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11月に入って日経平均株価が急伸を続けており、17日は2万6014円62銭で終え、1991年5月14日以来約29年半ぶりの高値となった。こうした株式市場の復調は、日本が「失われた30年」を脱したことの表れなのだろうか。
株価を押し上げたのはアベノミクス
日経平均株価は2012年にも急伸しているが、その背景には、同年末に誕生した第二次安倍内閣による一連の経済政策「アベノミクス」がある。このアベノミクスの根幹を成したのが「三本の矢」だ。
三本の矢のうち、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」は、短期的には量的緩和によって投資・消費を刺激し、インフレを誘導するもので、対外的には円安を主導して日本企業の競争力を引き上げ、外需の回復を狙うものだ。長期的には経済構造改革を通じてイノベーションを加速させ、産業の競争力や質の高い成長を目指し、20年にわたり停滞した日本経済を根本から立て直すと謳った。
1)緩やかな景気回復
アベノミクスは日本経済に一時的な回復をもたらした。2013~2015年に大々的な流動性供給を行った結果、円安ドル高が進み、効果的に輸出の伸びに繫がったほか、金融・財政政策によって国内の投資や消費が復調、GDPの平均成長率が-0.2%から2.4%にまで回復し、一時は3.7%にまで達した。
経済回復に伴って日本企業の収益力は顕著に伸び、資本市場が自信を回復し、日経平均株価の復調に繫がった。
2)実体経済と資本市場の乖離
しかし好景気は長くは続かず、大胆な金融政策も限界効果逓減の法則には逆らえず、日本経済は2016年から再び停滞に転じた。
経済の長期低迷によって、実体経済における投資利益率が株式市場の利回りを大幅に下回り、金融政策が株式市場の流動性を大幅に高めたこともあって、金融システムで資金が空回りする現象が起きた。さらに、株式市場の好調は期待ほどの資産効果をもたらさなかった。アベノミクスが掲げた消費増税が消費需要喚起の妨げとなり、資産効果を相殺してしまったからだ。こうして実体経済と資本市場の現状は長期にわたる乖離を引き起こした。
3)日銀の下支えによる市場の安定
アベノミクスの金融緩和策において重要な一角を占めたのが、日本銀行によるETF(上場投資信託)の買い入れだ。日銀は2013年、毎年1兆円のETFを買い入れる計画を打ち出したが、翌年にはさらなる緩和政策によって買い入れ額が3兆円に。2016年には二度にわたり再び増額し、年6兆円となった。今年は新型コロナ禍の影響もあり、日銀は12兆円ものETFを買い入れるという。
現在では日銀の保有額はETF純資産総額の80%を占める。日銀は日本の株式市場に高い流動性をもたらし、市場を下支えし、変動率を抑えてきた。
日本は「失われた30年」を脱却するのか
アベノミクスによって近年の日本経済は確かに好転した部分もある。しかし各国横並びに見れば、日本は依然として世界の主要経済国で最も疲弊の色が濃い。
10年にわたる量的緩和政策と拡張的財政政策の結果がこの疲弊ぶりとあっては、経済復興の脆弱さは想像に難くない。
日本国内で見ても、アベノミクスの効果は国民にとっては「実感がない」というのが正直なところだ。ヒエラルキーは固定化し給与水準は横ばいが続き、就業率は上がってもその多くの非正規雇用という状況だ。高齢化や内需不振といった問題も重なる。
日本経済の衰退の真の原因は産業の空洞化と高齢化によるものだ。2000年代以降、高齢化の影響で日本の製造業は台湾や韓国など労働力の安い地域へ依存するようになり、産業の空洞化、ひいては経済の後退を引き起こした。安倍総理の在任中にアベノミクスの第三の矢が放たれることはなく、日本経済の構造問題はより顕在化している。
米国や中国が新興分野で絶え間なくブレークスルーを達成している傍らで、匠の精神を過度に追求する日本はかえってイノベーション推進力を凝り固まらせてしまっている。OECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本の研究開発費は2006年から2017年にかけて1300億ドル(約13兆6000億円)から1800億ドル(約18兆8000億円)とわずか38.46%しか伸びていない。中国、米国、EUをはるかに下回る水準だ。
製造業では中国や韓国が台頭し、日本を脅かしている。近年は老舗メーカーの赤字、倒産、不祥事が絶えない。かつて日本が誇った製造業は斜陽化している。
経済の立て直しに失敗した日本は現在、世界を覆う需要減退や保護貿易主義、勢力図の塗り替えなどに直面している。これまでのやり方で「失われた30年」から脱却しようとしても、その道のりは長いだろう。
(翻訳・愛玉)
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