中国EV「威馬汽車」、破産寸前から突如“復活宣言”。現実味乏しい“100万台目標”に疑問の声

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中国EV「威馬汽車」、破産寸前から突如“復活宣言”。現実味乏しい“100万台目標”に疑問の声

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中国の新興EVメーカー「威馬汽車(WM Motor)」は負債が200億元(約4100億円)を超え破産からの再建による2年間の沈黙を経て、突然「復活」を宣言した。

同社は9月6日に「サプライヤー白書」(略称白書)を発表し、数々の曲折を経てきたが、間もなく生産を再開すると宣言した。さらに、2025〜2030年までの成長のための計画を策定した。深圳翔飛汽車販売は、威馬汽車の再建投資家および新株主として、サプライヤーに対して呼びかけ、威馬汽車の生産の再開に協力するよう求めた。

中国の新興EVメーカー、また経営破綻か。NIOと競った「威馬汽車」が事業再編申請

白書によると、新生威馬汽車は3段階のロードマップを描く。①復興段階(2025—2026年):今年9月に浙江省温州の拠点でEX5とE.5の生産を再開し、年間の生産、販売で1〜2万台を目指す。タイのKD工場を東南アジア・中東市場向けの拠点として位置づけ、2026年には年間の生産台数10万台を計画している。

②発展段階(2027—2028年):年間販売台数の目標を25万台から40万台へと拡大させる。同時に高度な運転支援機能の搭載モデルを量産し、人工知能(AI)によって研究開発・生産・マーケティングのすべての工程の能力を向上させ、株式の上場(IPO)準備を開始する。

③飛躍段階(2029—2030年):2030年に生産台数を100万台、売上高を1200億元(約2兆4800億円)とすることを目指す。

栄光と失速

威馬汽車はかつて「蔚小理」(蔚来〈NIO〉、小鹏〈XPeng〉、理想〈Li Auto〉)と並び称されていた。創業者の沈暉氏は、中国・浙江吉利控股集団(Geely Holding Group、吉利グループ)の元幹部であり、スウェーデン自動車大手、ボルボの中国地区の元会長を務めていた。資金調達の規模は累計350億元(約7300億円)に達し、ピーク時には470億元(約9700億円)にまで急拡大した。2018年には、初の量産モデルEX5を発売した。2019年に総販売台数は1万6800台にまで増加し、2021年には4万4200台に到達した。しかし、競争環境がますます激化するなかで、技術面での優位性を欠き、製品ラインアップも乏しかった。さらに、オフライン店舗の拡大の動きはなく、経営が混乱していたといった問題から、次第に力を失っていった。2022年には販売台数が2万9400台に減少し、2023年以降は販売データを公表しなくなった。

最終的に、威馬汽車は2023年10月、正式に上海市第三中級人民法院へ予備的再建を申請した。再建案件に言及された監査報告によると、帳簿上の資産総額が39億8800万元(約830億円)で、負債は203億6700万元(約4200億円)に達していた

政府の後押しと懐疑的な目

今回の公告で、新株主である翔飛汽車は、威馬汽車の生産再開が政府レベルでの強力な支援を得ていることを強調した。温州市政府は専門の作業チームを設立し、浙江省内のサプライヤーとの調整を支援し、過去の問題を解決している。政策的な補助金の面では、温州市政府は威馬汽車の生産再開、生産ラインの技術改造、製品の研究開発に対して資金支援を検討しており、新しい威馬汽車を優先的に地元の公共調達リストに組み入れるとしている。金融面においては、翔飛が株主であることを信用強化のための優良な資産として活用し、温州市の地元金融機関と融資のマッチングを行い、生産に資金的な保障を提供している。

威馬汽車が野心的な計画を策定したにもかかわらず、業界からの疑念の声は絶えない。威馬汽車はこれまでにネガティブな情報が相次いでブランド力が低下しており、消費者やディーラーの信頼を獲得することがすぐには難しい。EX5やE.5のモデルはすでに一世代以上遅れており、低価格戦略しか取り得ない可能性がある。

最も重要なのは、やはりEVなどの新エネルギー車市場の競争がすでに激化しており、業界プレーヤーたちはより残酷な市場競争に直面せざるを得ない情勢だ。このような状況下で「100万台」という目標を打ち出すことは楽観的すぎる夢物語だと疑問視されている。

中国EV業界に淘汰の波、再編・共闘で迎える“後半戦”

*1元=約21円で計算しています。

(36Kr Japan編集部)

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