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「顔面偏差値」が経済を動かすこのご時世にあって、透明で携帯に便利な上に見た目も損なわないマウスピース歯科矯正法(ブラケットと呼ばれる従来型の器具を使わない方法)が人気だ。3D技術の段階的な成熟と実用化、さらには歯の健康意識の高まりに伴い、歯科矯正の一般的な客単価も旧式矯正法では約1万元(約15万5000円)だったのが、新たなマウスピース矯正法では約4万元(約60万円)にまで跳ね上がった。客単価の高さと治療期間の長さにより、この新矯正法は現在の歯科業界で最注目のニッチ市場ともなっている。
現在、中国国内のマウスピース矯正市場の二大巨頭は、米アライン・テクノロジー社のインビザラインと国内の「時代天使(angelalign)」だ。後者は中国国内で7割の市場シェアを得ており、売上高は毎年3倍のペースで増えているという。治療費用でいえば、インビザラインは4万5000~5万5000元(約70~85万円)、エンジェルアラインは2万5000~3万5000元(約40~54万円)で、前者はブランド力もあるためかなり割高なのが現状だ。
これと同時に、中国では歯科治療のデジタル化が急速に進んでいる。CAD/CAM装置、口腔内スキャナー、コーンビームCT(CBCT)などを使用するものだが、一方で機械が高額なため中国国内でこれらを導入する中小診療所は非常に少ない。
歯科医療関連ソフトウエア・ハードウエアシステムを手掛ける「愛美可(AirMico)」は、マウスピース矯正治療におけるコストの高さに切り込んだスタートアップだ。
歯科矯正コストの9割削減に成功
現在、中国で一般的なマウスピース矯正では、まず歯科医師が診察を行い、歯型をとってマウスピースメーカーに提出し制作プランを確定させた後、マウスピースメーカーがさらに3Dプリンター加工業者に制作を委託するという段階を踏んでいる。
愛美可の創業者である韓耀輝氏は、こうしたプロセスがマウスピースの納品期間の長さ、高額な矯正費用および治療プランの煩雑化の原因であると考えた。
同社のデスクトップ型矯正マウスピース制作システム「AirMico®」は、小型レーザースキャナー、小型3Dプリンター、多軸ロボットアームなどを組み合わせたもので、診療所内でのマウスピースの制作を可能にした。診療所はマウスピース用の樹脂を購入するだけで済み、コストを大幅に抑えられると同時に利益も維持できるほか、販売価格が下がるため患者も歯科矯正を受けやすくなる。また時間的コストの面から見ても、診察室自体がさながら加工工場のようになり、外部との郵送手続などにかかる膨大な時間をカットできることから、患者にもいち早くマウスピースを提供できる。さらに治療効果や患者の装着具合に基づき、マウスピースを随時調整し、場合によっては作り直しも可能だ。
愛美可はさらに、診療所に対する治療プラン設計サービスも提供する。韓氏によれば、同サービスは主に優れた歯科矯正専門医の不足緩和を目的としている。中国の歯科医師には診断能力はあるものの、具体的な矯正プランの策定能力がやや欠けている場合が多いという。このため、同社は社内に専門の歯科矯正医を配置し、診察医の診断に基づいてプランを提案している。
加えて、今後は患者とマウスピースメーカーとを直接マッチングする「オンライン・オフラインAirMicoスキャンセンター」によるサービスを提供していく。歯科医師や診療所さえ経由することなく、患者の自宅や指定場所でのスキャニングを行い、オーダーメードのマウスピースを患者に直接届けようというもので、提携医師による遠隔での矯正フォローも実施する。患者は1万元足らずでマウスピース矯正ができるため、タオバオ(淘宝)や天猫(Tmall)上でのオンライン通販事業が現在急拡大している。
以上のように、愛美可は診療所に対するAirMicoシステム販売、治療プラン作成によるサービス費用、および患者に対するマウスピースの直接販売を収益モデルとしている。ただし、現在はAirMicoシステムは本格的な普及には至っておらず、同社の事業はまた立ち上げの段階にある。
韓氏によれば、愛美可はインビザラインや時代天使とは直接的な競合関係にないという。市場に参入すれば彼ら自身の収益モデルが損なわれるからだ。反対に、中国国内の中小メーカーはそもそもプレミア価格とは無縁であるため、市場に参入してくる可能性はあるとのこと。
同社は今後、まず大学や歯科業界の専門家に対するプロモーションを行い、業界内での高評価を獲得したい考えだ。現在、社内の組織編成やソフトウエアの開発・更新、プロモーションのための資金調達も進めている。
画像提供:Pixabay
(翻訳・神部明果)
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