インドネシア発の宅配サービスが中国で急成長、背後にはEC大手の代理戦争か

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「極兎速逓」という社名で中国に進出したインドネシアの宅配業者「J&T Express」に対し、中国大手宅配業者「韻達快逓(Yunda Express)」はFC加盟店にJ&Tの業務の代行を禁止する通知を出した。同じく宅配大手の「中通快逓(ZTO Express)」「圓通速逓(YTO Express)」に続くJ&T排除である。

J&T急成長の裏に拼多多

2015年8月にインドネシアで設立されたJ&Tは、設立から2年で、1日あたりの宅配便取扱個数が東南アジア第2位にまで成長した。サービス対象は東南アジア7カ国の5億人以上で、年間取扱個数は7億個を超える。

ここまで急速にシェアを拡大できた背景には、J&T創業者の人脈がある。J&TはOPPOインドネシア法人の前CEO李傑(ジェット・リー)氏が創業した。李氏も「拼多多(Pinduoduo)」創業者の黄崢(Colin Huang)氏も、電子機器メーカー「歩歩高(BBK)」創業者 段永平氏の門下生である。J&Tは設立当初からOPPOと拼多多の宅配業務を大量受注しており、さらには、J&Tが初期に調達した2000万ドル(約20億円)の多くが拼多多由来だという情報もある。

東南アジアの成功経験とOPPO・拼多多2社の助力により、J&Tは2019年9月に中国市場へと進出する。最初のうち同業他社は気にも留めなかったが、7カ月後には、J&Tの急成長ぶりを無視できなくなる。

J&Tの主戦略は地方都市とフランチャイズ制だ。

2020年3月時点で、J&Tは中国すべての省と都市をほぼ100%カバーし終え、取扱量は100万個単位で増加していった。

2020年9月にはJ&Tの1日あたりの受注量が1000万個を超えた。韻達、YTO、ZTOの数千万個にはまだ及ばないが、この勢いだと1~2年のうちに3社を凌ぐ可能性が十分にある。ゴールドマン・サックス・グローバル投資調査部も、2020年に拼多多の市場シェアが31%以上になると予測している。

現時点で、J&Tの中国国内直営店は約5000店、FC加盟店は1000店以上あり、大規模中継センターを100カ所以上、自動仕分機器を100台以上、配送トラックを4000台近く保有する。J&Tは次のラウンドで100億元(約1500億円)を調達すべく準備中だという情報もある。

秩序を乱す低価格競争、地方市場争奪戦が激化

韻達、YTO、ZTOなど既存の大手宅配業者を差し置いて、J&Tのような新参者を起用する拼多多の思惑に対しても議論が巻き起こった。

投資家や業界関係者の多くは、中国のEC大手アリババと京東(JD.com)はともに独自の宅配ネットワークをすでに形成しており、J&Tと提携する前の拼多多は劣勢にあったと考えている。

宅配業は重労働で粗利益率も低い。しかし、ECサプライチェーンにおいて重要な部分である物流は消費者のビッグデータや資金の流れと連動しているため、効率的かつ低コストな宅配ネットワークはシェア獲得に不可欠である。

拼多多が重点を置くのは二線都市、三線都市などの地方都市だ。J&Tは格安宅配料金で拼多多の地方攻略を支援する。拼多多の急成長は、アリババと京東が主体のEC勢力図をかき乱した。

大都市におけるボーナス期が終わろうとしている中、EC大手は地方に力を入れ始めている。拼多多が勢力拡大にあたって、アリババ系の韻達、YTO、ZTOに助力を求めるのを難しく感じたとしても当然だろう。拼多多がJ&Tと提携した理由はここにある。まさに鬼に金棒というわけだ。

韻達、YTO、ZTOによるJ&T排除の動きは、アリババ、京東、拼多多という三大EC間の競争激化を如実に表している。しかし、韻達、YTO、ZTOがJ&Tを排除しようとする理由はほかにもある。

韻達、YTO、ZTOの宅配最低価格は国内便で15元(約230円)ほど、「順豊エクスプレス(SF Express)」は20元(約310円)前後で変動しているが、J&Tは最低価格を10元(150円)に設定した。この種の低価格戦略は市場参入に効果的だが、業界内の不文律に抵触する。

韻達、YTO、ZTOはJ&Tと同様に加盟店方式で運用しているが、J&Tが他社の宅配ネットワークを利用しながら格安価格を提供していることに腹を立てているのだ。しかしJ&Tが中国でほぼ足場を固めてしまった今となっては、今回の排除措置もその成長を多少遅らせる程度の効果しかないだろう。排除の真の狙いはJ&Tに業界ルールを遵守させることにあるのだろうが、J&Tが応じるか否かは現時点では不透明だ。
(翻訳:永野倫子)

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