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「Yarbo」ブランドで除雪ロボットなどを展開している「漢陽科技(Hangyang Technology)」(以下、Yarbo)がこのほど、元鈦長青基金(Yuantai Investment Partners)などから2億元(約40億円)を調達した。資金はサプライチェーンの強化や生産の拡大、研究開発投資の拡大、製品改良に用いられる。同社の株主には、上場企業やトップクラスのコーポレートベンチャ―キャピタル(CVC)などが名を連ねている。
「1+N」の設計コンセプトで急成長
Yarboは2015年に設立され、さまざまな用途に使えるヤード(庭用)ロボットの開発や製造に注力している。
極寒の季節に除雪をするロボットはニーズが大きいが、正確な測位やルート計画の機能を搭載するには高い技術力が求められる。同社は8年間にわたる製品改良を経て、本体1台に季節ごとの用途に応じてモジュールを取り付ける「1+N」の設計コンセプトによって顧客のニーズを捉え、適切な市場に製品を供給する状態(プロダクトマーケットフィット)を作り上げることで世界トップクラスの除雪ロボットメーカーとなった。
Yarboは、消費者向け除雪ロボットおよび多用途ヤードロボットというカテゴリーの商用化を実現した唯一のメーカーで、技術開発から製品化までの険しい道のりを乗り越えてきた。
2024年には自社サイトで全製品の販売を開始、納品まで平均5カ月にも関わらず6000台以上の注文を受けた。製品は自社工場から世界に供給され、年間売上高は2億元(約40億円)を超えたという。
「1+N」の設計コンセプトでは、精度や性能が高い複数のモジュールを連動して動かす必要があるため、メーカーには革新的なハードウエアを設計し、サプライチェーンを構築する高い能力が求められる。同社は現在、広東省恵州市と浙江省嘉興市嘉善県に工場を設け、年間20万台以上の生産が可能となっている。
今年はサプライヤーや銀行との戦略的提携をさらに進め、生産と供給の台数を増やすためにサプライチェーンや生産能力に対する投資を拡大する方針だ。2025年の出荷台数は数万台を見込み、その増加率は3年連続で10倍に達する見通しで、Pre-IPOの資金調達計画にも着手している。
また、組織的にも拡大を続けており、世界各地に子会社を設立してグローバル化を進めている。優秀な人材の採用と組織構造の調整に力を入れ、開発のペースと製品改良のサイクルを短縮し、技術や製品の差別化を進めている。現在保有する特許は数百件に上り、除雪用具カテゴリーでは世界で最も速いペースで特許を増やしている。
気温−30℃でも稼働、RTK搭載⋯「Yarbo」の技術力
ヤードロボットの分野ではここ数年、スタートアップ企業が相次いで市場に参入し、競争が激化している。創業者の黄陽氏は市場調査を通じて、即時性が求められる除雪用具には大きな需要があり、除雪ロボット市場は芝刈りロボットやプール清掃ロボットに比べ、さらなる市場成長が見込まれるブルーオーシャンだと判断した。
欧米では、自宅周りの除雪が法的に義務付けられている地域があり、そうした地域では除雪用具が必需品となっている。例えば米国では、都市部にある道路の70%以上が積雪エリアに位置しており、戸建て住宅が大きな割合を占める。毎年厳しい冬になると、戸建ての所有者は玄関前の除雪をしなければならない。
しかし、除雪は危険が伴う重労働だ。氷点下10~30度にもなる極寒の環境で限られた時間内に除雪を終えるために、100kgにもなる除雪機を押して作業する必要がある。2003~18年の15年間に除雪作業が原因で救急外来を訪れた人は9万人以上に上っており、低温環境での作業は心血管疾患や怪我、死亡のリスクも高まる。
Yarboはこのような問題を解決するために、ハードウエアのモジュールやソフトウエアのアルゴリズムを独自開発し、製品を何度も改良してきた。本体に機能モジュールを組み合わせる「1+N」設計によって、過酷な環境での測位や検出、斜面走行、障害物回避、複雑な地形への対応に加え、出力の高さ、航続距離の長さといった課題をクリアした。
昨年発売された第2世代の除雪ロボット「Yarbo S1」は、本体に3方向をカバーする6組のカメラが搭載され、高精度なRTK測位に対応している。最大で深さ約30センチの雪に対応でき、雪質や硬さに関わらずさまざまな種類の雪を最長12メートル先まで吹き飛ばす。
同社は低温環境における航続距離の問題を解決するため、屋外の高温・低温環境で使える出力600Wのワイヤレス充電パッドを開発した。Yarbo S1は、通信環境が悪くても自動で充電パッドに戻り、1回の充電で最長90分、面積にして550平方メートル以上の作業が可能だ。
Yarboシリーズには、除雪・芝刈り・リーフブロワー用のモジュールがあり、冬の除雪から夏の芝刈り、秋の落ち葉掃除が可能で、さまざまなアクセサリーを組み合わせることで通年の使用が可能になっている。
黄氏は「当社の製品はすでに何年もユーザーに利用されており、除雪など庭につきまとう難題への対処をサポートしている。今回の調達資金で優秀な人材を採用し、製品の改良を加速するだけでなく、事業の拡大を図りたい」と話した。
将来的には、凍結防止剤の散布や施肥、植物の摘み取りなどに使うモジュールをリリースし、さまざまな季節やシーンでユーザーのニーズに応えるロボットの開発を目指している。
*1元=約20円で計算しています。
(翻訳・大谷晶洋)
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