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これまでの10年を総括し、今後の10年を見通す36Krのテクノロジーイベント「潮科技2020」。最先端企業のCEOに質問する「Ask Me Anything」で今回答えてくれるのは、アリババグループの金融関連会社「アント・フィナンシャル(螞蟻金服)」で保険事業グループ「相互宝(Xianghubao)」事業部総経理を務める邵暁東氏だ。
相互宝は、電子決済サービス「アリペイ」のユーザーを対象し、自社の個人信用スコア評価システムで600スコア以上の場合、初期費用は無料となる。保障コストは会員で均等に負担する仕組みなので、一般的な民間保険商品と比べても破格の安さとなっている。リリースしてわずか2年未満で加入者1億人を超えたという。
邵暁東氏は2014年からアリババ傘下のアント・フィナンシャルでリスク管理やセキュリティ管理を担当してきた。それ以前は刑事として20年以上勤務しており、中国公安部で詐欺犯罪を撲滅するスペシャリストとして働いた異色の経歴を持つ。
――決済サービス「アリペイ(支付宝)」がこの2年で医療共済「相互宝」をリリースしたのはなぜですか。
「相互宝を立ち上げたのは、重大疾病への保障を必要とする人々の切実な願いに応えるためだ。健康への意識の高まりと共に、このニーズはますます増大している。それでテクノロジーを活用し、公益性の高い共済という形で重大疾病に対する保障のハードルを下げたいと考えた」
「2009年の時点で、アリババ社内には『蒲公英(タンポポ)』という職員向け共済プランがすでにあり、長年にわたって安定した運用を行ってきた。この仕組みを社会全体へ拡張すればいいのだと考えたわけだ」
「しかし社内での運用とは異なり、他人同士ということで信用問題が関わってくる。アント・フィナンシャルは保険事業グループでノウハウを蓄積し、個人の信用度を数値化する芝麻信用(セサミ・クレジット)スコアという評価システムを確立してきた。十分な体制が整うまで待った結果、2018年の下半期にようやく相互宝をリリースすることができたのだ。信用問題やプラットフォームの透明性、専門性などをクリアした結果、加入者は瞬く間に1億人に達した」
――相互宝の負担金は今後さらに増加していくのでしょうか。
「サービス開始から1年間たった今、相互宝の負担金は上下幅3元(約50円)ほどと安定している。相互宝は後払い型のため、加入者の誰かが病気にかかり支援が必要なときにだけ負担金が発生する。そのため、支援を受ける人が増えれば負担金も増えるが、加入者全体の数も大いに関係する」
「加入者が1億人規模になれば、重大疾病の発症率や支援を必要とする人の数は一定の範囲内に収まるようになる。確率論における大数の法則だ。今は加入者が全体的に若いため、相互宝の重大疾病の発症率は社会平均よりもずっと低いが、今後は少しずつ平均に近づくはずだ。将来的には負担金は増加すると考えられるが、極端に上下することはないだろう。2019年の年間負担額は1人あたりわずか30元(約500円)ほどだった」
――相互宝は従来型の保険商品に取って代わるのでしょうか。
「その可能性はない。相互宝と保険はどちらも疾病に対する保障を行うもので、幅広いニーズに応えるため補足し合うものだ。生活水準や人々の意識の高まりにより、保障に対するニーズも多様化している。そのニーズを満たすためにも市場メカニズムが必要だ」
――今後、ネット共済はどう発展するとお考えですか。
「業界データによると、国内の共済加入者は2億人を超えているという。共済の価値を多くの人が認めており、中国における医療保障体制の一端を担っているということだ」
「ただ、国内の共済モデルには統一基準がなく、詐欺や横領の温床にもなりかねない。これからネット共済は調整期を迎えるだろう。誰もが認める基準が制定され、ルールに沿って発展するようになるはずだ。その結果、人々の保障ニーズを満たす点でさらなる向上が見られるだろう」
――以前は有能な刑事だったそうですが、畑違いの事業を行うことに決めたのはなぜですか。
「『刑事として働くならこの都市の人々を守ることができる。しかし、うちに来れば中国全土の人々を守れる』と言われたからだ。それで2014年からアント・フィナンシャルで、サイバーセキュリティ部門を担当するようになった」
「刑事も相互宝も、1人でも多くの人を守りたいという願いは同じだ。この1年で、1億人以上の心優しいネット民が1万人以上の重症患者に助けの手を差し伸べた。これは大変素晴らしいことだ。その彼らを私は是非とも守りたい」
(翻訳・畠中裕子)
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