テンセント、ミニプログラム「微視好物圈」リリース ショート動画+ECで抖音らライバル追う

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中国IT大手テンセント(騰訊)のショート動画アプリ「微視(WeShow)」が、月間アクティブユーザー(MAU)1億人を達成した。ここ数年「バイトダンス(字節跳動)」が運営する「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」や「北京快手科技(Beijing Kwai Technology)」の「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」との競争で苦戦する中での快挙だった。テンセントの劉熾平総裁は以前「大量の資金投入で微視を発展させる。利益は度外視だ」と発言していたが、水面下では微視の収益化の道を探り始めていた。

ミニプログラム「微視好物圈」リリース

36Kr傘下のメディア「Tech星球」は昨年末、テンセントが微視での動画視聴を商品購入につなげるミニプログラム「微視好物圈」をリリースしたことを明らかにした。テンセントが手掛ける電子商取引(EC)分野の製品は多くない。業界関係者は、同社は新作アプリの機能を模索するためにミニプログラムをリリースする場合が多く、今後は微視のアプリとして「好物圈」が登場する可能性もあるとの見方を示すが、今のところその動きはない。

微視好物圈のトップページには、最上部にイベントや広告が表示され、その下に割引コーナーと「小微精選」コーナーが設けられていた(昨年12月末時点)。小微精選では影響力の大きい「達人」のショート動画の下部に商品のハッシュタグや割引情報を表示することで、動画への関心と商品購入をリンクさせている。一方、快手のECミニプログラム「快手小店」では、トップページに快手の動画で人気の商品を価格とともに表示しており、クリックするだけで商品購入ページにアクセスできる。

小微精選では、動画再生中に商品情報が表示される。商品購入ボタンをクリックすると、販売店のミニプログラムにアクセスできる。インターフェースの構成は抖音とよく似ているが、微視好物圈に出店する事業者は自社のミニプログラムを持つ必要があるため、中小事業者の出店を事実上制限している。

微視好物物圈は今のところテスト段階で、コンテンツも多くない。微視がMAU1億人を突破したタイミングでこのミニプログラムをリリースしたのは、動画コンテンツを収益化し、微視に合った収益化モデルを見つけるためだ。

微視の戦略、既存コミュニティーの収益化

テンセントは微視のユーザーを集めるため、まずは同社のチャットアプリ「QQ」のユーザー層である自己表現や新製品を好む若者たちを微視へ誘導した。

コンテンツ制作の面でも取り組みを進める。テンセントのショート動画・SNS製品事業部の周涛総経理は、昨年5月に開催された「テンセント・グローバル・デジタル・エコシステム・サミット」で、微視は創作能力を進化させていくと表明。人工知能(AI)技術と版権(IP)資源およびオフラインの創作活動資源を結び付けることで、コンテンツ制作のハードルを下げ、コンテンツの質を向上させる方針を示している。

直後の同年6月、微視はテンセントのスーパーアプリ「微信(WeChat)」を利用してユーザーの取り込みを図った。微信」の「朋友圈」(モーメンツ。タイムラインに相当)にアップできる動画は最長15秒間に限定されているが、微視を利用して撮影した動画については制限時間を30秒間に延長したのだ。これが微視の急成長の要因になった。調査会社「QuestMobile」のデータによると、微視の同月のMAUは1億人を突破し、前年同期比269.4%増となっている。とはいえ、トップ集団の抖音や快手にはまだ大きく水をあけられている。

微視は動画版「小紅書」を目指す

微視好物圈のスタイルは、現在大人気のソーシャルECアプリ「小紅書(RED)」のものとよく似ている。

小紅書では、ユーザーが静止画像に文字情報を添えて自身の購入商品を紹介し、他のユーザーはそれをショッピングの参考にする。

小紅書は有名人を加盟させ、急速に人気を獲得した。ユーザーは有名人の愛用品を知ることができ、有名人はファンと密接な交流ができる。有名人が推薦した商品は飛ぶように売れた。

例えばキーオピニオンリーダー(KOL)となった人気女優の林允は、愛用品の情報を「ノート」で紹介し、ユーザーと交流しながら小紅書に出店する業者で購入するよう促した。林允が紹介した基礎化粧品は、同一ブランドの別の商品とは比較にならないほどの売り上げを記録した。微視好物圈も同様に、ネットインフルエンサーやフォロワーの多いユーザーに愛用品を紹介させている。

図2

小紅書は有名人が紹介した商品をショッピングページの検索リスト上位に配置することでコンバージョン率(CVR)を高めた。ユーザーはリスト上位の商品を人気商品だと認識し、流行を追う形で商品を購入する。また、割引商品を期間限定コーナーに置くことで消費意欲を刺激した。微視好物圈も割引コーナーを設置している。

微視好物圈はショート動画版の小紅書を目指し、同様の手法をとっている。しかも、ショート動画は静止画像よりも情報量が豊かなコンテンツを発信でき、消費意欲をより強く刺激できる。

だが現段階において、微視には質の高いコンテンツ制作者が不足している。このままではショート動画は単なる広告になり、ユーザーの購買意欲を低下させるだけでなく、ユーザー離れすら引き起こしてしまう。ライバルの抖音はコンテンツの質も量も高いだけでなく、ライブコマースで売り上げを伸ばしている。

微視がEC分野で成功するための道は遠い。ショート動画を商品購入の入り口にするのは決して新鮮な手法ではない。微視が微視好物圈を通じて収益化を成功させるには、機能面で新機軸を打ち出すことが必要だ。

今回の微視好物圈のリリースは、微視がEC分野で成功を目指す道のりの途上に過ぎない。

作者:Tech星球(ID:tech618)、陳橋輝

(翻訳・田村広子)

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