原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録
昨年11月、中国深圳市で「2019雲鋒基金グローバル投資家大会」が開催され、雲鋒基金(YF Capital)の共同創設者であるアリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏と虞峰氏が対談を行った。
雲鋒基金はここ数年、プライベートエクイティ(PE)ファンドとしてまずまずの成績を収めている。出資先はアリババグループ傘下で金融サービスを手掛ける「アントフィナンシャル(螞蟻金服)」、医療・ヘルスケアの「阿里健康(Ali Health)」、中国のリチウムイオン電池大手「CATL(寧徳時代新能源科技)」、医薬品開発受託大手「薬明康徳(Wuxi AppTec)」、家具小売大手「居然之家(Easyhome)」、宅配大手「円通速逓(YTO Express)」、オンライン教育の「VIPKID」、健康診断大手の「愛康国賓健康管理集団(iKang Healthcare Group)」、中古車ECプラットフォーム「瓜子二手車(Guazi)」などだ。今回の対談では投資のみならず、マクロ環境、企業経営、女性リーダー、今後のチャンスなどの話題をめぐり、馬氏と虞氏が自身の考えを語った。
チームビルディング:企業経営の要は人材
--雲鋒基金はこの10年で大きな成功を収めています。今後より大きなステージに上がるにあたり、どんな課題に直面すると思われますか。
馬氏:
「中国は世界第2位の経済大国であり、1千億ドル(約10兆9千億円)規模のファンドをいくつも生み出すことができるだろう。中国が世界第2位の経済大国に見合う規模になるにはテンセント(騰訊控股)やアリババのような企業が不可欠だ。しかし、中国の既存の企業はあるべき規模に到達していない。そこに大きなチャンスがある」
「機関投資家も企業だ。企業経営にあたっては、次の2点を片時も取りこぼさないことが必要だと考える。一つは先行きに対する判断。もう一つは真摯に自社の人材を育成すること。人材は非常に重要だ」
虞氏:
「雲鋒基金は現段階の戦略として、大企業への集中度を高めている。1社当たりの出資規模が大きくなりつつあり、案件の数は減っているが、規模は拡大している。週次会議で問われるのは『すぐに新規株式公開(IPO)できそうな出資案件があったか』ではない。常に問われるのは『企業の5年後、10年後の業界内での位置付けや、業界と企業自体の能力について』という本質的な問題だ。現在進めている案件が、企業やその先行きに対する長期的思考を踏まえたものであることが必要とされる」
女性リーダー:企業はもっと多くの女性リーダーを活躍させるべき
--PEファンドの多くは男性投資家が中心を占めています。一方、雲鋒基金はインパクトのある女性投資家を多数抱えています。なぜでしょうか。
虞氏:
「女性の細やかさ、鋭さ、しなやかさ、これらは優れた投資家にとって最も身に付け難い、貴重な資質だ。当社は女性が半分を占める。われわれのファンドのポートフォリオを見れば、出資先の中にも成功した女性経営者が多数含まれていることが分かるだろう」
馬氏:
「簡単に言えば、虞氏も私も女性を好み、信頼しているということだ。だから女性を支持している。この世界にはもっと多くの女性リーダーが必要だと思う。これは政治的な言い訳ではない。企業がしっかりと取り組んで、より多くの女性リーダーを活躍させるべきだ」
「私の今後の楽しみはまさにこの分野、教育、経営者、女性リーダーにある。雲鋒基金が出資する企業に多くの女性リーダーや起業家が現れることにも大変期待している」
競争:優れたライバルなしに成功することはできない
--アントフィナンシャルのモバイル決済サービス「アリペイ(支付宝)」とテンセントの「微信(WeChat)」はどのような競争関係にあるのでしょうか。平和的に共存するのか、それともアリペイはWeChatを超えようとしているのでしょうか。
馬氏:
「WeChatを圧倒することはほとんど不可能だろう。アントフィナンシャルとアリペイが最も感謝すべきなのはWeChatだ。戦うとしたら、達人と組む必要があるだろう」
「WeChatをこれほどの規模に育て上げたテンセントはすごい企業だ。中国でアリババとテンセントはさまざまな競争を繰り広げており、それがアリババを強くし、テンセントを強くしている。われわれが競い合っているのは未来戦略、人材システム、組織に対する考え方、世界の先行きに対する判断だ。こうした市場におけるライバルの存在なくして、1社だけで成功をつかみ取ることは不可能だ」
「WeChatのモバイル決済サービス『微信支付(WeChatペイ)』とアリペイの違いについて言うと、アントフィナンシャルはすでに全体的な思考の枠組みを確立している。2004年から現在までに、われわれのリスク管理能力、セキュリティ能力、信用力、そして技術力は軒並み世界最高水準を実現している」
(翻訳・池田晃子)
原文はこちら
セミナー情報や最新業界レポートを無料でお届け
メールマガジンに登録