日欧大手独占の中国研磨ロボット市場、新興企業「KAANH」が挑む

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日欧大手独占の中国研磨ロボット市場、新興企業「KAANH」が挑む

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研磨作業用というユニークなロボットを主力商品として開発する新興企業「佳安智能(KAANH)」が着々と市場を開拓している。2018年7月の設立から2年足らずで、ハード、ソフトを一体化したソリューションを大手家電メーカーの美的(Midea)など中国の有力企業に納入し始めた。研磨技術は日本やドイツといった製造業大国を支えてきた「匠の技」であり、その作業プロセスを自動化すれば、世界の産業地図を塗り替える可能性がある。大きな潜在力を秘めた佳安の強みの源泉を探った。

外国大手独占の中国研磨ロボット市場

研磨は多くの製品製造になくてはならないプロセスだ。研磨を必要とする製品は、大は高速鉄道、飛行機、船舶、自動車、機械から小は家電、通信家電、玩具、家庭用品に及び、巨大な市場ニーズを持っている。非常に細かい精度を求められる技術であり、たとえば熟練した研磨技術を持つ日本の東京・大田区の小さな町工場が、NASAのスペースシャトルに搭載するレンズを納入するほど、精度が競争力を左右する分野でもある。

中国の製造業参入は他国に比べて遅く、研磨工程もほとんど人力に頼ってきた。人力による研磨はかなりの熟練工によるもの以外は品質管理が難しく、生じる騒音や粉塵が職業病を引き起こすため、ここ数年では労働力確保が大きな問題となっている。

その解決策として研磨作業用ロボットがあるが、研究開発の敷居は高い。精密な加工、位置決めの正確性、力制御の安定性、速度などの厳格な要求があり、誤差の許容度も小さい。また従来の人件費の方がロボットへの投資コストよりはるかに低いため、顧客の購買意欲も沸かない。

こうした要因により、中国の研磨作業用ロボット市場は真の競争状態にあるとは言えない。スイス・ABB、日本・ファナック、日本・安川電機、ドイツ・クーカ(KUKA)などの外国企業に独占されているハイエンド製品をのぞき、多品種・少量生産の「ロングテール製品群」の広大な市場をけん引するリーダーはまだ現れていないのが原状だ。

こうした中で佳安智能は力制御ロボットの研究開発を進めている。その製品は主に研磨市場を対象としており、3Dスキャニングからオフラインプログラミングによる試作品作成まで、ロボットによる研磨に関わる一連のソリューションを提供している。同社はソフトウェアのアルゴリズム開発能力を有しているだけでなく、ソフトとハードウェアを一体化させた最終研磨装置の提供までを手掛ける。

佳安智能の強みとは

佳安智能の中心メンバーはいずれも上海交通大学の出身者で、ロボット業界の運営や研究のエキスパートだ。彼らの強みは、力制御、動力学、運動学などに基づく技術にある。その製品は美的のほか、クーカ、上海電気(Shanghai Electric)などに採用されている。

佳安智能の研磨作業用ロボットは同業界の3つの悩みを解決した。

一、前工程で生じた誤差が次の工程に持ち越されるという問題。これは鋳造や溶接などの工程でよく生じるが、単に位置制御だけではすり合わせの精度を高めることはできない。佳安智能は位置制御の代わりに力制御の技術を用いることでロボットのフレキシビリティを向上させた。この技術の核心となるのは力制御の適応アルゴリズムだ。力制御のみを用いる方法でロボットは材質や曲率が異なる材料に適応できるのだ。またどんな複雑なモデルでも1ms(ミリ秒)以内に演算と通信を完了できる。

二、研磨は装置が対象物と直接接触するため、鋭敏に反応を検知し、即時にシステム制御する能力が求められる。佳安智能はインテリジェントな力制御を行うリアルタイムコントローラーを開発し、異なる機種やセンサーにも対応できるようにした。またWEB、タブレットPC、コントローラーからの毎秒1000回までの指令に対応し、研磨中に随時ロボットのポジショニングを調整できる。さらに5G通信能力の大幅向上によりロボットの即応性も高まった。

三、研磨工程は複雑で業界基準もないため、大量の工程データを収集する必要がある。佳安智能はそのために人工知能によるアルゴリズムを開発した。まず3Dスキャニングによるデータと既存のモデリングデータを集め、機械学習によるナレッジグラフが作成される。それに基づきオフラインでの機器へのプログラミングが実行され、同時にオンラインコントローラーがリアルタイムで精度調整を補助する。

研磨ロボットで磨いた部品の対比図

同社はこれまで主に部品やコンポーネントの販売から利益を得ていたが、今年からはソフトとハードウェアが一体となったソリューションを主力プロダクトとして販売できるようになった。客単価も製品によって数十万元から百万元超(数百万~数千万円)に及ぶ。顧客は、自動車組立工場、自動車部品工場、鋳造加工企業、溶接加工企業などすでに十数社に及び、売上高も100万元(約1500万円)に達した。創業者である潘陽氏によれば、中国の研磨作業用ロボット産業はまだ成熟期に入っていない。輸入製品は高額なだけでなく、ソリューションパッケージで提供されるため使いにくく、装置周辺の粉塵対策や散水機能にも不備があることが多い。佳安智能は力制御のインテグレーターとしてその中核技術をソリューションに盛り込むと同時に、顧客が真に必要とするものを提供することで競争力向上を目指している。

佳安智能は2019年7月にエンジェルラウンドで800万元(約1億2000万円)の資金を調達し、今はシリーズAの出資を募っている。

(翻訳・近藤、編集・後藤)

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