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地震などの災害時停電対策や、キャンプなどのアウトドアで持ち運びができるポータブル電源市場に異変が起きている。
4月中旬に中国深圳の正浩創新科技(エコフロー)と米国に本社を置くヨシノパワーが相次いで商品発表会を開催し、日本市場に熱視線を送っている。米国のトランプ米大統領が中国からの輸入品に対し145%関税を引き上げ、中国は相互関税に対する対抗措置として125%の追加関税を課す関税引き上げ合戦が理由だ。エコフローの日本法人で危機管理対策部を務める長浜修本部長は「中国からの対米輸出が4割を占めており、影響は大きい」と指摘する。ヨシノパワージャパンの桜田徹社長も米国への輸出が困難になる中で「日本市場の重要性は増している」と語った。
トランプ関税で変わる市場
ポータブル電源はほとんどが中国から輸出されており、中国のライバル企業も同様の関税が課されるため、競争条件は変わらない。米国では、近年山火事が相次いでおり、今年に入っても1月からカリフォルニア州で大規模な山火事が発生し、需要が急増していたという。政府が被災者向けに供給したりしていたとみられ、こうした防災向けなどの需要が一気に蒸発する恐れが出てきた。高関税が課されれば大幅な値上げは避けられない。長浜氏は「トランプ氏も世論を重視して、特例として防災や災害関連の製品は関税を免除してほしい」と淡い期待を口にした。

日本では新型コロナウイルス禍後のキャンプ需要の伸びは鈍いが、エコフローは自動車に電源のほかに、持ち運びできる冷蔵庫やエアコンの新商品も発売し、車中泊などの過ごし方も提案して、日本市場での需要を少しでも取り込もうと躍起になっている。トランプ関税で巨大市場の米国に輸出困難になった製品が中国から日本などに流れ込んできて、競争が激化する展開も起きそうだ。

謎のヨシノパワーの秘密
ヨシノパワーは米国で設立したスタートアップ企業で、「三元固体電池」の商標を取得したと明らかにした。世界初の技術だと説明している。電池技術の開発を巡っては、エネルギー密度や安全性の面から大きな革新が期待されている「全固体電池」が注目されており、トヨタ自動車や車載電池世界最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)などがしのぎを削って開発している。
ただ、ヨシノパワーの電池は「全固体電池ではない」と説明しながらも、従来の三元系リチウムイオン電池の弱点とされる安全性や、リン酸鉄リチウムイオン電池のエネルギー密度の低さを克服したと主張している。同社によると、96%は固体で、ごく一部に液体を使用して電池としての安定性を強化している。

電池製品の技術は中国の兄弟会社からの協力体制により、供給を受けているとだけ公表している。業界に詳しい関係者によると、兄弟会社は固体電池を手掛けるスタートアップ企業「清陶能源(Qing Tao Energy Development)」。清陶能源は、自動車向けに注力しており、製造した一部の電池をヨシノパワーが海外向けのポータブル電源に活用しているのだという。
2023年に上海汽車集団(SAIC MOTOR)と提携し、固体電池を開発したと発表。セル単体の重量エネルギー密度は368Wh/kgで、リン酸鉄リチウムイオン電池の倍以上となり、テスト車両による走行試験の結果は、最大航続距離1083キロメートルを記録し、10分間の充電で航続距離は400キロメートル伸びたなどと驚異的なスペックだった。
ヨシノパワーという社名は日本企業かと想起させるが、2019年にリチウムイオン電池開発の先駆者としてノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏はこの会社に関係がない。桜田氏によると、創業者が吉野氏のファンで社名を付けた。その後、桜田氏が、吉野氏本人に面会し社名を付けた経緯を伝えた際には「まあ、がんばりなさい」との言葉をもらい、社名の変更などは求められなかったという。
日米中3カ国にまたがる謎につつまれた企業が、競争の激しい電池市場で頭角を表すのか注目される。
(36Kr Japan編集部)
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