛利軍CEOは、スマート医療とインターネット医療事業をさらに拡大し、より多くの資源を新分野に投入すると明言している。

テンセントはメッセージアプリ「微信(WeChat)」を活用した取り組み、サービスプラットフォームの構築、「AI+医療」関連プロダクトの発表、合弁での診療所開設などを行っている。また、自社での取り組みに加え、健康医療分野で多額の投資も実行している。

バイドゥは当初、医療関連情報の検索事業に集中的に取り組んでいたが、今は関連機器やAIに主軸を置いている。創業者の李彦宏CEOは「当社はAIを活用し、スマート診療や遺伝子データ収集、医薬品開発など、医療分野に引き続き関わっていく」との方針を示している。

中国IT大手の動きをみる限り、彼らにとって医療分野が共通のターゲットになっていることは明らかだ。彼らは十分な力量を備えており、医療分野の情報化をめぐる戦いは一触即発の状態になる可能性もある。今回、アリババは民間健診業界で他社に先んじたとはいえ、最終的に誰が勝者になるかはしばらく見守る必要がありそうだ。
(翻訳・池田晃子)

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