臨床データ解析の米「Verana Health」、創業2年で110億円調達 臨床研究の一翼に

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情報化時代を迎えて、医療イノベーションはますますデータへの依存を深めている。だが、いかにして患者の個人データを適切な方法で研究機関に提供すべきなのか。またいかにして個人のプライバシーを保護すべきなのか。個人情報の取り扱いは医療界が一同に関心を寄せる問題となっている。

「Verana Health」はこの業界に早期に参入したプレーヤーで、2年前に米国で創業された。同社はこれまでに「GV(旧Google Ventures)」や「Bain Capital」、「Casdin Capital」、「 Define Ventures」から合わせて1億ドル(約110億円)を調達した。社長はバイオ・サイエンス分野を専門に手がける投資家のBrook Byers氏。

同社は、米国医師会(AMA)と共同で臨床データベースの最適化と統合を進めている。プラットフォームの管理権限を医師に持たせることで、実際の診療行為に基づくリアルワールドデータを解析し、臨床研究の加速につなげる考えだ。

実際、こうした手法は20年近くも前から実践されている。当時の専門医師会が臨床データセットの構築に着手し、医師の間で情報を共有できるようにするとともに、米連邦政府の基準に沿った報告を行えるようにしてきた。

同社の手がける主力製品は「Verana Practice Insights」と「Axon登録システム」の2つ。前者は、全米各地の診療活動に関する総合的なインサイトを提供するほか、医師に自身の手掛けた症例の中から臨床研究に適した患者を探すサービスを提供する。後者のAxon登録システムは、多発性硬化症や片頭痛、癲癇(てんかん)などの疾病の治療効果を追跡し、医療・ヘルスケア分野のエコシステムに価値を提供する取り組みだ。

Veranaは米国眼科学会(AAO)とデータ収集に関する協定を締結しており、アレルギー性疾患に対する脱感作療法を行った患者について膨大な症例のデータベースを構築し、新薬開発や集団の健康管理に関するデータ解析や医学研究に用いるとしている。

今のところ眼科と神経系疾患のみを対象としているが、来年にも対象科目を広げるほか、診断画像データやゲノミクスデータも同社のデータベースに統合する計画だ。

同社はこれまで一貫して、患者の個人情報などを削除した上で脱感作療法に関するデータ処理を行っていると強調しているが、こうした方法で安全性を確保することは容易ではない。

2019年6月にシカゴ大学医療センターとGoogleが、HIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)の規定に違反し、個人の識別が可能な医療記録を共有したとして告発された例がある。Googleがこれら大量の医療記録を利用してデータ解析を行ったという事案だ。

米医学雑誌『The Journal of the American Medical Association』によると、Googleなどの企業が開発した機械学習機能は、診療データから患者を再識別して個人を特定することができるともいう。

こうした個人情報の取り扱いは業界全体が抱える共通の課題であり、プレーヤー達にとってはやや窮屈な感じもある。
(翻訳・北村光)

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