中国シェアサイクル戦争第二幕の号砲 アリババ、美団、滴滴の三国志に

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ソフトバンクはレノボグループ傘下の「君聯資本(Legend Capital)」と共に4月21日付で、ライドシェア企業「滴滴出行(DiDiモビリティ)」のシェアサイクル部門に1億5000万ドル(約160億円)を投資した。ソフトバンクは滴滴の筆頭株主。これに先立ちビジネスメディアの「晩点(LatePost)」も先日、滴滴傘下の自転車シェアリングサービス「青桔単車(DiDi Bike)」が君聯資本などから10億ドル(約1100億円)の融資を受けたと報じている。

市場が最も活況だった時でさえ、1回の資金調達で10億ドルもの大金が動くことはなかった。中国シェアサイクル市場は過当競争の結果、2017年ごろから経営破綻などが相次ぎ第一幕は終焉を迎えたが、アリババグループ、生活関連サービス大手の「美団点評(Meituan-Dianping、美団)」、滴滴という大手資本による業界再編を経て各社の競争は第二幕に入ろうとしている。

ポストofoの時代

2015年に北京大学のキャンパスで始まったシェアサイクル産業は、野火のように中国、果ては世界各地に広まり人気を博した。2016年には少なくとも27の企業がシェアサイクル運営市場に参入、混戦を呈したが、黄色い自転車のofo、そしてオレンジ色のモバイク(摩拜単車)が激戦を勝ち抜き、両雄並び立つ形となった。

ofoは2016年だけで5回もの資金調達に成功、さらに2017年の調達額は総額21億ドル(約2200億円)に達した。主要投資者はアリババ傘下のアント・フィナンシャル(螞蟻金服)と滴滴出行だった。

一方、モバイクもテンセントからの投資を中心に、2015年10月から2016年10月までに5回の資金調達に成功、2017年には合計9億ドル(約960億円)もの巨額調達に成功するが、2018年に事態は急転、ofoは経営困難に陥り、モバイクは企業買収の憂き目に遭う。供給過剰による放置自転車が社会問題となり、北京市などが台数規制を導入。また自転車の回転率低下により、シェア拡大を狙って過剰投資していた各社の採算が急速に悪化したのだ。

2018年末、北京市海淀区人民法院は経営困難に陥ったofoと創業者である戴威氏に「消費制限令」を下した。当時、ofoの1200万人のユーザーが事前に差し入れた保証金(デポジット)の返金を待っており、そうした債権を保全するための措置である。一方、ofoの強敵モバイクは155億元(約2300億円)でフードデリバリーを主とするO2Oサービス美団に身売りすることになった。オレンジ色の自転車は徐々に、美団カラーの黄色い新車に取って代わられた。

当時、モバイクもofoも、最終的に「哈囉出行(Hello Global)」が漁夫の利を得るとは夢にも思わなかっただろう。哈囉出行(当時は哈囉単車)は2016年11月に正式に市場参入したが、ofoやモバイクとの競争を避けるため、まずは地方都市から攻め、その後に大都市を攻略する戦法を取り、混戦を生き抜いた。2019年9月現在の登録ユーザー数は2億8000万で、トレードマークの白い自転車で中国の360都市を網羅、市場シェアもトップとなった。

哈囉出行の成功はアリババの資本力によるところが大きい。かつてはofoに出資していたアントフィナンシャルから数回に及ぶ出資を受け、2019年12月には所有する全車両を担保に5億元(約75億円)の調達を取り付けた。

一方、ofoから教訓を学んだ滴滴も、シェアサイクル市場に食らいついていった。2018年1月、滴滴は独立会社として青桔単車を立ち上げた。2019年も市場開拓を続け、最高1000万台を所有するに至った。こうしてシェアサイクル市場にモバイク、哈囉出行、青桔単車による三国鼎立の時代がやってきた。今回、いったんは冷え込んだシェアサイクル市場の中で、滴滴に突如10億ドルもの巨額の資金が投じられたことは、大きな注目材料だ。

この三国の対立は、とりもなおさずバックに控える美団、アリババ、滴滴の御三家対立でもある。かつてもてはやされたシェアサイクル事業が、今では御三家の末端事業に成り下がってしまった。

ofo亡き後の今は、シェア拡大よりも現実的な利益の追求だけが求められる。2019年末、美団、哈囉出行、青桔単車はいずれも利用価格調整を行い、「30分で1.5元(約22円)」の時代に入った。同年11月、哈囉出行は100以上の都市で黒字を記録したと発表した。楊磊CEOは、2020年には損益分岐点に達するだろうと語っている。

ビジネスエコシステム戦争

美団、アリババ、滴滴の御三家が狙っているのは単にこの事業が生み出すキャッシュだけではない。シェアサイクル事業は自社ビジネスの“エコシステム”(生態系)を強化するための手段なのだ。

美団はシェアサイクル事業をローカルライフサービスの一環として捉えている。食べるにせよ遊ぶにせよ、移動手段は必ず必要となる。モビリティを店舗と結び付けることで新たな可能性が生まれる。

さらに街のあちこちで見かける色鮮やかなシェアサイクルは格好の広告手段でもある。美団の創業者、王興氏は2019年の財務報告電話会議で、美団はシェアサイクル事業を利用してより多くのユーザーを美団のビジネスエコシステムに呼び込むことができると述べた。

アリババにとって哈囉出行はモビリティ(移動手段の提供サービス)事業を充実させるための一手段だ。アリババのモビリティ事業は「高徳地図(Amap)」と哈囉出行が担っている。高德地図は早くからライドシェアを手掛け、滴滴のサービスとも連携していた。一方、哈囉出行はアリババの野心を正に反映する企業で、シェアサイクルだけでなく、総合的なモビリティプラットフォームとして、自転車、モペッド、ライドシェア、ライドヘイリングなど手広くサービスを提供している。

アリババの現在の競争相手は滴滴ではなく美団だ。競争分野もモビリティだけでなく、ローカルライフ全体となっている。

モビリティ大手、滴滴にとっては、都市内でのラストワンマイルの問題を解决するシェアサイクルがビジネスエコシステムの重要な一部となる。そのため、ofoへの投資にせよ、青桔単車にせよ、滴滴はシェアサイクルを絶えず重視してきた。

4月17日、滴滴出行の程維CEOは会社の戦略会議で向こう3年にわたる戦略目標を掲げた。それは、3年以内に世界で毎日1億件のサービス提供を実現すること、中国の全モビリティ産業で8%の利用率を獲得すること、世界の月間アクティブユーザー(MAU)を8億以上とすることだ。

新型肺炎の流行前まで滴滴プラットフォームの日間利用数は約3000万件だった。3年後に1億件に達するためには、年平均増加率を50%以上にする必要があるが、中国だけでこの目標を達成するのは難しいため、国外事業とシェアサイクル事業の成長に期待がかかる。

滴滴の3年戦略を実現するため、中国国内では2分野に重点が置かれる。一つはワンストップのモビリティプラットフォームを利用した四輪車(タクシー配車、運転代行、ライドシェア)、二輪車(自転車、電動自転車)、地下鉄、バスなどのモビリティサービスだ。もう一つは自動車関連トータルサービスを手掛ける「小桔車服(Xiaojuchefu)」、自動運転、金融、高度交通システムなど自動車産業全体に関連した事業だ。

青桔単車は現在大がかりな資金調達を行っているが、これも滴滴がシェアサイクルを重視し、プラットフォーム拡充を狙っている証拠だ。

業界の巨頭たちのこうした動きの結果、シェアサイクル業界には緊張感がみなぎってきた。もっとも一昨年のofoとモバイクの経験から、投資者も大企業も慎重にならざるを得ないことは確かだ。

(翻訳・近藤、編集・後藤)

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