ゲーム事業で市場シェア狙うバイトダンス、「テンセント式」路線を歩む

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ゲーム事業で市場シェア狙うバイトダンス、「テンセント式」路線を歩む

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TikTokを運営するバイトダンス(字節跳動)がゲームを手がけているのは決して目新しいことではない。マネタイズの重要な手段であるゲーム事業は、富を築くための主要なルートだ。

IT大手テンセント(騰訊)がゲーム事業を手がけた当初は「SNS+ゲーム」の手法を取り入れ、チャットツール「QQ」の膨大なアクセス数を武器に、カジュアルゲームの分野で軽々とトップの座を奪った。これを皮切りにゲーム分野全域に勢力を拡大している。

昨今のバイトダンスはショート動画分野でシェアを獲得し膨大なアクセス数でゲーム市場に参入してきた。カジュアルゲーム分野では向かうところ敵なしといった様相だ。ゲーム事業も自社開発へと段階的に進み、テンセントが歩んできたのとまさに同じ道をひた走っている。

テンセントのサクセスストーリー

テンセントのサクセスストーリーはここでは詳述しないが、ゲーム事業への第一歩に関しては取り上げる価値がある。

2001年、中国ネット大手「ネットイース(網易)」がゲーム業界に参入、当時爆発的な人気となった自社開発の「大話西遊」シリーズをリリースし、オンラインゲームでの成功を果たした。

ネットイースのゲーム市場での成功は、インターネット事業以外での黒字化の道を模索していたテンセントの注意を引いた。2002年にはテンセントは社内でゲーム事業への参入を検討し、海外ネットゲームの代理販売と社内研究開発チームの立ち上げがほぼ同時に行われた。海外ゲームの代理販売が失敗に終わった一方で、24歳の孫宇揚氏率いるQQ研究開発チームがカジュアルゲームプラットフォームをリリースし、テンセントのゲーム分野参入を確実なものとした。

2003年から2004年のわずか一年に、テンセントは「SNS+ゲーム」の手法でユーザーを集め、当時中国で最大規模のゲームプラットフォーム「聯衆」と真っ向勝負に出た。その後、テンセントは聯衆をあっという間に抜き去り、中国で最大規模のゲームポータルサイトとなった。

テンセントのカジュアルゲーム「天天酷跑」

模倣と新たな問題

バイトダンスもゲームの自社開発を行い、テンセントと同じくカジュアルゲームを参入の足がかりとした。2019年からゲーム市場に参入したバイトダンスは、わずか一年足らずで中国国内のカジュアルゲームのトップにまで登りつめている。

米アプリ分析会社「App Annie」が発表した2019年4月の中国エリアiOSゲーム月間ダウンロード数の上位10位にバイトダンスの「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」が独占代理する「全民漂移3D」「我飛刀玩得賊6(knife.io)」「猫千杯」が入っており、トップとなった「消滅病毒(ウイルスウォー)」も抖音のアクセス量の恩恵によるものだ。

2020年の春節期間中には、バイトダンスの独自開発またはコラボしたゲーム5本がApp Store無料ダウンロードランキングでトップ10入りしている。

モバイル関連データ分析を行う「七麦数据(Qimai Data)」が8月初めに発表したデータによると、2020年上半期のモバイルゲームトップ100のうち、バイトダンスのゲーム11本がランクインし、2020年上半期最大のブラックホースとなった。バイトダンスに続いてテンセントが10本、ネットイースが8本ランクインしている。

初期のテンセントはQQのアクセス数を頼りにゲーム市場に参入し、その後QQ関連製品に還元している。バイトダンスも「今日頭条(Toutiao)」、TikTok、「西瓜視頻(Xigua Video)」、「火山小視頻(火山ミニビデオ)」などのコンテンツ製品にゲーム分野を圧倒するだけのアクセス数があり、成功したゲームの収益を同社のコンテンツ陣営に還元することができる。

バイトダンス傘下の「Ohayoo」がリリースした「脳洞大師」

バイトダンスはゲームプラットフォーム「Ohayoo」もリリースした。現在すでに数本の爆発的人気ゲームを販売している。調査会社の「伽馬数据(ガンマデータ)」によると、春節期間中のダウンロードトップ10のうち、バイトダンスのオリジナルゲーム「我功夫特牛」、Ohayooがリリースした「脳洞大師(Brain Out)」、バイトダンスのアクセス数を利用した「陽光養猪場」の3本のゲームがランクインしているという。

バイトダンスのカジュアルゲームは幸先のよいスタートを切った。次なるステップはテンセントと同様、重量級ゲーム領域への飛躍だ。

バイトダンスのもう一手である投資。これもテンセントに酷似している。

テンセントはここ10年ほど、ゲーム分野だけでもアジア、欧米などの数百社近いゲーム関連企業へ投資を行い、産業チェーンを構築している。仏パリを拠点とするゲーム販売会社「VooDoo」はテンセントが同社の少数株式を購入したことを明らかにしたが、この動きはカジュアルゲーム分野におけるバイトダンスの市場拡大を阻止するためとの見方が強い。

一方、バイトダンスも2019年から積極的に動いており、「上海墨鵾(MokunTechonology)」、「上禾網絡」、「凯撒文化(Kaiser)」などのゲーム開発会社への買収に乗りだしている。先頃、バイトダンスの完全所有子会社「遊逸科技」がゲーム会社「有愛互娯(C4Games)」に株式参入し持株比率が5.9%となった。また、全出資子会社を通じて有愛互娯傘下の会社を合併吸収した。有愛互娯はサブカルチャーであるACG(アニメ・マンガ・ゲーム)、映像とゲームの融合、eスポーツ、VR・ARゲームの創作に取り組んでいる企業だ。バイトダンスの今回の投資は、ゲーム分野での海外進出と重量級スマホゲーム事業への布石とみられている。

とはいえ、ビジネスモデルのまねだけでは生き残ることは難しい。テンセントはゲームライブプラットフォームの独占と著作権の回収により、バイトダンスのゲーム産業川下での動きを封じようとしている。また資本運用などで国内外のハイパーカジュアルゲーム企業に株式参入し、バイトダンスのさらなる市場拡大を抑え込もうとしている。テンセントはバイトダンスを若かりし頃の自分自身と重ね合わせ、自社が歩んで来た道に思いをはせながらも、行動を起こしている。

作者:深響(ID:deep-echo)、洪雨晗 (翻訳:lumu)


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