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航続距離600kmという数字はEV(電気自動車)にとって重要な意味を持つ。この数値をクリアできれば、内燃機関車との航続距離の差がほぼ無くなるからだ。
航続距離の延伸によって、EVにとっての主要課題が変わる可能性がある。そのことを示すかのように、今年1月12日、中国科学院院士、中国EV百人会副理事長の欧陽明高氏は、今後EVメーカーが考えるべきことは車両の安全性と充電の利便性であり、航続距離ではないと話した。
航続距離の短さは電池技術の問題ではない
欧陽明高氏によると、電池のエネルギー密度の観点から言えば、EVの航続距離はもはや問題ではないという。例えば今年1月11日、「比亜迪(BYD)」の王伝福会長は、同社の次世代電池は今年3月から量産化され、そのエネルギー密度は50%上がり、寿命は100万km以上に達すると発表した。
動力電池大手の「寧徳時代(CATL)」も2019年のフランクフルトモーターショーでスーパーチャージャー、CTP(Cell-to-Pack、モジュールのないバッテリパック)、長寿命電池、電池自己発熱などの新技術を展示した。
航続距離を伸ばすための障害は技術ではなく、車両のコストだ。電池容量が大きくなれば、電池のコストと重量が増えることになる。そのため、メーカーは電池の配列パターン、マネジメントシステムにおいて工夫する必要があり、またモーターのエネルギー転換率の向上によって距離あたりのエネルギー使用量を減らすことが必要になる。
充電の利便性に課題
航続距離の心配をなくす電池の技術以外のもう一つの方法は、充電スタンドの数を増やすことだ。欧陽明高氏は、メーカーも充電関連のサプライヤーも、充電の利便性に力を入れるべきだと指摘する。
2019年11月の時点で、中国には117.4万基の充電スタンドがあり、前年同期比で61.2%増えている。しかし、さまざまな企業が充電スタンドを運営しているため互換性に課題があり、利用率は低い。数だけからいっても、まだまだ不十分だ。中国は2020年までに充電スタンドを480万基設置し、500万台の新エネルギー車の使用に供するとしているが、そのためにはあと360万基新設しなければならないのである。
数の不足のほか、充電スタンドの分布がアンバランスなことも問題だ。現在中国の充電スタンドは主に沿海地域に集中しており、保有数上位10都市だけで全体の75.3%を備える一方、チベット、新疆などの西北地区をすべて合わせても全体の5%に満たない。
さらに、高速充電技術の向上も必要だ。欧陽氏は、家庭用の充電スタンドでも日常使用は十分まかなえるとの見方を示す一方、長距離ドライブにはやはり高速充電が欠かせないと指摘する。
航続距離の正解は
消費者が航続距離にこだわるのは、EVに対しまだ内燃機関車同様の安心感を持っていないためだ。しかし、業界関係者によると、航続距離を際限なく伸ばすという方向は最適解ではないという。
「北汽集団(BAIC Group)」の徐和誼会長はかつてインタビューに対し、バッテリーパックを交換することを前提に、「航続距離は300km前後が最も合理的」と答えたことがある。これ以上短ければ、バッテリーパックを頻繁に交換しなければならず不便である。長すぎても、重量の増加によるエネルギー効率の低下が起きてしまう。そのため総合的に考えて、300kmが最適だということだ。ほかに、500km前後が最適とする専門家の意見もある。
EVの時代はまだ到来していないが、欧陽明高氏は2025年がマイルストーンになると見ている。その時期には新エネルギー車全体のコスト・パフォーマンスに大きな改善が見られ、2035年頃からは新エネルギー車が全面的に定着するという。
(翻訳:小六)
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